長期レビュー

ブリヂストン「アンジェリーノアシスタDX」その2

~「3人乗りって安全?」の不安を払拭する機能を検証!
by 石井 和美

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



ブリヂストン「アンジェリーノアシスタDX」

 ブリヂストンの3人乗り自転車「アンジェリーノアシスタDX」を、1カ月に渡ってお送りしているこの連載。第1回では、子供を2人乗せても安定した走り出しで、ふらつきが少ないことを確認した。

 さっそく坂などの乗り心地の良さをレポートしたいのだが、その前にぜひとも触れておきたいのが、「3人乗り自転車」ならではの安全機能。家族3人が1台の自転車に乗りこみ走行するというのは、普通に考えればちょっと危険そうに思えるが、しかしアンジェリーノアシスタには、安心して走行できる機能がたくさん用意されている。

 というわけで、2回目となる今回は、アンジェリーノアシスタに搭載されている安全機能に注目し、3人乗り自転車が普通の自転車と何が違うのかを、詳しく紹介したい。


太く頑丈なフレームでフラフラしない

 さて、子供を乗せた状態で走行する最中に起こりそうな事故というと、一番は「転倒」だろう。停車中や速度が遅い状態になると、ハンドルがとられて、不安定になりやすいからだ。

 アンジェリーノアシスタDXは、強い電動アシスト力でスーッと前に出て、発進時にすぐに安定する。このことは第1回にて動画で紹介しているので、見ていただきたい。

 しかし、ふらつきが少ないのは、単に「アシスト機能があるから」という理由だけではない。フレームが安定していることも大きいのだ。

 通常の自転車に子供を乗せた場合、自転車によってはフレームの強度が低いため、くねくねと横ゆれし、ハンドルを取られてしまうこともある。しかし、アンジェリーノアシスタDXが採用しているフレームは高剛性設計で、横ゆれを大きく低減した「軽量オープンワイドタフフレーム」を採用している。これがとても安定しているのだ。フレームは太く、見た目はかなりゴツイ印象だが、素材は軽いアルミ製で、鉄製のフレームより軽くなっている。

安定感のある「軽量オープンワイドタフフレーム」でフラツキも解消太くて重そうなフレームだが、アルミ製なので軽い
ハンドルバーはたわみが少ないしっかりした作りで、こちらも太め。娘を電動自転車の後ろに乗せて運転した夫も「ハンドルがしっかりしていて、ぐらつかないのがいいね」と感心していた

 また、ハンドルバーも一般的な自転車より太めだ。子供の重量に耐えるよう設計されており、チャイルドシートに12kg超えの息子を乗せても、たわみが少ない。

 当たり前のことだが、子供を乗せればそれだけ総重量がアップし、自転車には負荷がかかってしまう。特に、子供を支えるフレームやハンドルバーが弱くては、3人の命を預ける機械としては心許ない。しかしアンジェリーノアシスタは、ふらつきにくい頑強なフレームやハンドルバーを採用しているので、安心して自転車をこぐことができるのだ。


一番怖い子供の乗せ降ろし……も、「テモトデロックII」で安心

 次に不安なのが、子供を乗せる時の“グラグラ感”だ。

 子供はじっとしていないし、さらに2歳児ともなるとそれなりに重いので、前の座席に乗せると、重みでハンドルが動いて自転車が回転してしまうこともある。そのため、最悪の場合は自転車が倒れてしまう恐れがある。本当に怖い!!

テモトデロックIIのレバーは右ハンドルにある。ここで、ロックとロック解除を操作する

 そんな不安を取り除くのが、子供を安心して乗せられる「テモトデロックII」だ。ハンドルの回転を、半固定でロックできるのだ。ロックすることでハンドルが動かなくなるので、安心して子供を乗せることができる。ハンドルを持ちながらロックできるので、両手をハンドルから離さずに済むのもありがたい。

 ただし、ハンドルは完全にロックできるわけではない。駐輪場所が斜面で不安定だったり、荷台に重い荷物を載せている場合には、ハンドルが回ってしまう場合がある。あくまでも、ハンドルを回転しにくくするためのものという点は理解しておきたい。


動画中盤からテモトデロックIIを使用している。簡単にハンドルを固定できるので、安心して子供の乗せ降ろしができる

 子供を乗せたら、もちろん降ろす作業も必要。そのためには、自転車後輪のスタンドを立たせて自転車を自立させる必要があるが、前部座席に12kgの息子、後部座席に17kgもある娘を乗せたままだと、スタンドを立てるのはかなり重くて大変。

