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パナの新エネファーム、発電時の熱で浴室乾燥もできる

家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」

パナソニック エレクトリックワークス社は、家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」の戸建て住宅向けの新製品を4月21日に発売する。発電時に発生する熱を給湯や床暖房だけでなく、浴室乾燥にも使えるようになった点が特徴。エネルギーロスを抑え、家庭でのエネルギー自給率を高められるという。

浴室乾燥にも使える利便性と設置性を向上

「エネファーム」は、水素と酸素を化学反応させることで電気と水を発生させる機器。都市ガスやLPガスから取り出した水素を、スタックで空気中の酸素と反応させて発電する。発電時に発生する熱を給湯や床暖房にも利用するため、エネルギーロスが少ない点が特徴だ。

【訂正】初出時、エネファームの仕組みについて「水の電気分解を利用し」としていましたが、正しくは「水の電気分解と逆の原理」を利用しているため、訂正しました(17時4分)

エネファームは送配電ロスが少ないため、エネルギー利用効率が高い
エネファームは電気とお湯を同時につくれる

「家庭のエネルギー消費において、電気でしか賄えないエネルギー商品は全体の4割。給湯、暖房、厨房をあわせると、全体の2/3は熱エネルギー。カーボンニュートラルを実現するためには、徹底した省エネに加え、投入した一次エネルギーを発電と熱にバランス良く変換することが重要」と同社燃料電池企画部長の扇原弘嗣さんは説明する。

同社では2009年にエネファームの一般販売をスタートさせて以降、約2年ごとにモデルチェンジし、市場のニーズにあわせて進化させてきた。

2019年に発売したモデルでは、発電時に発生する熱を床暖房に用いる「PREMIUM HEATING(プレミアムヒーティング)」を搭載。これは、床暖房スタート時にガスを燃焼させるが、保温運転時や設定温度が低い場合はエネファームのお湯を熱源として利用するため、ガスの消費量を抑えて気兼ねなく使える機能だ。

2021年に発売したモデルはセルラー方式のLPWA(Low Power Wide Area)通信機能を標準搭載。有線LAN工事やWi-Fi設定は不要でネットワークに接続し、各エネファームにおける稼働状況を把握できる。

今回の新製品は、これらの機能をさらに進化させた。

プレミアムヒーティング機能では、新たに浴室乾燥機での使用を可能にした。浴室乾燥機は、インテリジェント通信Ver6.00対応機器であれば対応するという。

最大60分エネファームの温水を利用し、最後の仕上げにはバックアップ熱源機で作った高温水を使う。4kgあたりの洗濯物を乾かす場合、従来型の浴室乾燥機で乾かした時と比較すると、コスト換算で約55%削減になるとしている。

部屋干し需要の増加に対応する
浴室乾燥機に発電時に発生した熱を活用する

奥行きをスリムにした点も新製品の特徴だ。

「貯湯ユニットの本体奥行きを50mm減らし、貯湯ユニットと本体の奥行きをともに350mmとしました。住宅外壁から敷地境界線までが500mmのスペースに設置できるため、従来設置できなかったところにも設置できるケースも大幅に増えると見込んでいます」(扇原さん)とした。

エネファームは発電した時に発生する熱を使うため、熱を貯める場所がなくなると発電を止めてしまうという。そのため熱を貯める場所であるタンクが大きいほど発電し続けるため、省エネ性能が高くなる。

今回の新製品では貯湯タンクの薄型化に伴い容量が100Lとなったが、スタックの発電部分の性能を向上させ熱効率を改善したほか、熱制御を工夫することで従来製品と同等以上の省エネ性を確保したとする。

スリム化することで設置性を向上させた

このほか省エネルギー機器の導入などによる温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度「J-クレジット」の認証取得もサポートする。

前出のとおり、2021年度以降発売のエネファームはLPWA無線通信を搭載しており、エネファームが発電した量を遠隔で取得できる。その情報を使えばCO2排出量の削減量を算出できるため、J-クレジットの認証を取得できる。自治体やガス事業者の活動を、遠隔で取得したデータを提供することで支援するという。

「自治体様やガス事業者様でもJ-クレジットの認証取得の動きは年々増しています。一方、家庭用機器は1台あたりのCO2削減量が少ないため、たくさん台数を束ねて証書化するという手間が生じます。新製品ではLPWAのプラットフォームを活用して、各住宅に設置いただいているエネファームの累積発電量を遠隔で取得できるようにしております」(扇原さん)。

J-クレジットの認証の取得をサポートする

エネファームは停電時でも電気とお湯が使えるほか、断水時の生活用水も確保できるなど、災害時に強い点も特徴だ。新製品では、より手軽に水を取り出せるよう、非常時の水取り出し口を追加し2カ所にした。タンクの上半分の水を、立ったままペットボトルなどの容器に取り出せるとする。

水取り出し口を2カ所にした

同社スマートエネルギーシステム事業部燃料電池水素事業総括の加藤正雄さんは「省エネ、再エネ導入における制度面での義務化や支援策が実施されています。エネファームはこれらに連携しながら導入をすすめていくものでございます。エネファームは省エネ機器として、そしてレジリエンス機器として社会に貢献していきます」とした。

カーボンニュートラル社会の実現のためエネファームの重要性が高まっており、令和4年度補正予算では、「住宅省エネ2023キャンペーン」における給湯省エネ事業として、エネファームに対する補助事業の実施が決定した