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驚き! パナソニックの"シムシティ"! 街づくり、景観づくり、家づくりをVRで
2019年5月24日 14:54
「VR(仮想現実)」と言えば、筆者の中ではヘッドマウントディスプレイを付けて、バーチャルな彼女とイチャイチャするもの。しかし所変われば品変わる。5月23日に行なわれた、パナソニックのVR技術説明会というのに参加してきたのだが、もの凄い「まじめ」な使い方をしていたのだ!
30年見ていた! パナソニックのバーチャルさん
時は1990年。16bitのスーパーファミコンが発売され、街のお菓子屋さんや喫茶店では「ティラミス」が大流行。そして共通一次試験が、大学入試センター試験に変わった。
パナソニックがバーチャルリアリティに着手したのは、そんな時代。奥様に使いやすいキッチンをVR空間で体験してもらうシステムで、両手にグローブ、頭にヘッドセットをつけて、空間をウロウロ。
シンクやガス台、棚の使い勝手を、実際に施工しなくても確かめられるというものだ。もちろん今の3Dゲームみたいな高精細画像を表示できるマシンスペックではないので、ワイヤーフレームにちょっと色だけ塗ったくらいのグラフィック。高精細なイメージ図は、シミュレーション結果を元にレンダリングするというものだ。
その後もパナソニックは、通産省や経産省の関連プロジェクトに携わりながら、高精細化や高速化、3Dめがね(偏光)式など、進化を続けていた。こうした基礎技術を元に2005年辺りで「都市計画支援VR」が完成。
都市計画や景観をシミュレーションできる技術として地方自治体の町おこしを支援してきた。
模型やイメージカットからは読み取れない、建物と建物の間の空間、そしてさまざまな方向から見た景観などを、1/1スケールで投影できるというシステムだ。直径8.5mの半球型ドームスクリーンにパソコン10台、プロジェクター18台で投影し、空間を見える化できる。これを使って都市計画をコンサルティングする。
実際に見せてもらうと、視野すべてがかなり高精細なVR空間になり、リアルな映像を映し出していた。カメラが街中を移動すると、あたかも自分が歩いているかのよう。急にカメラが立ち止まると、つんのめりそうになって、一緒に見ている数人の観客が前の手すりを思わず掴んでしまうほどのリアルさだ。
最大30人で見られるが、映像を見ながら、いや仮想の街を歩きながら景観や人の導線をチェックできる。
都市再生・地方創生の影の立役者、17年間で1,500の街を構築した「都市計画支援VR」
「都市計画支援VR」の立体映像は、パナソニックの汐留ビルに併設の「汐留サイバードーム」で確認できる。ただエンターテインメント施設ではないため、現在は、同社にVRコンサルティングを依頼、もしくは依頼を検討していてる、官民の団体のみが確認可能。
2001年ごろの試作段階から、町おこしなどのコンサルティングを行なっており、これまでに1,500件以上の街をシミュレーションしてきたという。1,500もの街ともなると、自分の家の近所もあったりするので、ここにパナソニックが手がけた街のCG画像を、少し掲載しておこう。
日時を指定して日の傾きを変えたり、たとえば映像中の乗り物オブジェクトで移動することも、もちろん可能。デジタルなので、変更前と変更後のプランを瞬時に切り替えて比較するなんてこともできる。
さらには、気体や流体のシミュレーション結果を合成表示したり、群集を街に配置して動かすことで、人がいるリアルな街の景観を見ることも可能。
ちょっと変わったところでは、東京ドームの照明をLED化する際に行なった、グランドの照明シミュレーションがあるという。どいうことかというと、選手があらゆる方向からボールを追いかけても、LED照明の光が目を直撃して玉を見失わないためのシミュレーションだったという。
もちろん観客からもプレイヤーがしっかり見えるようにグラウンド全体を明るくする必要がある。パナソニックの大型LED照明の特性をすべてデータ化し、どこに、どの向きで、どのぐらいの明るさで点灯するかを、このUR技術でシミュレーションしたのだという。
オリンピック後に選手村を分譲住宅に、バーチャルモデルルームのために進化!
「空間を見える化するツール」の「都市計画支援VR」。考えてみれば都市じゃなくても、ビル内の景観や人の導線、狭いところならオフィスの景観、果ては住宅の景観だってフルスケールで表現できる。
ただ汐留サイバードームのように、8.5mの半円球スクリーンが必要とあっては、設置スペースの問題や多くのPCとそしてプロジェクターが必要だ。なので「都市」ではなく「部屋」の空間をVRで手軽に体験できるようにしたのが東京・晴海の「HARUMI FLAG」にある「VIRTUAL STAGE MIERVA」だ。
ご存知の通り2020年の東京オリンピックでは、晴海の広大な空き地に選手村が建設される。そしてオリンピックが終わると、を分譲(一部は賃貸)住宅として販売されるのだ。
しかしココで問題が。選手が寝泊りするタワーマンションは何棟も建てられ、各階によって景観も異なる。なにせ3方を海に囲まれ、ベイブリッジを目の前にするロケーションなのだ。
また分譲する間取りもさまざまなタイプがあるので、モデルハウスを作ろうとなると何室も作らなければならい。そこで部屋のシミュレーションを行なうパナソニックの「VIRTUAL STAGE MIERVA」の登場だ。
半円柱型の曲面スクリーンは、幅が5.2m、高さ2.5mとコンパクト。でもスクリーン中央に立つと全視界をVR空間に覆われるので、高い没頭性がある。また投影するプロジェクターは左右に2個で、PCは1台と「汐留サイバードーム」に比べるとめちゃくちゃコンパクト。
しかもスクリーン自体に奥行きがあるので、裸眼でも立体感のある映像が見られる。つまりモデルハウスを施工しなくても、どの棟の、何階の、どんな間取りかを入力してやれば、フルスケールで間取りを実感できるほか、窓から見える景色までシミュレーションできるのだ。
このシステムは、おそらくマンション販売のソリューションを変えていくことになるだろう。
さらに別の部屋では、実際の間取りを作り景観だけをリアルに見られるシステムもあった。言うなれば、電車や飛行機のシミュレータのようなもの。昼間や夜間の景観を切り替えられるだけでなく、海を行く動く船まで描かれているので、かなりリアルだ。