パナソニック大坪社長、三洋子会社化後の事業方針を発表

~重複事業は「強いところを生かし、やめるべきはやめる」

パナソニック 大坪文雄社長
 パナソニックの大坪文雄社長は、1月8日、2010年の経営方針を説明。12月21日付けで子会社化した三洋電機を加えた「新パナソニックグループ」としての方向性を示すとともに、2018年度の創業100周年に向けたビジョンを明らかにした。

重複事業は「強いところを生かし、やめるべきはやめる」

経営理念は「モノづくりで社会の発展・豊かなくらしに貢献する」。三洋電機が加わったことで、くらし関連の領域で一層の広がり、深みが持てるという
 大坪社長は、「『モノづくりで社会の発展・豊かなくらしに貢献する』という経営理念のもと、グループ一丸となって事業活動を進めていく。パナソニックは従来から、暮らしに関連したエレクトロニクス事業の領域で、幅広い商品群、先端技術を展開し、販売プラットフォームなどの経営インフラを有している。これに、太陽電池や二次電池のキープレーヤーであり、業務用機器やデバイスにおいて強い事業を有している三洋電機が加わることで、グループとして、くらし関連の領域で、一層の広がりと深みが持てるようになる。このポンテシャルを生かして、シナジーの最大化に取り組む」とした。

 シナジーの最大化に関しては、「成長・強化」、「重複・課題」の両面から言及。「“成長・強化”の観点では、互いに学びあい、知恵を結集し、環境・エナジー関連で先頭に立つとともに、次の成長につながる新事業戦略を大胆に描いていく。一方で、“重複・課題”の観点では、客観的に互いの強みを見極めた上で、強いところを生かし、やめるべきはやめる。課題を切り出し、一気に改革をやりきるスピードが重要である。いずれも、お客様起点でベストな姿はなにかという点を追求していく」などと語った。

 子会社化が発表された12月21日以降、両社はコラボレーション委員会を設置し、重複事業の調整やシナジーの追求に向けた検討が始まっている。これについて大坪社長は「現時点では、 何を残して、何を止めるかというものは決まっていない。重複しているからただちに止めるというのではなく、かぶっていてもラインアップを揃えるということもできるだろう。特に二次電池は競合している分野だと言われるが、どちらがもともと優位だったのかということを前提に客観的に判断することも必要であるし、ナンバーワンとはいえ、両社をあわせても35%のシェアであり、まだ65%の未開拓市場がある。そこをどうするかを考えていく。将来を見据えてシナジーを生める事業なのか、現状よりも大きくなる事業なのかという判断も重要になるだろう」とした。

2018年度までに“No.1の環境革新企業”を目指す


創業100周年となる2018年度に「エレクトロニクスNo.1の環境革新企業」を目指す
 一方、2018年度に迎える創業100周年のビジョンについては、「エレクトロニクスNo.1の環境革新企業」を目指すことを掲げ、「全事業活動の基軸に『環境』を置き、イノベーションを起こす」とした。

 世界中の人々に持続可能で、より安心、より快適、より楽しいくらしを提案し、心豊かなグリーンライフスタイルを実現するための「グリーンライフ・イノベーション」と、事業活動で究極の環境負荷低減を実現し、ゼロコストやゼロタイム、ゼロインベントリー、ゼロエミッションといった製造業の理想の姿を追求しながら、そのなかで生み出した技術やアイディアなどを社会に広く提言し、究極のグリーンビジネススタイルを実践、提案する「グリーンビジネス・イノベーション」の2つを掲げる。

世界中の人々が安心かつ快適に暮らせる「グリーンライフ・イノベーション」を提案“ゼロコスト”、“ゼロタイム”など、製造業の理想の姿を追求する「グリーンビジネス・イノベーション」も掲げた

