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安価な非純正バッテリーに落とし穴、火災で家が全焼する事例も

電気掃除機の非純正バッテリーが発火する様子

独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)は、非純正バッテリーによる事故事例を3月30日に発表した。主な事例は以下の2つ。

【事例1】電気掃除機の非純正バッテリーによる事故
電気掃除機のバッテリーパックを充電中、出火し、周辺を焼損した。電気掃除機に取り付けられていた非純正品のバッテリー内部で短絡が生じて異常発熱し、焼損したものと考えられる。

【事例2】電動工具の非純正バッテリーによる事故
ネット通販で購入した電動工具用バッテリーパックを充電器で充電していたところ、異音がして出火し、周辺を焼損した。非純正品のバッテリーパックに、充電中の電池のバランスを検知する回路がない構造であったため、電池が充電されすぎてしまい、異常発熱し、焼損したものと考えられる。

NITEでは、非純正バッテリーは純正品と類似した形状をしており、機器に取り付けられる場合もあるが、機器の安全動作を保証するものではないとしている

非純正バッテリーが抱えるリスク

上記の事故事例を始め、NITEに通知のあった非純正バッテリーの製品事故情報は、2017年から2021年までの5年間に134件あり、これらの事故はすべて製品や周囲が焼損した事故だという。直近の3年間は事故が多く、毎年家屋の全焼事故が発生しているという。

多くの事故は使用中や充電中に発生したものだが、特に最近では充電後に置いていただけで発火に至った事故も報告されており、非純正バッテリーの中には純正バッテリーよりも多くのリスクを抱えているものがあると注意喚起している。

非純正バッテリーが抱えるリスクについて、NITEは以下の点を挙げている。

●設計不良で安全保護装置が作動しないものがある
非純正バッテリーには電気製品の安全基準に関する法律である電気用品安全法の技術基準を満たしていないまま販売されているバッテリーもあり、この基準で求められている過充電保護装置などの安全装置が、異常発生時に働かないおそれがあるという。

また悪質なバッテリーの中には、基準を満たしていないにもかかわらず、安全基準を満たしていることを示す「PSEマーク」を表示していることがあるため注意が必要としている。

写真は非純正バッテリーのコピー品という悪質な物。電気用品安全法の技術基準で求められている事項を満たしていないにもかかわらず、基準を満たしていると誤認させるためにPSEマークを表示

●品質管理が不十分なものがある
製造時の品質管理が不十分で、電池内部に異物が混入していたり、電気回路の部品に不良品が使われていたりする場合がある。そういったバッテリーは使用中や充電中に発火事故が発生するおそれがあり、バッテリーによっては充電後に置いていただけで発火した事例もあるという。

●接続した機器のメーカーの対応、補償を受けられない
非純正バッテリーを使用していた場合、製品が原因となる事故が発生しても機器メーカーからの補償を受けられないという。非純正バッテリーの使用は、機器メーカーからすると改造に該当する場合があるため、メーカーが損害などに対応する義務はないとしている。

非純正バッテリーを販売した事業者に責任を求めることはできるが、非純正バッテリーの販売業者の中には、消費者から連絡するための情報が不十分な事業者もあり、連絡が取れなかったり、連絡できたとしても対応を行なっていなかったり、日本語で対応してもらうことができなかったりするためリスクが高いという。

●廃棄が困難な場合がある
消費者が廃棄する一般廃棄物は自治体が処理を行なう責任があるが、バッテリーは回収・処理時に発火などのトラブルが発生する可能性があることから、対応していない自治体もあるという。

また一般社団法人 JBRCでは、スリーアローマークのついたJBRC会員企業のリチウムイオンバッテリーなどの回収を実施し、リサイクルするためのルートを構築している。しかし非純正バッテリーを販売する事業者の多くはこの会員企業ではないため、住んでいる地域の自治体が回収していない場合、廃棄する方法がないものがほとんど。

なお、廃棄する場合には、発火などのリスクを低減するため放電状態(機器に接続しバッテリーの充電残量をできる限り少なくしておく)にして廃棄することを推奨している。

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