長期レビュー

日立「ビートウォッシュ 湯効利用 BW-D9LV」

~あえて「縦型」洗濯乾燥機を買ってみました
by 石井 和美

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



日立「ビートウォッシュ 湯効利用 BW-D9LV」

 長年使っていた洗濯機のシャープ「ES-A70S」2002年製が、ついに壊れてしまった。変な音がするので中を見たら、パルセーター(洗濯槽の底で回転する羽根)の中心部がバキバキに割れていたのだ。調べてみたところ、パルセーターを自分で交換することはできず、修理代もそれなりにかかりそうだったので、新しく購入することにした。

 このシャープの洗濯機を買った当初は夫婦2人だったが、今は子供が2人になって、家族構成が大きく変わっている。我が家の洗濯機を選ぶ基準は「大容量」であり、「汚れ落ちがよい」ということ。保育園と幼稚園に通う子供達がいるので、洗濯物の量がハンパではない。汚れ方も凄まじく、一日中外で遊んでいる子供の服は泥でドロドロ、こぼしまくる2歳児の服は食べ物のシミだらけ、タオルやハンカチ類などの汚れ物も多く、毎日たくさん洗わなくてはならない。洗濯機がないのは大ピンチ。すぐにでも買わなければならないのだ。

 しかし、どれを買うか非常に悩むところ。主婦の憧れとも言えば、やはりドラム式洗濯機だ。スタイリッシュなデザインでおしゃれだし、乾燥もしっかりできる。一時期欲しくて仕方なかったドラム式洗濯機をついに買える時がきたのね、とウキウキしていたのだが、今年になって気になる縦型洗濯乾燥機が発売されてしまった。

 それが、今回から3回に渡って紹介する日立の縦型洗濯乾燥機「ビートウォッシュ 湯効利用 BW-D9LV」だ。ドラム式のように節水もできて、さらに従来の縦型洗濯機のようにため洗いも可能だという。「縦型なのに、こんなに高いの?」と仰天しつつも、洗濯容量9kg、乾燥容量6kgという大容量に惹かれて、フラッグシップモデルを購入することにした。


メーカー日立アプライアンス
製品名ビートウォッシュ 湯効利用 BW-D9LV
希望小売価格オープンプライス
購入場所楽天市場
購入価格123,480円

ドラム式と縦型、その違いは?

 まず、ドラム式と縦型の違いについて簡単に説明しておきたい。

 縦型の洗濯機は、洗濯槽の底に取り付けられているパルセータが回転し、貯めた水に水流を起こして、洗濯物を攪拌し洗濯を行なう。水を貯めて洗うため、洗浄力は優れているが、大量の水を使う。一方、ドラム式洗濯乾燥機では、洗濯槽が垂直方向に回転し、洗濯物を上に持ち上げて下にたたき落とす「たたき洗い」で洗浄。少ない水で洗うことができるのが特徴だ。

 乾燥機能については、縦型よりもドラム式洗濯機のほうが断然優位。ドラム式では、垂直方向に洗濯物を攪拌するため、衣類が乾きやすく、特にヒートポンプ式なら省エネ性にも優れている。外干しをしないご家庭なら、ドラム式のほうが便利だろう。シワがつきにくいなど、便利な機能もある。

 ただ、汚れ方が激しい子供の衣類を洗わなければならない我が家では、優先するのは汚れ落ち。乾燥機能の方は、雨の日などに使えれば良い程度。そんな条件から、ふだんは節水モードで洗い、しつこい汚れの時は水をためて洗うこともできる「ビートウォッシュ 湯効利用 BW-D9LV」(以下、ビートウォッシュ)に惹かれてしまったのだ。

縦型洗濯機なのに節水を実現。そのワケとは?

