長期レビュー
象印マホービン「パンくらぶ BB-KW10-PH」その3
象印マホービン「パンくらぶ BB-KW10-PH」 |
パンだけでなく、日本そばも作れるホームベーカリー、象印マホービンの「BB-KW10-PH」。第1回では基本の食パン、第2回では食パンの焼き上がりのバリエーションのほかに、シナモンロールや餃子を作った。最終回となる今回は、さまざまなアレンジパンのほか、ジャムや日本そばの調理例をご紹介する。
■「具入れ容器」を使ってレーズンパンを作ってみた
「パンくらぶ」で具入りのパンを作るなら、「具入れ容器」に具を入れて、ふたの裏にセットするだけでいい。この具入れ容器は、具を入れるパンを作る時のみ、本体にセットする仕組みで、具を入れない普通の食パンを作る時は本体から外しておく。
さっそく、定番のレーズンパンを焼いてみた。レーズンの香り豊かなおいしいレーズンパンができた。レーズンは70g使用する。ケースいっぱいがおよそ70g程度なので、計量は簡単だった。
※編集部注:お詫び・修正のお知らせ
初稿時、具入れ容器は全てのコースで作動するとの記載がありましたが、これは間違いでした。本来、具入れ容器はレーズンパンなど具を入れるパンを作る時のみ本体に取り付けるもので、全てのコースで作動するものではありません。お詫び申し上げるとともに、修正いたします。
具入れ容器にレーズン70gを入れる | 具入れ容器をふたの裏にセット | 特別な設定は不要。いつも通りに焼きたい食パンのメニューを選ぶだけ |
レーズンパンが焼けた | 弾力があっておいしいので、主食とおやつの両方で活躍 |
なお、自動具入れが可能な材料は、ドライフルーツやナッツなどの乾燥しているもの、熱で溶けにくいもの、となっている。水気や粘り気のあるもの、熱で溶けやすいものは、具入れブザーが聞こえ、表示部に「具入れ」と表示されたタイミングで手で入れる。
自動具入れの様子。具入れ容器をセットすると、投入後は窓から中が見えなくなってしまうというデメリットも |
■レーズンパンを1時間保温してみた
1時間保温したレーズンパン。焼きたてパンに見られるシャキッとした佇まいはなく、疲れた感じに |
「パンくらぶ」の食パンは、焼き上げ後、最長1時間まで保温できるという。そこで焼けた直後のレーズンパンを1時間保温してみた。
1時間後に取り出すと、少々しぼんで表面にシワができており、残念ながら焼きたての香ばしさは残っていなかった。心なしかミミが厚みを増して固くなったようにも思えた。また、保温しなかったパンに比べると、冷えたときに少々水分が失われていたように思う。予約していたのに焼き上がり時間に寝坊するといったなんらかの事情や、トーストではなく、焼きたてを温かいまま食べたいこともあるだろう。そんなときに活躍するに違いない。しかし、保温はできるだけ短いほうがいいだろう。
なお、1時間経過しても特にブザー等はなく、静かに液晶表示がオフになるだけだった。忘れてしまう恐れもあるため、通知機能があるとありがたい。
■米粉100%のパンを作ってみた
ここ2年ほど、お米や米粉、残ったご飯を使って焼くお米関連のパンに注目が集まっているようだが、「パンくらぶ」でも、米粉を使った米粉100%の食パンや、ご飯を入れたパンが焼ける。
「パンくらぶ」で使う米粉は、「シトギミックス 20A」という小麦グルテン入りの製品が勧められている。
ネット通販で購入した「シトギミックス 20A」 | 米粉100%パンも、小麦と同じ要領でOK。ただし、砂糖、スキムミルク、バターは多めの配合 | メニュー「7」が米粉パン。コネのリズムが小麦と違って細かい |
「シトギミックス 20A」で焼いたお米100%パンは、米粉だと言われなければ分からないほどの仕上がり。カットしてみると、トーストしなければ形が保てないのではと思うほどぷるんぷるんで柔らかい。小麦の「もちもち」や「ソフト」とはまったく異なる、しっとりした柔らかさである。それでいて、ミミはしっかりとした弾力があり、食べ応え十分だ。
焼きあがった米粉100%パン。小麦と区別がつかない | よく膨らんでいる | 軽くつまむだけで潰れるほど柔らかい |
スーパーで見かけた、萬籐の「パン用米粉」という製品でも試してみた。こちらも「パンくらぶ」との相性は抜群のようで、食パンらしく立派に膨らんでくれた。以前、この米粉を使って、ホームベーカリーで焼いたときにはほとんど膨らまなかったので、筆者にとっては信じられないくらいのすばらしい仕上がりである。
