【特別企画】

編集部員が選ぶ、自分が使いたい手帳 2010年版

by 編集部


 2009年もあと1カ月で終わるが、この時期に混雑するのが「手帳売り場」。陳列された手帳を一個一個手に取り、品定めをする人で賑わっている。何しろこの先1年間付き合うものなので、そう簡単には決められない。

 そこで家電Watchでは、“2010年の自分が使いたい手帳”として、編集部員がそれぞれ好みの手帳をピックアップしてみた。売り場で“どれにしようか……”と悩む前に、この記事を読んで“こんなのが欲しい!”とある程度のアテを付けてみてはいかがだろうか。

ほぼ日刊イトイ新聞 「ほぼ日手帳 Cousin」 by 伊藤 大地

筑摩書房 「文庫手帳2010」 by 正藤 慶一

MOLESKINE 「カラーダイアリーボックス」 by 阿部 夏子

 



ノート兼手帳の理想型「ほぼ日手帳 Cousin」


ほぼ日手帳 Cousin
 2009年は、ほぼ日手帳1冊でなんとかやりくりできた。さすが、国民的人気を誇る手帳だけあって、1日1ページの余裕のあるスペース、自由度の高いレイアウト、裏映りしにくく、かつ軽い紙、カバーの幅広い選択肢――と、長年ユーザーのフィードバックをもとに培われた手帳であることは十分に理解できた。

 ただし、不満がなかったかといえば、そうではない。私の場合、スケジュール管理はデジタルとの親和性を考えて、iPhoneで処理している。手帳が受け持つ役割は、プロジェクト管理やアイディアのメモ、といったところになるのだが、そういった使い方をする上で邪魔な存在があった。ページ下の「名言」だ。

 この名言は、人気Webサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」のコンテンツから選りすぐられたもの。たしかに面白い。面白いのだが、アイディア帳としては、邪魔なのだ。ハッ、と思いついて開いて何かを書こうとした瞬間、名言に目がいきニヤリとし、またハッ、なにを考えていたんだっけ……となりがち。こうしたことが何度かあってから、ほぼ日手帳をアイディアメモとして使うことはあきらめた。欲しいのは、ほぼ日手帳と同じ機能性を持ちつつ、エンターテイメント性を廃した手帳だ。

 と思って、相当探したが、なかなかない。それはそうだ。そんな簡単に見つかれば苦労しない。そんなときに「ほぼ日」のサイトを見て知ったのが、姉妹版の「ほぼ日手帳 Cousin」だ。


メーカーほぼ日刊イトイ新聞
製品名ほぼ日手帳 Cousin ファブリックカバー<ブラックチドリ>
購入価格13,800円
購入店舗ほぼ日ストア


 要はバージョン違いなのだが、普通のほぼ日手帳が文庫本サイズなのに対して、「Cousin」のほうは一回り大きいA5サイズになっている。自由度の高いレイアウトはそのままだが、「名言」がない。手帳というより、「一応日付の入った」方眼ノートといった趣だ。

デイリーのページ。余計な要素がいっさいなく、ノートのような印象文庫本サイズの通常版にはここに名言があるが、Cousinにはない「名言」は冊子になって付属する

 名言が載っていた文庫本サイズの通常版に比べ、版形も大きく、名言もないため、筆記面積がかなり広くなった印象だ。こまかいToDoを書き連ねていくより、落書き帳的にアイディアをまとめるのに向いていると思う。

 もう1つ、この手帳で期待しているのが、年スケジュール→月間スケジュール→週間スケジュール→デイリースケジュール、という構成になっている点。週や月のカレンダーは通常、デイリーの間に挟まれることが多いが、あえて月は月、週は週でまとめられている。

 これは、たとえば年間目標を月間目標にブレイクダウンし、さらに週間目標に、そして日々の予定に、と落とし込んでいくのに最適なレイアウトだ。やりたいこと、やらなければならないことを管理するのに最適なフォーマットではないかと思っている。

年間予定月間予定週間予定
ペン込みの実測重量は677g。かなり重い

 欠点は、やはり大きさ故の重さか。今回は、布素材のカバーを選んだが、カバーと付属の3色ボールペン込みで、実測で677gあった。ノートパソコン、とまではいかないがちょっとした荷物であることは間違いない。ただ、手帳とは別に持ち歩いていたノートの機能も兼ねるので、そのあたりを考えれば妥当なところ、といってもいいだろう。

 というわけで、私の2010年の手帳は「ほぼ日手帳 Cousin」とした。


ほぼ日刊イトイ新聞
http://www.1101.com/index.html
製品情報
http://www.1101.com/store/techo/2009/cousin/index.html


 

“手帳嫌い”にお勧め、文庫サイズのシンプルな「文庫手帳2010」

筑摩書房「文庫手帳2010」

 雑な性格に加えて字が汚いこともあって、正直に言って手帳は大の苦手。仕事の予定なら、iPhoneやGoogleのスケジューラーで十分に管理できる。手帳なんて……と思っていた私だが、この2009年、ある手帳を使ってしまっていた。

 その手帳とは、筑摩書房の「文庫手帳」。その名の通り、文庫の形をした手帳だ。


メーカー筑摩書房
製品名文庫手帳2010
購入場所啓文堂書店 吉祥寺店
購入価格672円


 この手帳の良いところは、手帳のくせに手帳らしさがないところ。前述の通り手帳に親しみのない私には、手帳のガッチリとしたデザインにどうも気後れしてしまい、また「この手帳を使えば能率が上がる!」のような謳い文句にもイマイチ乗りきれない。その点、文庫手帳は、見た目はまるっきり文庫なので、一般的な手帳と比べてソフトな印象。しかも表紙には、絵本でお馴染みの安野光雅氏による水彩画が描かれており、全体的に柔らかな雰囲気が感じられる。