 ビートウォッシュは、洗濯・脱水容量9kg、乾燥容量は6kgと大容量なのも魅力の1つ。その分、本体サイズは650×645×1,040mm(幅×奥行き×高さ)で、一般的な縦型洗濯機より大きめになっている。我が家は洗面所の間口が狭かったので、ドアを外しての搬入となった。乾燥機能がない全自動洗濯機に比べると、サイズはかなり大きめなので、必ず事前に確認しておきたい。

間口が狭い我が家の洗面所。何度もサイズを測って確認してしまった。4cmしか余裕がない!ドアがあると入らないので、事前にはずしておいた。ドラム式も含め、上位モデルの洗濯機はサイズが大きいので、事前によく確認しておく必要がある搬入完了。さすが高級モデルだけあって高級感がある

 色はパールシャンパンとパールホワイトの2色で、我が家で購入したのはパールホワイト。さすがに最上位モデルだけあって高級感がある。一般的な洗濯機より背が高く、洗濯槽は浅くなっている。また、投入口は洗濯物の出し入れがしやすいように、広く設計されている。腰への負担が少なくなるので、腰痛持ちにとって嬉しい。

 ビートウォッシュの最も大きな特徴は、少量の水で洗濯する「エコビート洗浄」だ。洗濯槽の底面には大きな凹凸がついたパルセーターが設置され、このパルセーターで衣類を押して、たたいて、もみ洗いするのだという。

 また、洗濯槽の内側にも工夫がある。ビートボールと呼ばれる半球状の突起があり、洗濯板効果で、衣類に染み込んだ汚れを落とすという。洗濯工程中は水を循環させながらワイドシャワーで洗剤液を振りかけて浸透させるので、少ない水でしっかり洗えるとのことだ。

 さらに、BW-D9LVでは[eco]水センサーを搭載。[eco]水センサーは、水硬度センサー、布質センサー、布量センサー、水温センサーの4つを組み合わせたもので、家庭の水の硬度や水温などを検知して、表示される洗剤量や洗濯時間、使用水量を調整し、エコに洗濯を行なう。なお、この機能を搭載しているのは、ビートウォッシュの中でも最上位機種であるBW-D9LVだけとなっている。

 …さて、理屈はなんとなくわかったのだが、実際にどうなのかが知りたいところ。何はともあれ、洗濯をしてみることにした。

エコビート洗浄中に洗濯物を見たら…水が少ない!!

操作パネルは見やすい。ボタンは多いが、操作は難しくない

 初めて見た時は、操作パネルのボタンの多さに少々驚いたが、操作自体は難しくない。取扱説明書は全部カラーでとてもわかりやすい。代表的な洗剤の目安量なども記載してあり、とても親切だ。DVDまで付属してあるので、至れり尽くせりといった印象である。

 まず、試したのはお下がりのお下がりで、近々捨てようと思っていたヨレヨレのTシャツに、お醤油、ケチャップ、ソース、カレー、口紅、リキッドファンデーションをしみ込ませての洗濯だ。Tシャツは、3時間ほど天日干しして、カレーに入っていたニンジンなどの固形物もカチカチに固まった状態である。

上の段は右からケチャップ、ソース、お醤油。下の段は右からカレー、リキッドファンデーション、口紅よれよれのTシャツなので、あっという間に染みこんでしまう汚した後に干したので、カレーもカチカチに。指で触ってもカレーは手につかない。これは手強いぞ!

 同時に、何度も洗っているふだん使いのバスタオル、子供の汚れた衣類、靴下を一緒に入れて洗ってみた。濃い色の衣類もあるが、色落ちはしない衣類ばかりなので、一緒にドサッとまとめて入れてしまった。

 基本的な使い方は簡単だ。全自動でおまかせする場合は、コースだけ選んでスタートするだけである。

 内ふたを閉め「入」ボタンを押して電源を入れる。エコビート洗浄にする場合は、エコビート洗浄のランプがついていることを確認しておく。

こちらが洗剤投入口。下側に洗剤と漂白剤、上側に柔軟剤を入れる。今回は洗剤だけ入れた。トイレのように水がグルグル流れ、洗剤を溶かしてくれる

 「スタート/一時停止」ボタンを押すと、洗濯機が洗濯物の量を自動計測し、約30秒後に選択量が表示される。その表示に従って洗剤を計って洗剤を洗剤ケースに入れるのだが、この30秒は待っていると予想外に長く、じれったい。水硬度センサーで水の硬度なども測定しているので、少々時間がかかるようだ。

