東芝の「ツインロータリーコンプレッサー」、文部科学大臣表彰技術賞を受賞

文部科学大臣表彰の科学技術賞を受賞した「可変気筒式ツインロータリーコンプレッサー」(デュアルコンプレッサー)。東芝のエアコンに搭載されている

 東芝キヤリアは、同社が開発した家庭用エアコン向けコンプレッサー「可変気筒式ツインロータリーコンプレッサー」が、2012年度の文部科学大臣表彰において、開発部門の科学技術賞を受賞したと発表した。

 可変気筒式ツインロータリーコンプレッサーは、東芝ホームアプライアンスが発売するエアコン「大清快」シリーズの一部に搭載されているコンプレッサー(圧縮機)。「デュアルコンプレッサー」「デュアルコンプ」とも呼ばれている。

 可変気筒式ツインロータリーコンプレッサーは、2つの圧縮室のうち1室の運転だけが停止できる構造になっており、能力を絞った運転ができる点が特徴となる。

 エアコンのコンプレッサーは、居住空間をすぐに冷やしたい(暖めたい)場合は回転数を早め、設定温度に近づくと回転数を抑えることで能力を制御する。しかし東芝によると、近年は住宅の高機密化・高断熱化が進んだことで、設定温度に達した場合の要求負荷が非常に小さいという。そのため一般的なエアコンでは、下限回転数では能力を絞りきれず、コンプレッサーを断続運転しており、室内の温度変化や消費電力の増加を招いていたという。

 一方、可変気筒式ツインロータリーコンプレッサーでは、最小能力がこれまでの半分以下まで低減できるため、すぐに空調したい場合は高出力で運転する一方、気密性の高い住宅では、冷房時は“扇風機並み”の45W、暖房時は電球1個分相当の電力に抑えて運転する。フル出力と最低出力の能力の可変幅は31倍という。同社では、本技術の採用によるヒートポンプ空調機の普及拡大と電力削減への寄与が期待されるとしている。

可変気筒式ツインロータリーコンプレッサーが運転しているイメージ図。早く冷やしたい(暖めたい)場合は、コンプレッサーの2つのシリンダーをフルに回転する設定温度に達して、室温を維持する際は、1つのシリンダーで能力を抑えた運転を行なう

 文部科学大臣賞・科学技術賞は、日本の科学技術分野において、社会経済や国民生活の発展・向上に寄与し、実際に利用されている画期的な研究開発や発明を行なった者に対して授与される賞。受賞したのは、可変気筒式ツインロータリーコンプレッサーの開発に携わった、東芝キヤリアのコンプレッサー事業部の富永健氏、志田勝吾氏、平野浩二氏、北市昌一郎氏。

 東芝キヤリアでは、今回の受賞理由について、“同コンプレッサーが空調負荷に応じて自在に気筒数を変更する斬新性”と、“実使用運転で高い省エネ製を発揮する技術”が評価されたとしている。

 なお、可変気筒式ツインロータリーコンプレッサーは、東芝が現在発売している“声で動く”エアコン「大清快VOiCE」にも搭載されている。

表彰楯デュアルコンプレッサーは、東芝の最新型エアコン「大清快VOiCE」にも搭載されている





(正藤 慶一)

2012年5月10日 16:22