簡単にスタンドが立てられる「スーパーラクラクスタンド」は幅が広い! 安定感は抜群だ

 そんな時に、テモトデロックIIと併用するととても便利な機能がある。それが「スーパーラクラクスタンド」だ。

 一般的な自転車では、腰を入れて「ヨイショッ!」と両手で後ろのキャリヤを持ち上げながら引いてスタンドを立てるしかないが、このスーパーラクラクスタンドは、テコの原理を利用しており、軽く踏むだけで立たせることができる。スグレもののスタンドだ。そのようすは以下の動画で確認してほしいが、テモトデロックIIと併用することで、グラつかず、素早く安全に立てることができる。


スーパーラクラクスタンドでスタンドを立てているところ。テコの原理で、子供を乗せた重い自転車でもすぐにスタンドを立てることができる

 こんな便利なスーパーラクラクスタンドだが、正直に言うと、最初はその大きさにちょっと驚いた。一般的な自転車のスタンドと比べて、かなり幅が広い。存在感がハンパではなく、ちょっと大きすぎるんじゃ……という印象だったが、はっきりいって、これなしの3人乗りは考えられない。子供の乗せ下ろしだは毎回面倒だが、このテモトデロックIIとスーパーラクラクスタンドのおかげで、苦痛も半減した気がする。


ママの乙女心まで考えている? ガニ股にならずラクに走行できるワイドフレーム

 これは主婦だけの問題だが、スカートをはいていても、大きくまたがなくていいというのも、便利で安全だ。

 アンジェリーノアシスタDXは、ハンドルバーに挟むように前部座席が設置されており、またフレームがワイドフレームであることから、前部座席とサドルの間隔が普通の自転車よりかなり長い。そのため、長めのスカートでも、上品に乗り降りできる。しかも、とっさのときに、ひっかからずにすぐに降りることができるのも安心だ。

 普通の自転車に前部座席を取り付けると、乗る時にスカートが足がつっかえてしまうので、ガニ股になってしまう。そのため、ちょっとオシャレな服を着て、子供を自転車に乗せて近所へ……というときに、自転車をガニ股でこいでいたら、オカン丸出し! いや、子供を連れている時点でどう見てもオカンなのはわかっているけれど、やはりできる限りは小綺麗なママでいたい。ガニ股はイヤッ!! 男性にはあまり伝わりにくいかもしれないけど、そんなママの乙女心まで考えてくれているのが、アンジェリーノアシスタDXだ。

今まで使用していた電動自転車(三洋のエナクル。写真奥)と比較。手前のアンジェリーノアシスタDXのほうが、フレームは長い足の出し入れがラク! これならスカートをはいていても引っかからない前部座席にも足がぶつからないので、ガニ股にならずラク。こんなにゆとりがある

ペダルやベルまで細かい配慮。かゆいところに手が届く!

 アンジェリーノアシスタは、「えっ、こんなところまで?」という嬉しい機能が他にもたくさんある。

 まずは、ふだんは使わないけれど、とっさのときに鳴らすベル。子供を乗せた状態で、ハンドルから手を離して音を鳴らすのはとても危険だが、アンジェリーノアシスタなら、、ベルがグリップ式のため、グリップを軽く回すだけで、ハンドルから手を離さずに音を出すことができる。とても便利だ。


手元のベルは、ハンドルを手にしたまま鳴らせる。子供を2人乗せた状態でハンドルから手を離すのは危険だが、これなら安全だ

 “あれっ、こんなところまで気配りが!”と感激したのがペダルのサイズだ。私の足サイズは24.5cmなので、小さいペダルではスカッと踏み外すこともある。しかし、写真を見ていただければ分かると思うが、かなり大きい! これだけ大きいペダルならすべりにくく、踏み込みやすい。

 さらに、は視界が良好で運転しやすい点もうれしい。普通の自転車に前部座席を付けると、椅子の位置が高く、子供で視界が遮られてしまうこともあるが、アンジェリーノアシスタDXなら、前部座席の最上部からサドルまでの高低差が55cm以下。前に子供が乗っても、邪魔になることはない。

大きめのペダルだが、淡いブラウンでそれほど目立たない。ペダルにも反射板が付いているのも嬉しい前に座っている子供の位置が低いので、視界が広く、前が見やすい

 というわけで、アンジェリーノアシスタDXは、2人乗り(または3人乗り)を前提に、細かいところまで安全面を考慮している電動自転車だ。勇気を出して購入した2台目の電動自転車だが、「かゆいところまで手が届いている」という印象だ。

 機能に関しては今回はこれまで。次回はいよいよ恐怖の坂道に挑戦! 子供2人あわせて約30kg、総重量100kgを軽く超える重い自転車で急な坂道を上れるの? 実際に検証します!



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2010年8月16日 00:00