長期レビュー

東芝「過熱水蒸気オーブンレンジ 石窯ドーム ER-GD500」 その2

~温めから焼き料理まで、基本メニューにトライ
by すずまり

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



過熱水蒸気オーブンレンジ 石窯ドーム ER-GD500

 前回は、製品の概要、操作の仕方を中心にご紹介してきたが、今回は実際に調理していこう。

 今回はあたための他に、焼き野菜、塩鮭、トーストなどの簡単な調理を試してみた。すると、石窯ドームの個性がチラリと見えてきた! 1回目はこちらから。

天ぷらを「カラッとあたため」てみた

 石窯ドームにも揚げ物専用の温め機能が用意されているので、いつものスーパーで野菜のかき揚げ、さつまいもの天ぷら、なすの天ぷら、ちくわの天ぷらを購入して温め直してみた。気になる機能は自動調理メニューの27番「カラッとあたため」である。

 ダイヤルを回して「27」にセット。温めを開始してみると、石窯オーブンと過熱水蒸気の両方が使われる「ハイブリッド石窯」と表示された。所用時間は11分である。

 ヘルシオでは強い過熱水蒸気のせいか凝縮したような硬さがあり、ビストロではちょっと火力が強めな感じがしたが、「石窯ドーム」はソフトな仕上がり。焦げすぎ感がなくていい具合である。これまではかき揚げを一緒にすると焦げてバリバリになる傾向にあったが、「石窯ドーム」は同時に温めても焦げすぎることなく、サクサクに仕上がった。3製品の中では一番自然かもしれない。ただし油は思ったほど落ちていなかった。

角皿に網をセットし、上に天ぷらを並べる「サクッとあたため」完了後の天ぷら。若干きつね色になる程度だが、かき揚げだけは部分的にやや焦げ気味かき揚げは、焦げ目がついたとはいえ、“焦げた”というほどでもない

 仕上がりに大きな不満はないものの、なぜ「カラッとあたため」がメニュー内のあたためグループではなく、「オーブン・過熱水蒸気」に属しているのかが気になった。「あたため/スタート兼用キー」で選択できないと、機能として存在しないと思ってしまう人はいないだろうか?

裏返してみると、茄子だけ裏側がややしっとりしていた油はあまり落ちなかった

メニュー選択と調理後の天ぷらの様子。メニュー選択中、右隅に出るのがメニュー番号で、左側の大きな数字はレシピ集内のページ番号である。慣れないうちはこれを見間違えてかなり混乱した


肉まんとあんまんを温めてみる

 石窯ドームには肉まんやあんまんを温める専用メニューはないが、取扱説明書によれば、「あたため/スタート兼用キー」から選ぶ「3 スチーム」で温められるという。そこで肉まん1個、あんまん1個を温めてみた。

1個80g程度の肉まんとあんまんを購入左が肉まん、右があんまん「あたため/スタート兼用キー」から選ぶ「3 スチーム」の場合、電子レンジも使われる

 1分足らずで温まったが、皮のしっとり感には物足りなさがあり、残念ながらあまりスチームの恩恵は感じられない仕上がりだった。あんまんのあんがかなり熱かったことからも、スチームというより電子レンジが優勢な感じである。過去に何度も前歯の裏を火傷しているため、電子レンジによる温めは苦手なのだ。温めを開始すると、仕上がりを「強」「弱」どちらも3段階ずつ変えられるので、弱くしてみるという手もあるが……

 石窯ドームでは、「あたため/スタート兼用キー」で選ぶスチームの他に、「手動調理キー」の「スチーム」がある。そこで純粋にスチームのみで15分間調理してみたところ、時間はかかったがかなり満足のいく仕上がりとなった。具も熱すぎず食べやすい。手早く食べたいときは「あたため/スタート兼用キー」から選ぶ「3 スチーム」、じっくりしっとりさせたいときは「手動調理キー」の「スチーム」と使い分けるとよさそうだ。同じことは冷凍シュウマイにも言えるので、覚えておくといいかもしれない。