 今回は漂白剤は入れず、洗剤だけで洗濯することにした。我が家で使用しているのは花王の濃縮液体洗剤「アタックNeo」なので、使用取扱説明書にあった一覧を見ながら洗剤を入れる。操作パネルに洗剤量が表示されるので、その表示に従って照らし合わせればよい。

洗濯が始まるとロックがかかり、鍵マークのランプが点灯する

 洗濯が始まると、自動でフタにロックがかかる。内ぶたもあり、中をうかがい知ることはできない。安全面での配慮からなのだが、ドラム式と違って中が見えないのは非常に残念だ。洗う様子が見えるのは楽しいし、水量、洗濯物の様子が確認できるのは安心できる。BW-D9LVではそれができないので、一時停止して中の様子を確認してみることにした。

 洗濯のランプがついている間に、「スタート/一時停止」ボタンを押せば鍵のロックが解除できる。洗濯がいったん中断され、フタを開けることができた。

 ……中を見て驚愕。水がほとんどないじゃないか!

水が少ない!! 縦型でこんなに水が少なくて大丈夫?と、不安になったほどだ

 縦型洗濯機のイメージとして、たまった水に洗濯物が浸かっていると思っていたのだが、水はほとんどない。ここまで節水をしているとは思わなかったので、改めてビックリしてしまった。

 洗濯物の形状を見ても、一つ一つが丸められたようになっている。凹凸があるビートウィングで洗濯物を浮かせ、たたき洗いしているという説明も納得できる。なお、洗濯中は循環させた水が上からシャワーのように振りかかり、まんべんなく洗濯物に当たっているそうだ。だからこそ、ここまで節水できるのだろう。

 しかし、水がこれだけ少ないのに、本当に汚れは落ちているんだろうか?

予想外の汚れ落ち!!

 さて、さきほど入れたTシャツはどうなっているのだろうか。

 実際に洗い上がったところを見て、またまた驚いてしまった。口紅とファンデーション以外は、かなりキレイに落ちている。真っ白、というわけではないが、よく見なければほとんどわからない。薄いよれよれ木綿のTシャツなどは汚れが染み込みやすいのだが、よく落ちているように思う。

 すり込んだカレーの跡も、うっすらと黄ばんでいる程度だ。漂白剤を一切使わず、これだけ落ちれば十分ではないだろうか。あれだけ少ない水量だったので、洗い上がりに不安を抱いていたのだが、予想外に汚れが良く落ちていた。

食べ物の汚れは落ちてる!! 漂白剤を入れなくても、あんなに水が少なくても、カレー汚れまで落ちていた上の段ケチャップ、ソース、お醤油はほとんどわからないカレーはよく見ると黄ばみがわかる。口紅とファンデーションは若干薄くなった程度

 口紅とファンデーションは、やはり落ちにくいようだ。しかし、漂白剤を使うことなく、少量のお水で食べ物類の汚れが落ちたことは、子供を持つ親にとって非常に嬉しいことだ。

 今回は洗濯だけして外干ししたのだが、洗い上がった生地もふんわりしている。バスタオルなどは、いつももっとゴワゴワした感じなのだが、さわりごこちがよい。また、「ほぐし脱水」で、洗濯物同士がこんがらがることがないので、型崩れが少ないことにも感動してしまった。洗濯機もここまで進化しているなんて、最近の白物家電ってやっぱりスゴイッ!!

 次回では、子供がはいた皮脂・泥汚れがべったりついた靴下など、落ちづらい頑固な汚れに挑戦する。エコビート洗浄のほか、ため洗い、念入り洗いなどでも比較をしてみたい。また、風呂水を使った洗濯についても紹介する予定だ。



その1  / その2 その3



2010年11月1日 00:00