【特別企画】

エアコン夏商戦のポイントを聞く[三菱電機編]

~進化した“ムーブアイ”で快適な省エネを実現
by 大河原 克行

 7月も半ばを過ぎ、エアコンの本格的なシーズンがスタートした。そこで、この夏商戦を迎えるに当たり、今シーズンのトレンドと2009年度のポイントについて、エアコンメーカーに聞いた。



“他社の追随を許さない”センシング技術――ムーブアイFit


三菱電機のエアコンの最上位モデル「霧ヶ峰 ZWシリーズ」
 三菱電機が2009年夏商戦で最大のポイントとするのが、なんといっても、「ムーブアイ」によるセンサー機能の進化だ。

 「2000年から輻射センサーとして、いち早く取り組んできた当社のセンサー技術は、いまや他社の追随を許さないものとなっている」と胸を張るのは、三菱電機営業部ルームエアコン販売企画グループマネージャーの堀越嘉憲氏。2009年モデルでは、最上位機に、空間認識3Dエンジンを新たに搭載。8つのセンサーが、それぞれ94分割して管理。752エリアを対象にセンシングする「ムーブアイFit」として、さらなる進化を果たしているのが特徴だ。

三菱電機 営業部 ルームエアコン販売企画グループマネージャー 堀越嘉憲氏
 「センシング技術だけでなく、これを制御するノウハウの蓄積が大きな特徴。1年や、2年で他社が追随できるものではない」と自信を見せる。

 センサーとしてのハードウェアの優位性だけでなく、いかに快適な空間を実現するかといった、細かな制御を司るソフトウェア部分が、ムーブアイを実現する重要な構成要素となっているのだ。

 進化したムーブアイFitでは、「人の居場所」、「人の状態」、「床の温度」に加えて、「壁からの距離」という空間についても、新たにセンシングしているのが特徴だ。

エアコンの中心部にあるセンサー「ムーブアイFit」ムーブアイの内部には、縦に8つのセンサーが並んでいる(前年度モデルの発表資料より)最新モデルでは、床の温度、人の居場所、人の動きに加え、人が壁からどれくらい離れていいるか、という「空間認識」能力が加わった

 「人の居場所」では、人を中心に気流を届けるだけでなく、人が居なくなったことを感知すると、不在省エネ運転へと自動的に移行。一方、「人の状態」では、人が動いているときには、それにあわせた室温で風を送り、また、昼寝や読書中などは冷やしすぎないように自動的に制御する。ここでは、人の動きを捉えて、ホコリの量を予測し、それに応じて自動的にフィルターなどの掃除を行なうといった活用もできる。また、「床の温度」では、床の温度を計測し、足元が冷えすぎないように制御。暖房時には、ドアを開けた際に外から入ってくる冷たい風を検知して、足元を暖かくするためにスピード暖房を自動的に開始するといった使い方にもつながっている。

 そして、「壁からの距離」では、カーテンを開けた状態の窓に近い人には、窓との距離を測りながら、しっかりとした空調を届け、窓から遠い人には涼しい空気を届けるといった形に制御。また、窓のカーテンを閉めると、温度変化を感知して、自動的に省エネ運転に切り替わるといった使い方ができる。

 「人の位置、活動量、足元の温度などを測り、いまどういった状況にあるのか、それをもとに頭、体、足のどこに風を吹き付けたらいいのかといったことをコントロールすることができる」。

ムーブアイFitでは、壁から人がどれだけ離れているかを計測する「空間認識3Dエンジン」を搭載。“窓が冷たい”など、空間の温度の変化がキャッチできるようになった部屋の窓のカーテンを開けている時は、人間と窓の2カ所の熱を検知。強力な冷気を送るここでカーテンが閉じると、窓からの熱がなくなったのを判別し、人間の熱だけを検知。セーブ運転をする

 直接顔に気流が当たるのを防ぎ、人を包み込むように空調する「保湿風よけ」機能の一方で、帰宅時にすぐに涼みたいときに人に風当てる「快速風あて」も、センサーと、それを細かく制御する技術によって実現しているものだ。

 さらに、これらをより効果的に実現するために、ビッグWフラップにより、気流を自在にコントロール。部屋に1人しかいない場合にはそこだけを空調し、2人いる場合には人の居場所に応じてエリアを絞り込み、2か所同時吹き分けといった、三菱独自の制御を行なう。それぞれの人の要求にあわせた空調が、一部屋のなかで別々に、しかも同時にできるというわけだ。

 また、最大170度のワイド気流、最大15mのロング気流も、人のいるエリアに応じて隅々まで空調できるという仕掛けには重要な役割を担っている。

 一方で、必要なところにだけ、必要な空調を実現するというムーブアイ機能は、快適な室内空間を作り出すとともに、同時に「エコ」にも効果を発揮する。

 同社の調べでは、年間消費電力は、ムーブアイ機能オフの状態に比べて、約40%の削減が可能だ。暖房時には最大65%の省エネ効果をもたらすという。

 「暖房商戦において購入していただいたユーザーの使用後の評価によると、『ムーブアイの効果』について、84.9%の購入者から満足したという評価をもらっている」という。


