リンナイ、ガスと電気で効率よく沸かす「世界初」のハイブリッド給湯器


ガスとヒートポンプで湯を沸かす「リンナイハイブリッド給湯器 タンク熱源一体型」
 リンナイは、ガスとヒートポンプで湯を沸かす“世界初”の給湯器「リンナイハイブリッド給湯器」を、4月2日に発売する。希望小売価格は735,000円から。

 ガスと電気を組み合わせた“世界初”の給湯器で、ガスや電気だけの給湯器と比べて効率良く給湯できる点が特徴。高効率のガス給湯器「エコジョーズ」と、電気で動くエアコン用のヒートポンプユニットを組み合わせており、シャワーや湯張り、床暖房などに利用できる。

 ハイブリッド給湯器では、湯を少量だけ沸かす際はヒートポンプを使い、大量に使ったり高い熱が必要な場合はガスで沸かすというように、使用状況に応じて熱源を切り替える仕組みになっている。例えば、キッチンやシャワーで使う45℃程度の湯は、ヒートポンプユニットで沸かし、容量の少ない50Lのタンク内に溜めたものを使用する。一方、風呂などで多量の湯を使う場合には、タンク容量が少量のため、ガスとヒートポンプを併用する。また、暖房や追い炊きを使用する際にはガスを使用する。

リンナイ 開発本部 新技術開発部長の中島忠司氏
 ヒートポンプユニットを使った給湯器としては「エコキュート」がオール電化住宅を中心に導入されている。エコキュートとの仕組みの違いについては、「エコキュートでは60℃以上の湯を貯湯タンクに貯めているが、ヒートポンプユニットは沸かす温度が低ければ低いほど効率が高い。また、タンク容量を50Lと小容量にすることで、放熱ロスなどのムダを省いている」と、リンナイ 開発本部 新技術開発部長の中島忠司氏は説明した。

ハイブリッド給湯器の基本構造キッチンやシャワーなどの用途では、ヒートポンプで沸かした湯を利用する。エコキュートと比べると湯温は45℃と低いが、これが給湯効率の高さにつながっているタンク容量が50Lと少ないため、風呂など大量の湯を沸かす際には、ガスを使う。湯切れの心配はない

 これにより、給湯時の1次エネルギー効率(使用エネルギーを化石燃料の使用量に換算した割合)は、エコキュートでは93%に対し、ハイブリッド給湯器では124%と、エコキュートを上回る数字となった。また、年間のCO2排出量(火力発電ベース)は、エコキュートの約30%減となる889kgで、従来ガス給湯器よりも約28%、エコジョーズよりも約20%低い数値となっている。

 さらに、給湯/暖房を含めた年間のランニングコストの試算でも、エコキュートやエコジョーズなど他の給湯器と比べても低い数値となっている。

 「エコキュートやオール電化は、ランニングコストの安さから環境に優しい、と思われているが、実際は電力の料金設定が大きく影響している。ハイブリッド給湯器はヒートポンプの性能を最高に引き出せており、CO2排出量を確実に削減できる」(中島氏)

省エネ性能の高さの指標となる1次エネルギー効率は、エコキュートは93%に対し、ハイブリッドは124%と高い。電気は排熱や送電でエネルギーをロスしているとのことCO2排出量は、火力発電ベースではエコキュートの約30%減。全電源と比べても、約12%の削減になるという従来のガスと比較したCO2排出量。従来のガス給湯器はもちろん、高効率の「エコジョーズ」と比べても、CO2排出量は少ない

こちらは、プロパンガス使用時における、給湯と暖房を併用した年間のランニングコスト比較。他の給湯器と比べても安い都市ガスではより安くなっている住宅全体を対象としたCO2排出量でも、オール電化住宅より少ない結果となった

 暖房機能としては、床暖房/浴室暖房乾燥機/温風器(ファンコンベクタ)などが利用できる。

 ラインナップは、狭小地にも設置できるよう熱源機とタンクが分離したセパレート型と、熱源機とタンクがひとつになった一体型の2種類。価格は前者が735,000円、後者が756,000円。それぞれに、都市ガス用、プロパンガス用が用意される。

 ヒートポンプユニットは両タイプとも共通で、874×300×850mm(幅×奥行き×高さ)。タンク一体型熱源器は900×357×1,150mm(同)、セパレート型の熱源器は470×265×600mm(同)、タンクユニットは452×351×1,047mm(同)。

 なお、いずれも一戸建て向けの製品で、マンションなど共同住宅では使用できない。

家庭におけるCO2排出量のうち、半分が給湯と暖房給湯のランニングコストは約半分に抑えられるため、その減額分を暖房でまかなえるという
こちらは熱源器とタンクが分離したセパレート型室内機、タンク、熱源器はいずれも薄型。同社では設置性が高いとしている

ガスの瞬発力とヒートポンプの経済性を活かした、すばらしい商品


リンナイ 取締役執行役員 開発本部長 近藤雄二氏
 リンナイの取締役執行役員 開発本部長 近藤雄二氏は、発表会冒頭の挨拶にて「CO2削減は世界規模の課題で、鳩山新政権も2025年までにCO2を1990年比で25%削減しなければいかないと決定した。家庭での消費電力のうち、暖房と給湯が半分以上。これを減らすことは企業にとっての役割であり使命である」と、CO2削減の必用性を説明。そのうえで、今回のハイブリッド給湯器を「湯切れもなく、ライバル商品に比べても設置性が高い。ガスの瞬発力とヒートポンプの経済性を活かした、すばらしい商品だと自負している」と評価した。

 ところで、リンナイはガス給湯器のメーカーとして知られるが、中島氏によればヒートポンプ式の給湯器を開発するには「抵抗があった」という。しかし、車内で話し合った結果、「これからは高効率のヒートポンプはうまく利用すべき」ということで、2005年頃からハイブリッド給湯器の開発を進めてきたという。また、「ヒートポンプユニットのパートナー探しには苦労した」とのことだが、ヒートポンプユニットはシャープからのOEM提供を受けているという。

 発表会には、太陽光発電などの自然エネルギーの普及を目的としたNPO法人「世界マメナジー基金」理事長の高瀬香絵氏が登壇。高瀬氏は日本の全世帯がハイブリッド給湯器に切り換えた場合、政府が目指している“2025年度にCO2排出量マイナス25%”のうち、約3%が削減できるという試算を発表。そのうえで「(CO2排出量の)マイナス25%をリアルに目指すための切り札になるのでは」と、ハイブリッド給湯器の普及に期待を見せた。

クリーンエネルギーの普及に努めるNPO法人「世界マメナジー基金」理事長の高瀬香絵氏高瀬氏によれば、日本の全世帯をハイブリッド給湯器に変えることで、“マイナス25%”のうちの3%を削減できるという
鳩山政権では、CO2の排出量を、2025年までに1990年比で25%削減すると発表している“エネルギーのベストミックス”という謳い文句も披露された



(正藤 慶一)

2010年2月4日 19:15