萬籐の「パン用米粉」 | 見事な焼き上がり | 立派な内相に、米粉100%コースの威力を感じた |
しかもこちらもミミはしっかりしているのに、中はぷるんぷるんとやわらかくて美味。「シトギミックス 20A」と比べるとややコシがあるように感じた。米粉のお値段が少々高いのが玉にキズだが、これだけふんわりできるなら、作る価値は十分あるだろう。
厚めにカットしてトーストしたところ、中はまさにもっちもち | 米粉100%パンは、ハネ離れがすばらしい | 米粉パンは、パンケースやハネにパンがほとんど残らないようだ(泡は、パンを抜いた後に入ってしまった水) |
■雑穀ご飯入りパンを焼いてみた
次は残りご飯を入れたパンである。1斤分に使用した雑穀ご飯は150g。ご飯の分だけ小麦と水が減り、スキムミルクは使わず、砂糖も通常の半分だ。
いつも食べている雑穀ご飯を用意 | 水、小麦粉半分、雑穀ご飯と重ねる | 雑穀ご飯の上に、残りの小麦粉や砂糖などをのせる |
材料を入れるときは、よく混ざるように強力粉の間にご飯を挟むようにして入れるのがコツらしい。コネの最中は、ご飯の影響か、珍しく生地がパンケースの側面に当たる音がした。実は「パンくらぶ」は総じてわりと静かなのだ。途中で中を覗くと、ご飯粒が残っていたが、焼き上がったパンは実に見事な形をしており、カットしても、まさかご飯が入っていたとは思えないようなきめ細やかな内相をしていた。ときおりミミの中で、雑穀の粒が固さとして存在感を主張する程度である。
メニュー番号「5」の「ごはん入りパン」を選ぶ | 焼き上がった雑穀ご飯入りパン。見事な発酵 | 内相がきめ細かくて驚いた。「もちもち」よりももちもちしていた |
「パンくらぶ」には「もちもち」「ふんわり」「ソフト」といったように、小麦だけで十分おいしい食パンが焼けるコースが用意されている。あえて残りご飯をパンに入れてパンにする意味は何かといえば、ご飯が入ることによって生まれる腹持ちのよさと、小麦では得られない独特の風味や食感が楽しめることだろう。ご飯がちょっと余っているけれど、今食べたいのはパン、というときにも便利だ。しかも、米粒からパンが焼けなくても、米粉が手に入らなくても、炊飯済みのご飯さえあれば、お米系のパンが楽しめる。
■りんごジャムを作ってみた
パンと一緒にあるとうれしいのがジャム。今ではホームベーカリーの定番ともいえるかもしれないこの機能も試してみた。
作ったのは紅玉を2玉使ったりんごジャムだ。1つは2~3mm幅のイチョウ切りに、もう1つはすり下ろして、砂糖、レモン汁とともにパンケースに入れ、ジャムコースを選択。これだけで、約1時間20分後にはアメ色のりんごジャムができあがった。
ジャムの材料はこれだけ | 半分はカット、半分はすり下ろす。ミキサーを使うと早い | 材料をすべてパンケースに入れて本体にセット |
メニュー番号19の「ジャム」を選んで「スタート」キーを押すだけ | 完成したりんごジャム |
すり下ろした分はトロトロに、イチョウ切りにした分は歯応えを残した仕上がりだ。もうちょっと煮込んでもいいのでは、とも思ったが、ときおりハネで回転させながらクツクツと煮込んでくれるので、材料を入れたら、その後はパン同様にそばについている必要は全くないのがメリットである。
酸味と甘さが同居していておいしい | 「パンくらぶ」で焼いた食パンに塗れば、どちらも自家製という満足感が得られる |
すり下ろさずにジャムにしてもOK |
ちなみに、りんごジャムを作る際、まったくすり下ろさずに煮込むと写真のようになる。
これをシナモンロールに入れてみた。アップルシナモンロールである。ジャムの水分が邪魔になるかと思ったが、全く心配は無用だった。食べるほどにりんごの甘みが染みだし、非常に満足度の高い一品になった。レシピ集に載っている範囲でも、組み合わせて作ってみるとかなり楽しめる。
シナモンロールの材料にりんごジャムを加えてカット | りんごタップリの、巨大なアップルシナモンロールができた | 甘いものが好きな方には相当喜ばれるだろう |
■「二八そば」を作ってみた
「パンくらぶ」の特徴の1つとして、マニュアル設定が可能な「ホームメイドコース」があるが、実はもう1つ大きな特徴がある。このモデルからそば生地が作れるようになったのだ。うどんやパスタ生地は定番だが、確かにそば生地は聞いたことがない。