 また、目指すべきグループ経営の姿として、「グローバルネットワーク経営」、「個客接点No.1経営」、「シナジー創出経営」の3点を掲げた。その一方で、2018年度のエレクトロニクスNo.1達成の指標として、グローバルエクレセンス指標と、グリーン指標の2つを打ち出した。

 グローバルエクセレンス指標では、売上高10兆円、営業利益率10%以上、ROE10%以上の目標を継続し、さらに、グローバルシェア1位の商品が複数存在することを新たに盛り込んだ。グリーン指標としては、CO2削減と資源循環への貢献、エナジーシステム事業の規模や環境配慮No.1商品の売上高比率などを指標として捉えるという。

 さらに、創業100周年に向けて、「パナソニックグループは地球発想の環境革新企業へ」を掲げることで、エコアイディア宣言を一新。くらしのエコアイディアでは「私たちは、CO2±0のくらしを世界にひろげます」、ビジネススタイルのエコアイディアとして「私たちは、資源・エネルギーを限りなく活かすビジネススタイルを創り、実践します」とした。

目標とすべきグループ経営の姿として、「グローバルネットワーク経営」、「個客接点No.1経営」、「シナジー創出経営」の3点の指針を打ち出した「エレクトロニクスNo.1」を目指すために、売上高10兆円、営業利益率10%以上、ROE10%以上の目標を継続。グローバルシェア1位の商品を複数存在することも指標に

太陽電池やリチウム電池など「エナジーシステム事業」を核に

 一方、2012年度までの中期経営計画は、「三洋電機の子会社化に伴い発足したコラボレーション委員会での検討報告を受けた2010年3月以降、決算説明の場を通じて改めて説明する」とし、内部へのガイドラインとして、9兆5千億円の売上高を目標とすることを示した以外は具体的な数値には言及しなかった。

 だが、大坪社長は、新中期経営計画では、「エナジーシステム」、「冷熱コンディショニング」、「ネットワークAV」、「セキュリティ」、「ヘルスケア」、「LED」の6つの重点事業に取り組むことに言及。「これらの事業を核にして、家・ビルまるごとのソリュシーョンの提供に取り組む」とした。

太陽電池やリチウム二次電池などのエナジーシステム事業を“フラッグシップ事業”に成長させ、2018年度には3兆円以上の事業規模を目指すという
 中でも、太陽電池やリチウム二次電池などのエナジーシステム事業については、「フラッグシップの事業に成長させる」と宣言し、2018年度には3兆円以上の事業規模を目指すことを示した。

 「他社にできない家・ビルまるごとのエナジーソリューションを、個々の家やビルから、街区や地域に拡大し、コミュニティグリッドの構築につなげる。また、創エネ、蓄エネ、省エネの各機器の商品力、機器をつなぐことで生み出すシステムとしての価値提案力、グローバルな販売力を徹底的に強化し、エナジーシステムをフラッグシップ事業として確立していく」(大坪社長)

 太陽電池事業の拡大については、「業界最高水準の三洋電機の技術力と、パナソニックおよびパナソニック電工の販売チャネル、エネルギーマネジメント技術、建材・電材技術などを掛け合わせることで事業を拡大し、三洋電機が展開しているHIT太陽電池の増産のために、2015年度に向けて1000億円規模の戦略投資を行なう。これにより、2012年度には国内ナンバーワン、2015年度にはグローバルトップ3入りを目指す」とした。

 リチウムイオン二次電池事業では、三洋電機との技術の融合による商品力強化、生産能力の拡大に加えて、車載用、家庭用市場への提案力にも力点を置き、2015年度には売上高1兆円以上、シェア40%以上を目指す。

家やビルなど、くらしの全体をパナソニックで提供する「まるごとエナジーソリューション」を提案太陽電池事業は「業界最高水準」という三洋電機の技術力を加えることで、2015年度には世界トップグループを目指すというリチウム二次電池では、自動車や家庭市場での提案を促進。2015年度にはシェア40%以上を目指すという


