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富士ゼネ“着るエアコン”35℃の暑い部屋で体験してきた

ウェアラブルエアコンの次世代モデル

2024年の12月6日、富士通ゼネラルから「ウェアラブルエアコン」の第4世代モデルが発表された。同機の開発が初めて提案されたのは2017年のこと。それから2018年のプロトタイプの発表を経て、第1世代が発売されたのが2020年。その後、ほぼ毎年アップデートされ、第4世代モデルは今年春の発売を予定している。

販売は基本的に法人向け。第4世代モデルの価格は60,000円のところ、3月31日までは早割により45,000円(いずれも税別)。

2020年の第1世代「Comodo gear」
2021年の第2世代「Comodo gear i2」
2023年の第3世代「Comodo gear i3」

同シリーズは、首周りに装着するネック部の頸動脈を狙う3カ所に、電気で冷えたり温まったりするペルチェ素子内蔵のプレートを搭載。

他メーカーの同種の製品と異なるのは、ペルチェ素子だけでなく、冷却水を循環させてプレートを冷やしている点にある。そのため気温40℃の環境でも、肌に接触するプレートの温度を20℃以下に保てる。

効果的にプレートを冷やせるのは良いが、ネック部とバッテリー部のほかに、冷却水を冷やすラジエーターが必要となる。既存モデルでは、扱いやすさに課題があった。最新モデルでは、このラジエーターをネック部の後部に内蔵したことにより、扱いやすさを格段に向上させている。

今回、その最新モデルを富士通ゼネラルに取材し、装着する機会を得られた。実際に手にして装着してみたレビューを記していく。

最新の第4世代では、ネック部の後部にラジエーターが内蔵され、シンプルな構成になった
第4世代のスケルトンモデル。冷却水が張り巡らされている
ネック部の後部にラジエーターが内蔵されている
ラジエーターが搭載されているネック部の後部

ネック部はウェアラブル機器としてはコンパクトとは言えないが、パーソナルなエアコンと考えれば小さいと感じられる。

ネック部を首にかけたら、コントローラーを長押しして電源をオンにする。はじめに、耳元で「ゴロゴロゴロ……」という水が流れる音がかすかに聞こえる。まもなく首の後方1カ所と前方2カ所が冷たくなってくるのが感じられた。

コントローラーでは動作モードを「LOW/MEDIUM/HIGH」の3段階で調節可能。また冷却のほか、温暖モードにも切り替えられる。

ネック部の全体
首の後ろを冷やすプレート
首の前方2カ所を冷やすプレート
首周りは、フレキシブルに調整できる
装着後に、ネック部の両端を面ファスナーで留める
電源ケーブルの途中に配置されているコントローラー
コントローラーの裏面
ネック部の後部のフタを開けると、冷却水を循環させるチューブが確認できる

一見するとラジエーターを内蔵したネック部の後部が大きく重そうだが、装着すると「肩が凝りそう」といった負担は感じなかった。前後の重量バランスがとても良い。それよりも、ネック部からつながる電源ケーブルとバッテリーの存在がやや気になった。

作業着で装着した場合のイメージ
同社が開発したバッテリー
ネック部とバッテリーをつなげるケーブル

室内温度が35℃を超える実験室で、実際にウェアラブルエアコンを装着して体験した。部屋に入ると高温なうえに、湿度が60%超と高く室温以上に暑さを感じる。まさに高温多湿の日本の夏といった過酷な環境。筆者は少し厚手の冬用の長袖のシャツを着ていたこともあり、部屋に入って数分後には、首筋から汗が噴き出してきた。

35℃以上の環境を再現した実験室

そこで装着していたウェアラブルエアコンを、冷却モードで起動。すぐに首筋が冷えてくる。暑い中でエアコンの風に当たるように「あぁ〜涼しいぃ〜」となるわけではないが、それでもひんやりとして気持ちがいい。

また、頸動脈を狙ってピンポイントで冷やすため、上述したエアコンのような涼しさを感じるわけではなく、じわじわと体の中を冷やしていく……いや高温多湿の環境の中でも「過度な体温上昇を抑える」というのが正しい表現だろう。

また同社のウェアラブルエアコンの場合、こうした35℃の環境下でも、プレートがしっかりと冷える点が特徴。

サーモグラフィーで温度を計測。ウェアラブルエアコンを当てていた部分は20℃前後と、よく冷えていた

筆者は実験室の中に10分ほどいた。ウェアブルエアコンを装着していても「暑い!」というのは変わらないが、当初、汗をかき始めていたのが、しばらくすると止まった。これはもしかすると同機の効果なのかもしれない。

ちなみに開発・商品企画を担当した佐藤龍之介さんは、実験室の中でずっと取材対応をされていたが、近くから確認しても汗を流している様子はなかった。汗の量は体質によるものだが、それでも辛い様子にも見えなかったのが印象的だ。

開発・商品企画を担当した佐藤龍之介さん
実験室内は、カメラのレンズがすぐにくもってしまうほど高い湿度

それにしても、湿度が60%前後と高い点は別として、猛暑日と呼ばれる35℃という環境は、2024年の7月から9月にかけては各地で多く観測されている。改めて実験室でその温度を体感すると、この中で体を動かす作業をするには、ウェアラブルエアコンなどの対策が必須だと分かった。

前述した開発・商品企画担当の佐藤さんによれば、12月に最新モデルの予約を開始してから、既に数万件の予約が入っているという。

これまで鉄鋼関係の企業を中心に同シリーズを提案してきたが、今後は製造業に訴求を広げるという。また基本的には法人向けの製品だが、個人事業主による購入も可能だ。

また現在はウェアラブルの事業として、首を冷やすということを主眼にして開発しているが、今後は空調機器のエアコンと連動してどうなるかなどを検証したいとのこと。というのも、空調機器は空間を冷やすものだが、温度の感じ方は個々人で異なる。そうした感じ方の違いが空調における省エネを阻害している要因でもある。空調機器の使用時に、ウェアラブルエアコンなどの併用が、どう省エネに貢献できるか、今後徐々に展開していきたいとしていた。

今後は空調機器のエアコンと連動してどうなるかなどを検証していきたいという