そば生地といえば、コネが相当むずかしいことで定評がある。筆者は以前、自宅でそばが作れるというアイテムを試したことがあるが、うまく麺にならず、最終的にはそばがき状態で食べた経験がある。それ以後そば作りに挑戦したことはなかった。
しかし説明書をみると、そば粉、強力粉、水をまとめて入れるだけでよく、途中の加水は一切不要。ならばと思って試してみたのだ。条件として、そば粉は冨澤商店の「北海道産そば粉(石臼一本挽)」が指定されている。
そばの材料。そば粉は冨澤商店の「北海道産そば粉(石臼一本挽)」ご指定 | 材料をすべて入れるだけ。1度に2人前のそば生地ができる | メニュー番号16の「そば」を選ぶ。所要時間はわずか15分 |
結果、テクニックゼロ、器具ゼロの状態でもそば粉8割、小麦粉2割の「二八そば」を作ることができたので驚いた。
ぼそぼそだったそば粉がすっかりまとまっていた | 打ち粉をしてのばし、約2mm幅に切る。あとは40~50秒茹でるだけというスピード調理 | 初めてなのに麺の形状を保ったそばが作れた! |
しかもコネ時間はわずか15分である。コネている最中に窓が蒸気で曇って、取り出した生地はほんのり温かかった。ホームベーカリーを使うと、常に一定の温度でコネられるということだろうか。
コネている様子。最後は窓が曇り、取り出した生地はほんのり温かかった |
取り出したそば生地は、まな板の上で2mmほどの厚さにのばし、家庭用の包丁でカットしている。まな板の幅がないため、そばは2つ折りの状態で切ることになったが、それでもいきなり麺としての体裁を保てたのはすばらしい。その後改めて作ってみたが、やはりちゃんと「そば」として食べることができた。
まな板と包丁のサイズの都合上、麺の長さは出せなかったが、いきなり「二八そば」になったのには感動 | 二度目の器具なし「二八そば」でもこの通り | 太さはまちまちだが、麺の長さから、初回より上達しているのが分かる |
何も持たない素人がここまでできるのだから、「パンくらぶ」サマサマである。慣れれば合計30分程度で手打ちそばが作れるようになってしまうかもしれない。手打ちそばに憧れのある男性が体験してもきっと楽しいはずだ。本格的な趣味である“そば打ち”への入門コースとして適していると思う。年越しを手打ちそばにしたい方にもお勧めである。
ただし、切れやすいので注意が必要だ。せっかく麺になっても、茹でる際に箸でかき混ぜると、短く切れてしまう。インスタントラーメンを茹でる感覚で箸を入れてはいけないので注意しよう。
■ビギナーから上級者まで、フル活用できるホームベーカリー
以上、食パンからそばまで試してみたが、いかがだろうか。「パンくらぶ」を使っていて気づいたのは、動作音が比較的静かなことだった。モーター音はするが、生地がパンケースにあたるような音はしない。ただし、具の有無にかかわらず動作する自動具入れの音は少々気になった。「ホームメイドコース」で餃子の皮をコネている最中に動作したときは、さすがにオフにできたらと思った。ぜひご検討いただきたい。
パンがパンケースから取り出しやすかったというのもよかった。下を向けて数回振るだけでスッと抜けてくれる。抜けやすさと関連していると思うが、ハネによる穴も比較的小さいため、スライスしたときの影響も少ない。どうしても穴を最小にしたいときは、常に「ホームメイドコース」で焼き、途中でハネを取るという手もある。
パンケース、具入れ容器いずれも丸洗いが可能で、メンテナンスも楽だ。ミトンはついてこないが、よほど薄手でなければ、すでにお持ちのミトンで代用可能だろう。
レシピ集には、ドライイーストを、もちもち、ふんわり、国産小麦、米粉の分量、および天然酵母や生イーストを使ったときのおいしい配合が、細かく丁寧に紹介されているのもありがたい。
「パンくらぶ」は、ビギナーは簡単かつ確実においしい食パンが作れ、慣れたユーザーにはアレンジする楽しさを提供し、パン以外の調理の手間も省いてくれる、長く活用できるホームベーカリーといっていいだろう。そろそろ買い換えをとお考えの方にも、これからホームベーカリーでパンを焼いてみたいとお考えの方のどちらにも、間違いなくお勧めできる1台である。
2012年10月24日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)