「手動調理キー」の「スチーム」で温めた肉まんとあんまん「スチーム」15分で排出された水の量は70cc程度だった

 ちなみに、肉まんとあんまんに限って言えば、皮の食感も含めて一番仕上がりがよかったのはヘルシオだ。

「スチーム」で15分間調理した肉まんとあんまん

焦げ目は少ないが、しっかり火が通っておいしい「焼き野菜」

 次は「焼き野菜」を試してみよう。さつまいも、アスパラガス、にんじん、カボチャ、ピーマンにオリーブオイルをまぶして並べ、自動メニューの「20 焼き野菜」を選択した。表示よれば調理は石窯ドームで行なわれるらしい。

ビニール袋に6~7mm程度の厚みにカットした野菜を入れ、オリーブオイルを満遍なくまぶす角皿に野菜を並べる角皿は下段にセット

 所要時間は14分弱程度。できあがった焼き野菜はソフトな印象だ。もう少し焦げ目がついていてもよかったかも、とも思ったが、ピーマンがクシャクシャにならなかったのは個人的にポイントが高い。調理中に「メニュー・設定キー」を回すと調理時間を追加できるので、慣れてきたら好みの時間に変更してもいいだろう。

自動調理メニューの「20 焼き野菜」を選択完成した焼き野菜。焦げ目は多くなかった焦げ目は少ないが、十分火が通っていておいしかったため、気がついたら全部食べきっていた

 想像したより焦げ目が少ないので半生ではないかと疑ったが、実は全部スッと楊枝が通るほどしっかり火が通っていたので驚いた。しかも食べてみると、野菜の甘みを感じてなんだかおいしいのだ。もしかしてこれが石窯状の構造による効果なのだろうか。思い出してみると、ビストロの焼き野菜の所要時間は30分であった。石窯ドームの「焼き野菜」は、“早くて”おいしいと言えるだろう。

簡単に爪楊枝が通る野菜たち


塩鮭を「グリル」で焼く

 厚みのある塩鮭を2枚焼いてみることにした。

 角皿に網をセットし、網に油を塗ったら塩鮭を乗せる。石窯ドームで塩鮭を焼く場合は、自動調理メニューは用意されていないので、「手動調理メニュー」の「グリル」を用いるのだ。所要時間は15分だが、残り時間2~7分のタイミングで、1度裏返さねばならない。お知らせ機能などはないので、キッチンタイマーなどを用いてタイミングを計る必要がある。

魚の切り身は、角皿に焼き網をセットして焼く「オーブン・過熱水蒸気」を7回押して「グリル」を呼び出し、角皿は上段にセットする10分焼いた段階の塩鮭

 今回は焼け具合を見ながら、残り5分のタイミングで塩鮭を裏返してみた。すると、中はしっとりと柔らかい塩鮭が完成した。なかなかおいしい。ただ、両面ともさらに2分ずつグリルして、もう少し焦げ目を付けてもよかったかもしれない。

裏返して5分焼いたら完成中はしっとりとした仕上がり角皿には、塩鮭から落ちたと思われる塩分が固まっていた

 仕上がりはいいのだが、これまで任せっきりの焼き魚に慣れていたせいか、途中で裏返さなくてはいけないのを面倒に感じた。また当初「グリル」がどこにあるのかわからず、操作に迷った。実は「オーブン・過熱水蒸気」を7回押すと「グリル」になるのだが、そんな深いところにあるとは想像していなかったのだ。むしろ「手動調理メニュー」のキーとして、独立して存在すると勝手に思い込んでいたところもある。できれば自動調理メニューに「焼き魚」も加えて欲しいと感じた。


時間はかかるが、仕上がりはおいしい「トースト」

 ヘルシオのトーストは、予熱、裏返しともに不要だったが、時間がかかり、やや凝縮感のある仕上がりだった。ビストロは予熱は不要で仕上がりはまずまずだったが、途中で裏返す必要があった。石窯ドームのトーストはどうかといえば、裏返し作業はないものの、予熱が必要と判明。まさに三者三様である。

