イベントレポート IFA 2015
ボッシュ、外出先で冷蔵庫の中身が分かるスマート家電など
(2015/9/8 00:00)
ドイツの大手家電メーカーであるBOSCH(ボッシュ)は、2008年からIFAにホームアプライアンスが加わってから毎年大規模なブースを出展している常連ブランドだ。ヨーロッパでの知名度、人気はともにトップクラス。
日本では自動車向け部品や電動工具のメーカーという印象があるかもしれないが、本来はホームアプライアンスのカテゴリーでもバラエティ豊かな製品を開発、世界中に展開している。もしIFAの展示会場に足を運ぶことがあればブランドイメージはがらりと変わるはずだ。
今年のIFAでは、ホームアプライアンスのメジャーブランドが、いよいよ本格的にインターネット接続ができるスマート家電に力を入れてきた。ボッシュもその例外ではなく、むしろIFAでは2013年ごろからプロトタイプ技術によるショーケースとして、インターネットにつないでアプリで操作する家電の試作機をいち早く紹介していた。
同社はいよいよ昨年に、コンシューマー向けのスマート家電を商品としてテイクオフさせ、今年に入ってから対応製品を拡充した。例えるなら、飛行機が順調に安定飛行に入って、シートベルトの着用サインが消えた頃と言った所だろうか。
IFAのプレイベント期間に開催したプレスカンファレンスでも、モバイルアプリとネットワーク対応家電の連携による独自の「Home Connect」サービスにスポットが当てられた。
「Home Connect」で6つの家電をフルコントロール
Home Connectは2014年に発売したWi-Fiでインターネットに接続できるスマート家電「Series 8」のオーブン、食洗機に対応するモバイルアプリとしてローンチされた。その後ユーザーから支持を得て、欧州でも数々のアワードを実現し成功を収めたことから、今年はさらに冷蔵庫/洗濯機/乾燥機/コーヒーマシーンにも対応の輪を拡充。いまでは全部で6つの商品カテゴリーに広がった。
先行するかたちでHome Connectアプリに対応した6つの商品カテゴリーを俯瞰すると、ボッシュがスマート家電の主戦場を「キッチン」に定めて、市場をリードするポジションに立とうとしている戦略が見えてくる。
とはいえ、単に家電製品がインターネットにつながって、あまり役にも立たなそうな機能がスマホやタブレットからコントロールできるという程度の代物では、製品を作る側の独りよがりであり、ユーザーから本当の信頼と支持は勝ち取れない。
ボッシュのHome Connectアプリを中心としたスマート家電は、ホームネットワークを経由で接続されている機器のフルコントロールができ、外出先からでもモバイルデータ通信を介してリモート操作ができる点が大きな強み」と語るのは、ボッシュのHome ConnectサービスのローンチマネージャーであるThomas Holfelder氏だ。
Home Connectアプリは、Android/iOSをプラットフォームとするスマホ・タブレットで利用できるモバイルアプリだ。先に挙げた6カテゴリーから、ユーザーが購入してホームネットワークにつないでいる製品がホーム画面上に表れ、パネルをタップで切り替えればそれぞれの機器がコントロールできるようになる。
ユーザーインターフェースは製品ごとの機能が直感的に操作できるアイコン表示が採用されていたり、各メニューへのスムーズな遷移を実現できるよう動線も整然とレイアウトされている。レスポンスも機敏で心地良く操作できそうだ。
ただ「フルコントロール」を実現していることを特徴に謳っているだけのことはあって、一つの製品で設定できる項目や機能がとても多く、はっきり言ってスマホやタブレットがある程度使い慣れていても、Home Connectそのものに馴染むのには時間がかかりそうに感じられた。
筆者が感じた不安を打ち消すように、Holfelder氏は「例えば洗濯機は、服の種類や洗い方など複数のプログラムの中から、普段よく使うものだけをピックアップしてユーザーごとにカスタマイズした設定値を残すことができるので、フルコントロールができるよう開放はしているけれど、実際に使う際には複雑な操作は不要」であることを強調する。
キッチンに焦点を当てたスマート家電
Home Connect対応の新製品として、今年のIFAでボッシュが特に推している製品が冷蔵庫「Series 6」のラインナップだ。本体のドア側、冷蔵室側にそれぞれ1台ずつのカメラが配置されており、扉を開閉するたびにカメラが冷蔵庫の"中身"を撮影。写真データを、登録しているユーザーのスマホやタブレットに送信してくれる。
ユーザーは手元に届く画像を外出先でチェックしながら、いま家にどんな食材があるのかが把握できて、今日の献立のために足りないものだけを買い足すといったことができるようになるというわけだ。
コーヒーマシーンには世界各国のコーヒーレシピを収録。アプリから「オーストラリアン・フラットホワイト」やスペインの「カフェ・コルタド」など、飲みたいレシピを選んで必要な豆や砂糖、ミルクなどをセットしておけば、あとはマシーンが自動で選んだレシピ通りに美味しいコーヒーをいれてくれる。
レシピ通りにつくってみたコーヒーのテイストが微妙に口に合わないようであれば、砂糖をチョイ足ししたり、豆を浅めに煎ったりなどの微調節をして、「私好みのカフェ・コルタド」といった具合にカスタマイズした設定値も残しておくことができる。
本体のボタンやパネルで行なうには複雑すぎる操作が、スマホやタブレットの視認性・操作性の良い画面から手軽にできてしまうところに、スマート家電がもたらしてくれる恩恵を強く感じてしまう。
製品トラブルをインターネット経由の遠隔操作で解決
ボッシュのHome Connectアプリの他社にない強みについて、Holfelder氏はさらにこんな説明を加える。「Home Connectのプラットフォームはオープンに設計されているので、例えばシーメンス社の一部スマートアプライアンス製品も接続してコントロールができます。セキュリティについては独自技術によってしっかりカバーされているのでハッキング等の心配はありません。ユーザーが機器の操作に困った時や、故障などのトラブルが発生した場合にはネットワーク対応家電であることの強みを活かして、サービスセンターに連絡をいただければ、サポートスタッフが製品をインターネット経由で遠隔操作しながら問題を解決してくれるリモート診断も利用いただけます」
太陽光発電と連携したスマート家電
もう一つボッシュのスマート家電がユニークなところは、スマートグリッドによるエネルギーマネージメント機能を実装していることだ。ドイツのSMA Solar Technology社との連携により、ドイツ国内で普及が進む太陽光発電による蓄電池システムと連携して、各家庭の電力消費を抑えながらスマート家電を効率よく活用できるシステムがつくられている。
例えばボッシュのHome Connect対応洗濯機に「今日は洗濯を18時までに済ませたい」とプログラムしておけば、18時までの間で太陽光により十分充電ができた頃を見計らって、自動で洗濯を始めて18時までに完了してくれるという機能が既に実現されている。今回ボッシュがIFAのHome Connectアプリの特設展示で取り分け強くアピールしている先進テクノロジーのひとつだ。
現在Home Connectは、ボッシュがホームアプライアンス製品を展開している欧州先進国や中国で利用ができる。Holfelder氏は今後も提供できる地域をさらに拡大していきたいと意気込みを語っていた。1~2年ほど前にはまだ"近い未来の技術"だったスマートホームやスマートキッチンが、いまヨーロッパで急速に伸び盛りの時期を迎えつつある。