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パナソニック、次の100年のための“家電ビジョン”~他社連携による共創を加速

パナソニックは“憧れ”を作る会社

 2018年3月に創業100周年を迎えたパナソニックは、今後の家電の方向性や新たな取り組みを“家電ビジョン”として発表した。パナソニック 専務執行役員 アプライアンス社 社長 本間哲朗氏自らがプレゼンテーションを行ない、パナソニックの今後の方向性について語った。

パナソニック 専務執行役員 アプライアンス社 社長 本間哲朗氏
社長自らプレゼンテーションを行なった

 「パナソニックにとって家電は常に事業の中心にあった。我々が作ってきた製品は、新しい家電の基準となり、暮らしの定番となってきた。30年前、家電は間違いなく憧れの存在だった。家電は常に、新しい暮らしの憧れを届けるものでなくてはならない。パナソニックは何を作っているかと聞かれたら、憧れをつくっているところだと答えたい。それは、変わることのない未来に向けた仕事だと信じている。しかし、変化のスピードがとても早い今、これまでのやり方を続けていてはだめ。我々が作る製品は『これでいい』というものではなく、『これが欲しい』でなくてはならない」

パナソニックがこれまで作ってきた製品は家電の基準となり、暮らしの定番となってきた
「家電は常に、新しい暮らしの憧れを届けるものでなくてはならない」と話し、「ASPIRE TO MORE~くらしにもっと憧れを」をという言葉を掲げた

 その上で本間社長はキーワードとして「HOME」を挙げる。従来、壁と屋根に囲まれたスペースをHOME、つまり家として捉えていたが、離れて暮らす家族とも同じ時間を共有できる、あるいは同じ場所にいなくてもコミュニティで同じ価値観を共有できる時代になった今、HOMEはコミュニティ、ソサイエティとつながった存在であり、パナソニックはその中でより豊かな体験、サービスを提供していくという。また、そのために様々なパートナーと組んで、イノベーションを加速していくとし、3つの提携を発表。

 「HOMEの概念を広げることで、世界中にあこがれと想像をはるかに超える体験を届けていきたい」(本間社長)とした。

西川産業とパナソニックが睡眠関連サービスの共同開発を開始

 まず1つめは、美と健康にも深く関わる「睡眠分野」での取り組みを強化するとして、西川産業との連携を発表した。睡眠科学やライフサイエンスの視点から寝具の開発を行ない、眠りの知見を有する西川産業と、寝室環境において重要な要素である温度・湿度・照明・音響などの機器ネットワーク制御技術を有するパナソニックの両社で睡眠環境をサポートするサービスの開発を目指すという。

 東京西川 代表取締役社長 西川八一行氏は今回の取り組みについて以下のように語った。

 「人生100年時代を迎え、我々は人生を通して30年もの間、睡眠に時間を割いている。その時間を輝かせる、あこがれの時間、充電していく時間として考えていく。我々も睡眠の研究機関をもち、これまで様々な知見を得てきたが、我々が持つのは睡眠中のデータや寝具の知識であり、その前の時間、日中どのように活動したかだったり、室内環境についてのデータを把握するのは得意ではない。そこのところをパナソニックさんと補いながら、成果を出していきたい」

睡眠分野での取り組みを強化。睡眠科学やライフサイエンスの視点から寝具の開発を行ない、眠りの知見を有する西川産業と協業することで、新たなサービスの創出を目指す
東京西川 代表取締役社長 西川八一行氏

ドコモとの連携でIoT家電を強化

 NTTドコモとは、省電力広域無線通信技術「LPWA(Low Power Wide Area)」を活用したIoT家電の実用化に向けて、共同実証実験を実施する。

NTTドコモとは、省電力広域無線通信技術「LPWA(Low Power Wide Area)」を活用したIoT家電の実用化に向けて、共同実証実験を実施。写真左からアプライアンス社 本間社長、NTTドコモ 取締役常務執行役員 古川浩司氏
省電力で長距離通信を実現するLPWA。インターネット回線がない家庭でも電源を入れるだけでLPWA通信技術を介してクラウドサービスが利用できるようになる