 ヘルシオ、ビストロ同様に、パナソニックのホームベーカリー「SD-BM102」で焼いたパンをスライスし、2枚は石窯ドームで焼き、比較対象として1枚を同社のトースター「NB-G102」で焼いてみた。

 トースト専用メニューはないので、まずは角皿を下段に入れたら「手動調理キー」の「オーブン・過熱水蒸気」で予熱ありの石窯オーブンを選択し、250℃で7分にセット、予熱を開始する。予熱が終了したらパンを並べ、再び「あたため/スタート兼用キー」を押して調理開始という流れだ。

比較用の自家製パン。2枚は石窯ドームで、1枚はオーブントースターで焼く「オーブン・過熱水蒸気」で予熱ありの石窯ドームを選び、7分にセット完成した石窯ドームのトースト。なかなかいい色に焼けている

 予熱が必要な大きなオーブンでトーストしたのは、実は今回が初めてだった。正直言うと、作る前の印象はあまり芳しくなく、トーストも大したことないだろうと考えていた。しかし、できあがったトーストはとてもおいしそうだ。両面の焦げ目もちょうど良く、表面には軽いサクサク感があり、中はふんわりした仕上がりである。トースターにはやや及ばないものの、ヘルシオ、ビストロと比較すると、一番自然な食感でおいしい。

石窯ドームのトーストの裏側。満遍なくというわけにはいかないが、焦げ目はついている石窯ドーム(左)とオーブントースター(右)のトーストを比較。どちらかは言われなければ分からないのではないだろうか裏側の比較。オーブントースターのトースト(右)の裏には編み目状の焦げ目

 問題があるとすれば、やはり予熱を含めた調理時間。予熱から仕上がりまでの所要時間が約14分だったのだ。これは忙しい朝にはチョット厳しい。おいしいのに残念!

石窯ドーム(左)とオーブントースター(右)のトーストを動画で比較。叩いてみても、ほとんど変わらない音がする


本当に「65℃」になるのか? とやはり気になった

 石窯ドームで飲み物を温める際は、「タッチメニューキー」の「のみもの」を使用する。カップを庫内中央に置いたら、「のみもの」を1回押すとメニュー番号が「4」となり、「65℃」と表示されるのだ(お酒の場合は55℃)。その状態で「あたため/スタート兼用キー」を押せば温め開始となる。飲み物は熱すぎず、ちょうど良い仕上がり。しかし「本当に65℃なの?」という疑問が沸いてきた。そこで水を温めて温度をチェックしてみることにした。

温度を見せられると確認したくなってしまう温める前は18℃温められた水。わずかに気泡ができている

 ビストロのときと同じグラスに水道水を注ぎ、温め開始。温める前は18℃だったが、加熱後、底付近は57℃、グラスの中ほどの深さで見事65℃、水面付近が68℃という結果になった。確かに平均すれば概ね65℃になっている。すばらしい。

底付近は57℃水面付近は68℃加熱中に仕上がりの強弱を操作するのはちょっと焦る

 と、ここで新たに気になったのは、仕上がりの調整方法と表示である。気持ちとしては先に仕上がりも設定してから温めを開始したいところだが、「あたため/スタート兼用キー」を押すまで仕上がりを変更できないのだ。しかも65℃という温度を挟んで、強め3段階、弱め3段階を、ダイヤルを回しながら15秒以内に決定しなくてはならない。「65℃に対する強め3や弱め2って、つまりどれくらいだろう?」と焦りつつも悩んでしまうのである。

 先に実験した通り、65℃といっても場所によって違いがあり、ちょうどということもないだろう。ゆえに具体的な温度を細かく指定できないという事情があるのではと察する。基準となる65℃がどれくらいかを体感した上で、個人の好みで調整すればいいのだが、悩める利用者のためにも、調整は先に済ませてから温めを開始したいと思うのは筆者だけではないだろう。

 今回は「焼き野菜」の仕上がりに石窯ドームの能力を見た気がする。最終回となる次回は、そんなパワーをチェックすべく、鶏のから揚げ、ハンバーグ、とんかつ、パン作りなどにチャレンジしたいと思う。



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2010年3月19日 00:00