日産、電気自動車を蓄電池として使用するスマートハウスなど

 映像・情報・通信機器の総合展示会「CEATEC JAPAN(シーテックジャパン) 2011」が、千葉県千葉市の幕張メッセで開幕した。開催日程は10月4日~10月8日の5日間。一般公開日は10月5日~8日で、入場料は1,000円 だが、事前登録を行なうことで無料となる。最終日の土曜日は無料。

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太陽光発電などの“創エネ”提案が目立っていた

 3月11日の東日本大震災以来、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーや、より節電・省エネ性を高めた家電製品の話題が目立つ。

 今年のCEATECはその流れを受けて、“限りあるエネルギーをいかに有効に活用するか”に重きを置いた展示が多かった。特に国内大手電気メーカーのブースでは、太陽光発電パネルや蓄電池を設置した「スマートハウス」の構想が目立っていた。

 スマートハウスとは、家の電子機器をネットワークに接続して一括管理するシステムを採用した住宅のこと。例えば、家庭の屋根に太陽光発電パネルを取り付けて発電し、日中に発電した電気を蓄電池に貯め、余剰分は夜間の電力消費や売電に回せるというシステムだ。さらに、スマートフォンやタブレット端末で、各家電の消費電力量などを「見える化」して、より無駄な電力消費を抑える。


日産、電気自動車を蓄電池代わりに使用する“移動式高床式住居”

 特に賑わっていたのが日産自動車のブースだ。ここでは、電気自動車の駆動用リチウムイオンバッテリーを蓄電池として使用する未来型スマートハウス「NSH-2012」が展示されていた。

  NSH-2012は、太陽光発電と燃料電池のダブル発電機能を搭載した住宅。電気自動車「リーフ」の駆動用リチウムイオンバッテリーを住宅の電力源とする システム「LEAF to Home」と組み合わせて使用することで、天候や災害に左右されず、安定して自家発電できるという。なお、リーフの蓄電能力は24kWhで、一般家庭の約 2日分の日常使用電力を賄えるとしている。

 住宅の外観は、近未来的な多面体で、1階部分はリーフを駐車できるスペースになっている。同社では、日本古来の“高床式住居”のデザインを採用したとしている。

 住居には可動式のタイヤが付いており、いざとなったら車と共に移動できるようなイメージで設計されているという。

未来型スマートハウス「NSH-2012」と、日産の電気自動車「リーフ」部屋の下に駐車した電気自動車から給電し、部屋の家電や照明の電力をまかなっているパワーコントロールシステム
家にも車輪が付属し、移動できるらしい。記者は『ハウルの動く城』や『天空の城ラピュタ』を連想したNSH-2012の室内に設置するルータータブレット端末を家電にかざすだけで識別し、電力使用量などの情報を読み込む

 なお、NSH-2012の室内では、NTT ドコモの「ケータイホームシステム」技術が紹介されていた。現行のケータイホームシステムでは、携帯電話で外出先から家電を遠隔制御したり、鍵が閉まっているか確認したり、インターホンと連携させたりできる。

 ケータイホームシステムでは、今後家庭内の電力を見える化や、蓄電池の活用など、ネットワークサービス機能を強化していく予定だという。

シャープ、個別の家電機器の消費電力を把握できる「見える化」システム

 シャープの場合、スマートハウスを「エコハウス」と名づけ、“節電と快適な暮らしの両立”をコンセプトにしている。

 エコハウスの1つ目の特徴は、家庭内における個別の家電機器の消費電力をきめ細かく把握できる点だ。個別に情報を把握するために、各家電のコンセントに電力量を測るタップを接続する。タップで測定した情報は、無線通信で中継器を経由し、タブレット端末に表示される。他社の場合、消費電力を把握するモジュールが家電に内蔵されていたり、自分では接続することができない場合が多いなか、コンセントに差し込むだけで簡単に設置できるのは便利だ。

コンセントに取り付けて個別に家電の消費電力量などをはかるタップタップで計測した数値は、無線通信によって「見える化」される
 
通常時は蓄電池に電気を貯めておく停電時には、自立運転出力に自動的に切り替える太陽光で発電した電力をそのまま電気自動車に給電するシステムも注目を集めていた
  会場ではほかにも、太陽光パネルで発電した電力をそのまま電気自動車に給電するシステムなども展示されていた。

東芝、地域ぐるみでエネルギーを制御するスマートコミュニティ構想

 東芝が提案していたのは、個々の家庭のスマートハウス化だけでなく、地域や電力会社と連携して、エネルギーの需要情報などを集約管理する環境配慮形都市「スマートコミュニティ」を創ろうというアイデアだ。

 地域一体となってエネルギーを管理することで、地域内の電力需給バランスを保つという。たとえば、1日のうち、各家庭での電力消費が多くなるピーク時には、各家庭に設置された蓄電池から給電する。電力需要の低い時夜間に蓄電しておくことで、ピークカットの効果が期待できる。

 同社の家庭用蓄電池システムは、400Wの機器を約3時間連続して使用できる蓄電池と、突然停電しても情報機器を継続して使用できる「無瞬断パワーユニット」を採用している。


地域一帯となってエネルギーを管理する、スマートコミュニティを提案400Wの機器を約3時間連続して使用できる蓄電池無瞬断パワーユニット。突然停電しても、情報機器を継続して使用できる

 同社ではこのほか、太陽電池パネルで発電した電気の変換効率ロスを減らすために、太陽光発電パネルからの直流の電気で動くDC家電の開発も進めているという。


 こうして見てみると、ひとえにスマートハウスといっても、各社ごとに、停電時などの非常時に太陽光発電システムの運転を自動で停止するのか、蓄電池からの電力供給に自動的に切り換わるのか、といった点は異なる。また、消費電力の「見える化」と言っても、部屋単位で表示するか、個々の家電機器ごとに表示するのか、といった違いもある。

 いずれにせよ、どのブースでも共通していたのは、実際の停電体験や、節電対策を踏まえて具体的な提案が多かった点だ。今後、スマートハウスがどのように普及していくのか、注視していきたい。






(小林 樹)

2011年10月5日 00:00