ビッグWフラップで風を吹き分けることで、離れた2カ所を同時に空調もできる(前年度モデルの発表資料より)風除け運転や風当て運転も可能。風除け運転なら、肌の水分量を保つ効果もある
床温度、人の居場所、人の動きを検知するだけでも、暖房時で60%の省エネになるが……空間認識もできることで、最大で65%の省エネ効果があるという(暖房時)

 電気代の「見える化」で、電気代の削減効果も――ECOモニター


前面パネルには、消費電力や省エネ具合を示す表示パネルが備えられている
 もう1つ、三菱電機が力を入れているのが、モニター表示である。

 最上位機のZWシリーズ、上位モデルのGWシリーズでは、本体に各種情報を表示するモニターを搭載。ZWシリーズでは、人がいる場所を探し、現在空調している場所を示す「エリアモニター」、ムーブアイFitによる省エネ運転の状況を葉っぱの枚数で表示する「ECOモニター」、設定温度や体感温度、電気代やCO2排出量などを表示する「セレクトモニター」、エアコン本体やフィルターの自動掃除状況や脱臭・空気清浄時にマークを表示する「クリーンモニター」の4つを用意。現在の状況を、見える化できるのが特徴だ。

 「昨年の製品から見える化には力を注ぎ、テレビCMなどでもその点を訴求した。電気代が見えるようになったことで、省エネに対する意識が高まり、それだけで電気代が10~15%程度削減できたという実例のほか、親子で省エネに対する会話が増えたといった声も出ている」という。

 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構の実証実験によると、省エネに関する表示を行なうことで、使用者の意識が高まり、約10~15%の省エネ効果が得られるとしており、霧ヶ峰シリーズに搭載したECOモニターでも同様の効果が出ているというわけだ。

消費電力の“見える化”により、10~15%の省エネ効果があるという本体の基本的な省エネ性能の高さに加え、センサー技術による省エネ、表示による省エネという、新しいエコ生活を提案する


 「ECO大学」で店員に対する説明を強化。“三菱=霧ヶ峰=ムーブアイ”の定着を目指す


 このほか同社では、自動的にフィルター掃除を行なう「フィルターお掃除メカ」、オゾンシャワーでカビ菌を除去する「オゾンシャワー洗浄」、綿ぼこりや砂塵、黄砂などの親水性汚れと、カーボン、油煙、タバコなどの疎水性汚れの双方を寄せ付けない、世界初となる親疎水ハイブリッドコーティングを施し た「クリアフッ素コート熱交換器」の採用などの特徴を持つ。

 「冷房時期はエアコンの使用時間が長くなりがちなため、汚れが気になるもの。これらの機能によって、面倒な掃除をすることなく、清潔な環境が保てる」という。

 一方で、全モデルの本体サイズを横幅798mmとコンパクト化したことで、11年前の標準サイズとなっていた幅800mm以下のモデルからの買い換えにも適したサイズとなっている。

 三菱電機のエアコンを勧めれば、設置段階になってこれまでエアコンを設置してあった場所に収まらないといった問題が発生しないで済む、という認識が量販店の間に広がっている。これも、当社製品の売れ行きを拡大する要素の1つとなっている点も見逃せないだろう。

親水性のあるホコリ、疎水性の油も寄せ付けない「クリアフッ素コート熱交換器」を採用本体の幅は、買換え需要に考慮した798mmのコンパクトサイズ

 堀越氏は、「ムーブアイFitがこだわっているのは、実使用状況での快適性。そして、実使用条件での省エネ。この点を店頭展示も訴えていきたい」とする。

店頭では、ワットメーターを使って実際にどの程度省エネできるかを実演している
 店頭でも、それを体験できるように、ワットメーターをPOPに活用。実際にどの程度の省エネ効果が出るのかを確認できるようにした。

 「ワットメーターの展示は暖房商戦においては、2,500~3,000店舗だったが、冷房商戦ではこれを約4,000店舗にまで拡大している」という。

 また、量販店や家電店、住設販売店などの店員を対象に、2008年10月から「ECO大学」をスタート。霧ヶ峰シリーズで搭載しているムーブアイの省エネのメリット、具体的な利用シーンを想定した提案などのほか、ECO大学の名前からも明らかなように、地球規模での環境問題や、そのなかで家電が果たすエコ、ムーブアイが果たすエコなどについても説明する。これまでに5,000人強の販売店店員が受講しているという。

「三菱といえば、霧ヶ峰。霧ヶ峰といえば、ムーブアイ」というイメージの定着を狙うという堀越氏
 同社では、「三菱といえば、霧ヶ峰。霧ヶ峰といえば、ムーブアイというイメージをますます定着させていきたい」とする。

 市場においては、このイメージはかなり浸透しているとはいえる。だが、あえて同社がこう語るのは、ムーブアイが進化したことによって、新たに4つのセンサー機能を搭載していること、そして、それによってもたらされる効果や強みを、さらに定着させることを狙っているからだ。

 ムーブアイの進化の意味が、市場により浸透すれば、三菱のエアコン市場における存在感はさらに高まることになるだろう。


2009年7月24日 00:00