シャープ 寄棟屋根に最適化した新太陽電池モジュール
寄棟屋根に対応した、新しい単結晶太陽電池モジュール |
シャープは、寄棟屋根を対象とした単結晶太陽電池モジュール4機種を発売。2012年10月10日から出荷を開始する。希望小売価格は47,880円~85,680円。
屋根の4カ所に傾斜面を持つ「寄棟屋根」は、国内戸建住宅の4割強を占めているが、傾斜面が2カ所の「切妻屋根」に比べて、効率的なスペースの活用に課題があった。シャープではこれまでにも、五角形の太陽光パネル「コーナーモジュール」を製品化し、複雑な屋根の形状にもモジュールを設置できる提案を行なってきたが、今回発売する新たなモジュールでは、従来よりもセル枚数を増やし、同じスペースでの出力を向上。さらに、新たな設置工法を開発することで、設置時間の短縮も図った。
日本の屋根の多くは切妻屋根と寄棟屋根で構成される | しかし、売上は切妻屋根が中心。新製品では、寄棟屋根でも「ぴったり、たっぷり、美しく」という観点で強化した |
今回発表した4つのモジュールの概要 | 寄棟屋根での設置例。コーナーモジュールを使うことで、屋根に沿って設置できる |
シャープ ソーラーシステム事業本部ソーラーシステム事業部長の稲田周次氏 |
シャープ ソーラーシステム事業本部ソーラーシステム事業部長の稲田周次氏は、「日本では、寄棟屋根と切妻屋根はほぼ同等の構成比だが、当社の販売実績から見ると、寄棟屋根への太陽光発電システムの販売構成比は、約10%と少ない。寄棟屋根は、比較的設置容量が少なく、結果として切妻屋根に比べて割高となり、投資回収までに時間がかかる。また、長方形モジュールだけでは余白が増え、見栄えが悪いという課題もあった。今回の製品では、寄棟屋根への設置に最適化したものであり、ぴったり設置し、たっぷり発電し、美しく見せる、ということを目指した」としている。
発売するのは、42枚のセルを持ち、172Wの出力容量を持つ長方形の「NU-172BB」(希望小売価格85,680円)、30枚のセルを搭載し、122Wを出力する「NU-122CB」(同60,690円)、20枚のセルを搭載し、左右の5角形のコーナーモジュールとなる81W出力の「NU-081LB」および「NU-081RB」(各47,880円)の4製品。すべて単結晶となる。
左のコーナーモジュール。出力は81W | 172Wの出力容量を持つ中央の長方形モジュール | 右側のコーナーモジュールも出力は81W |
従来のコーナーモジュールは、セルの枚数が16枚で、出力は62Wに留まっていた。新製品では、同じ面積ながら出力が81Wと、31%引き上げている。
稲田氏は「従来品では、太陽電池容量で3.76kW、年間発電量が3,755kWhであったものが、同じ面積のモジュール設置容量が11%向上したことで、容量は4.17kW、年間発電量は4,161kWhとなり、年間発電量は406kWhの差となる。シャープの15年保証の期間に照らし合わせると、15年間で22万円のメリットがある」などと試算した。
また、黒色のセルおよびバックフィルムを採用し、モジュールの外観を黒に統一。日本の屋根にあった色調を実現したという。
コーナーモジュールでは、セルの搭載枚数を増やし、出力をアップしている | 中央のパネルについても、出力をアップしている |
CADデータベースと効率良く太陽電池を設置できる「ルーフィット設計」により、さまざまな屋根にピッタリ設置できるという | 従来モデルとの設置容量との比較。写真の場合は、従来モデルより約11%設置容量がアップしている |
一方で、同社では今回発表した太陽電池モジュールに対応した寄棟新工法を新たに開発。これにより、寄棟屋根にぴったり設置するとともに、設置時間を約20%短縮できるという。
新工法では、モジュール固定金具を「横桟(よこさん)」というレール状の部材に一体化。従来型の工法では「点」でモジュールを細かく固定していくのに対して、一体型の横桟では「線」で固定できるため、設置時間が短縮化できるという。
「寄棟では3面の屋根に対する工事が必要であるため、工数が多く、設置時間が長く、コストがかかる、あるいは面倒であるという工事事業者が多かった。これが、寄棟屋根への太陽光発電システムの設置が遅れている理由の1つとなっていた。新工法では、4kWの太陽電池モジュールの設置では10時間かかっていたものが、7時間40分で済む。施工時間の部分だけを捉えれば約40%も短縮でき、1日以上かかっていた作業が、1日で済むということは、コストや工数の面でも大きな意味がある」(稲田氏)
将来的には、切妻屋根への設置と同じ時間で設置できるよう、改良を加えていく考えだ。
左が従来型工法で、右が新工法 | 「点」でなく「線」で固定するため作業時間が短縮 | 施工時間だけでみれば40%を短縮するという |
同社では、これまでの52万件の導入実績を背景に、約28万通りのCADデータベースを持っており、それをもとに屋根への最適な配置を可能にできるという強みがあるとしている。
加えてシャープでは、パワーコンディショナーの2012年度モデルも発表。従来より小型化を図るとともに、電力変換効率を95.0%と、従来比で1.0%改善した。
「シャープのパワーコンディショナーは、昇圧装置や接続箱の機能をあわせもった“マルチストリング”としており、電力ロスを低減させることで、システム変換効率を高めている」(稲田氏)
パワーコンディショナーも小型化、効率化している | 昇圧装置や接続箱の機能をあわせもった“マルチストリング”機能がシャープの特徴 |
2015年度には累計設置件数100万棟を目指す |
同社では、今回の新たな製品および新工法により、寄棟屋根への展開を強化。新製品4機種で月産4万台を計画。2015年度までに累計100万棟への設置を目指すという。
稲田氏は「これまでの17年間での実績が52万件。これを今後3年で倍増させることになる。年率30~40%増での成長を見込んでおり、ソーラー部門に人員をシフトすることで営業体制を強化。これによって特約店および量販店支援体制の強化を図っている段階にある」と話した。また、シャープの太陽光発電の特徴について「長年の実績をもとに、日本の家の複雑な屋根の形状を知ることでモジュールを開発し、同時に取り付け工法も開発し、提案してきた。また、15年間保証やウェブモニタリングという無償サービスも提供している。さらにモジュールに最適化したパワーコンディショナーを開発しているのもシャープの特徴。シャープは、トータルでの高品質と安心を目指している」などと語った。
なお、一部報道にあったシャープ傘下のソーラーデペロッパーである米国リカレント・エナジー社の売却については、「売却の交渉などを進めている事実はない」とした。
(大河原 克行)
2012年9月28日 19:06