 さらに、エネルギーマネジメント事業では、創エネ、蓄エネ、省エネ機器から、それらをつなぐ配線、配電までを手がける強みを生かしながら、新たなビジネスモデルを構築。事業の拡大を図るとした。パナソニックでは、4月1日付けで、エナジーソリューション事業推進本部(仮称)を設置する予定で、グループ横 断でエネルギーマネジメント事業を加速する考えだ。

 エコカー市場でも事業拡大に取り組む姿勢を見せ、電池、熱システム、電源システムの3つを重点分野での事業展開を加速。具体的には「EV用電池の高性能、低価格化」、「ヒートポンプ技術を使った冷暖房の省電力化」、「低損失パワー制御技術による簡単・安全な急速充電の実現」などに取り組む。

エネルギーマネジメント(エネマネ)事業では、「創」・「蓄」・「省」エネ機器から配電・配線まで手がける強みを活かし、新たなビジネスモデルを築くというエコカー市場でも事業拡大を目指す。電池や冷暖房、電源システムを重点的に展開していく


ヘルスケアやLEDも強化。「まだ小さな事業だが、将来の柱に育てていく」


 このほかの重点事業では、冷熱コンディショニング事業については、パナソニックが民生用で培った省エネ技術や、三洋電機の業務用での強みを融合させ、スーパー、コンビニ、レストランなどの店舗に対して、総合的な冷凍空調ソリューションを提供。エナジーソリューションと一体となった「まるごと提案」に取り組むという。

 薄型テレビに関しては、2010年度には年間2,000万台の出荷計画を掲げ、フルHD 3Dテレビを50型以上のプラズマテレビで展開するとともに、LEDバックライトを搭載した液晶テレビの構成比を液晶テレビ全体の30%とする計画を示した。2012年度以降、薄型テレビ全体で年間3,000万台の出荷を目指す。

 セキュリティについては、2010年1月1日付けで、システム・ネットワーク社を発足。関連ドメイン、関連本部が連携し、施工やサービスを含めたソリューションを提供するとしたほか、LEDに関しては、垂直統合のビジネスモデルにこだわらず、液晶テレビや関連商品のスピーディーなグローバル展開を加速していく考え。また、ヘルスケアでは、現在展開している幅広い商品をベースに、グループのポテンシャルを最大限に発揮し、事業拡大を推進するという。

 大坪社長は「家・ビルまるごとのソリュシーョンは他社に真似ができない強みを生み出すことになる。エナジーシステム、冷熱コンディショニング、ネットワークAVの各事業は、グローバルシェアの拡大を図り、収益を得る中核事業と位置づける。一方で、セキュリティ、ヘルスケア、LEDはまだ小さな事業だが、将来の柱に育てていく」と語った。

業務用機器に強い三洋の加入により、スーパー、コンビニ、レストランなどの店舗に対しても、総合的な冷凍空調ソリューションを提供していくという「まだ小さな事業」というセキュリティ、ヘルスケア、LED事業だが、大坪社長は“将来の柱”として期待している

2010年は「環境革新」がテーマ

 一方、2010年の経営スローガンを、「Unite Our Efforts-Drive Eco Innovation 力を1つに、環境革新」とした。

 「中長期の大きな目標達成に向けて、世界中の社員全員が心を1つに力をあわせ、失敗をおそれずに、変革、革新に積極果敢にチャレンジする、そのような姿を実現していきたい」と大坪社長は語った。

 なお、同社では、グループの経営革新を促進するために、4月1日付けで、モノづくりイノベーション本部とIT革新本部を統合し、グループ経営革新本部を新設。その傘下に、環境革新部会、Vプロダクト部会、新規・重点事業推進部会、マネジメント・IT革新部会を設置することを発表した。

2010年の経営スローガンは「力を1つに、環境革新」経営革新の促進のため、「グループ経営革新本部」を新設した



(大河原 克行)

2010年1月8日 22:27