 LPWAは、省電力で長距離通信を実現することから、IoTに最適な無線技術として、幅広い業界で関心が高まっており、ドコモはLPWAを活用したネットワークサービスの提供に取り込んでいる。一方、パナソニックはすでにIoT家電を発売しているが、サービスを利用するためには、ユーザー自身が家電とネットワークの接続を個別に設定する必要がある。LPWAを搭載されたIoT家電であれば、インターネット回線がない家庭でも電源を入れるだけでLPWA通信技術を介してクラウドサービスが利用できるようになる。

 今後、両社ではLPWAを活用したより安全で、安心して使える家電やAIを活用した便利で快適な家電の企画・検討を進める。ドコモは、ユーザーとの対話を通じて一人ひとりの要望に的確に応え、サービスを提供する「AIエージェントサービス」を2018年春より開始するが、これを利用することも視野にIoT家電向け、クラウドサービスの企画・検討にも取り組む。

 2018年秋をめどに、東京、大阪、滋賀の3地域で合計1,000台規模のLPWA通信機能対応家電を用いた実験を順次開始する予定で、このような全国規模、かつ大量の家電へLPWA通信技術の導入を想定した、実証実験は国内初となる。将来的には年間数百万台規模のパナソニック製LPWA対応IoT家電を、ドコモの広域通信網を経由して、両社のクラウドサービスに接続させ、IoT時代の新たな体験や価値創出を目指すとしている。

 本間社長はIoT家電の現状について、「インターネットに繋がる家電というものは、15年前から取り組んでいるが、製品を買っていただいても、実際に家電をネットワークにつなげて使っていらっしゃる方というのは、極めて少ない。家電をどのようにして、ネットワークにつなげるのか、その答えの1つがLPWAだと考えている。電源を入れるだけでネットワークにつながるので、暮らしのあこがれ体験を進化させ続けることができる」と話した。

パナソニックでも早い段階からIoT家電を展開してきたが、実際にネットワークと家電をつなげている人は、AV機器で約30%、洗濯機やエアコンなどの白物家電で約15%にしか満たないという(いずれもパナソニック調べ)
家電とネットワークをつなぐことでさらに豊かな体験、サービスを創出できるとする

 一方で、パナソニックの家電製品とGoogleアシスタントの連携を進めることも明言。今後、日本でもGoogleアシスタント搭載のスピーカーや、ヘッドホンを導入していくという。また具体的な時期は未定としながらもLINEのスマートスピーカー「Clova」との連携も順次進めていくという。

Googleアシスタントの連携を明言。Googleアシスタント搭載のスピーカや、ヘッドホンを導入していく
時期や詳細は未定としながらも、LINEのスマートスピーカー「Clova」との連携も順次進めていくという

新規事業創出を目的とした合弁会社を設立

 さらに、新規事業の創出促進を目的とした新会社「株式会社 BeeEdge(ビーエッジ)」の設立も発表した。米国・シリコンバレーを拠点にしたScrum Ventures(スクラムベンチャーズ、以下SV)とパナソニックが共同で出資、運営するもので、パナソニック社内の有望な新規アイディアビジネスを切り出して事業会社化するスタートアップを中心に出資し、スピーディーな事業化を目指す。

 新会社 BeeEdgeの代表取締役社長にはSV社の春田真氏が就任。同氏は、大手銀行で8年勤務した後、ベンチャー企業の世界で20年ほど活躍していたという。

 「日本はアメリカに比べて、ベンチャー企業が少ないが、一番の問題は人にある。日本では、大企業に優秀な人が集まってしまい外に出られない。そういった人物やアイディアがベンチャー界隈に出てきてくれれば、日本でもいろいろな仕事、企業ができるのではと思っていた。本間社長には、社内で産まれたアイディアをもっと外に出して形にしていこうという熱い想いがあり、そこに共感した。日々の生活を彩りよくするものだったり、社会貢献につながるような事業を今後、複数生み出していきたい」(BeeEdge 代表取締役社長 春田真氏)

新会社 BeeEdgeの代表取締役社長(右)と本間社長(左)