 私は2009年バージョンの「文庫手帳2009」をこの1年間使ったが、特に気に入ったのが、軽くてコンパクトなところ。文庫本のようにカバンに忍ばせておけば、邪魔にもならないし、使いたいときにスッと出せる。しおり紐も付いている(しかも2本)というのも、文庫本ならではの良いところだ。

帯には、本製品を端的に言い表す「見た目は文庫で中身は手帳」というコピーが書かれている裏表紙(写真上)、背表紙(写真下)は、ともにちくま文庫の書籍と同じフォーマット。索引は「ん」普通の文庫本と異なるのは、表紙カバーが付いていない点。また、ページは左綴じのため右開きとなる

 一方で、手帳としての内容は、見開きのカレンダー型予定表に、週間の予定表、アドレス帳にノートと、何ともオーソドックス。週間の予定表はちょっとした日記やエピソードが書き込めるほど広く、西暦や年号で年齢が分かる一覧表も付いているが、これらは別段取り上げるほどのものでもない。高機能な手帳に慣れている人なら、間違いなく味気なさを感じることだろうが、逆に使い慣れていない人にはちょうど良いかもしれない。

 ちなみに、文庫手帳の帯には「ロングセラー」の文字が書いてあるが、筑摩書房のホームページを調べたところ、古いものでは1988年版のものがあった。バブル景気を乗り越えて、今もなお残っているとは……シンプルであることが、長い間支持を受ける秘訣なのだろうか。

手帳としての機能はいたってシンプルで、月間・週間のスケジュール表に、アドレス帳、ノートページというもの。「これじゃ物足りない」という人も多いだろうが、「これだけで十分」という人もいるのではないか文庫本でお馴染みの“しおり紐”もある。色違いで2本あるので、月間・週間のページにそれぞれ挟むと便利右は私が2009年中に使っていた「文庫手帳2009」。移動の際にも持ち歩くことが多かったので表紙がヨレている。こんな状態になるまで手帳を使ったことがないので、個人的にはこのヨレ具合に大いに感動している


 ともかく、小さくて軽い手帳を求める人にはぴったり。シンプルなので、高機能な手帳を使いきれないという人にもお勧めだ。もしかすると、子供にも使いやすいかもしれない。

 最後に注意しておきたい点をひとつ。あくまで文庫本なので、ショップの手帳コーナーに置いていないことが多い。私は書店の「ちくま文庫」の棚で発見した。手帳売り場で良い手帳が見つからなかった人は、文庫コーナーに立ち寄ってみてはいかがだろうか。

筑摩書房
http://www.chikumashobo.co.jp/
製品情報
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480426505/



 日記代わりに選んだ「カラーダイアリーボックス」


 
MOLESKINE「カラーダイアリーボックス」
 毎日、日記を付けているという友人の話を聞いて、少々うらやましくなった。仕事柄毎日文章を書いてはいるが、自分のためだけに文章を書くようなことはまずない。スケジュールもモバイル機器に頼りっぱなしの最近では日々のことを記録することもなく、1年前に何をしていたか、何を考えていたか全く思い出せないのだ。これではあまりにも情けないというわけで選んだのは、日記代わりに使えるような手帳、MOLESKINE(モレスキン)の「カラーダイアリーボックス」だ。

メーカーMOLESKIN
製品名カラーダイアリーボックス
希望小売価格5,460円
購入場所渋谷ロフト
購入価格5,460円


 1カ月1冊づつの冊子が12冊セットになったこの製品は、スケジュール管理というよりもメモ書きに適した造りになっている。過去に何冊もの日記帳を無駄にしている私としては、改めて大袈裟な日記帳を買う気にはならなかった。ただし、日常の雑多に呑まれてしまうような実用的な製品も避けたかったのだ。

 カラーダイアリーボックスは見た目からして、実用品よりも嗜好品という雰囲気が漂っている。手帳の老舗、MOLESKINEらしく、カラーも装丁も高級感のある仕上がりになっている。12冊用意された冊子は色が全て異なっていて、見た目にはまるで色鉛筆のような鮮やかさだ。

 ここで、MOLESKINというブランドについて簡単に説明しよう。MOLESKINは、ゴッホやピカソなどが愛用していた“伝説的ノートブック”に端を発しているというブランドだ。伝説的ノートブックとは「丸い角を持つ黒のシンプルな長方形、ノートを束ねるゴムバンド、そして内側のマチ付きポケット」を備えたもので、フランスの製本業者によって作られた。パリの文具店に納品されていたそのノートブックは、持ち歩くのに便利な大きさや頑丈さが支持され著名人が多く訪れ購入していたという。現在のMOLESKINは、1997年にミラノの出版社が作ったもので、ノートやダイアリーで高い人気を集めている。

 カラーダイアリーボックスに話を戻そう。カラーダイアリーボックスは形状こそノートブックではないが、MOLESKINの特徴を全て押さえている基本に忠実な製品でもあるのだ。
1カ月1冊、全12冊がセットになっている。月ごとに表紙の色が違うため見た目にはとても鮮やかだ冊子の表紙にはその月の数字が書かれている。サイズは90×140mmで持ち歩くのが苦にならないコンパクトサイズ。厚さは実測で約3mmほど角は丸く、ゴムバンドが備えられたその見た目はMOLESKINの基本をしっかり押さえたものとなっている。カバーはしっかりした造りで長期の保存にも耐えられそうだ

 1日1ページが用意されているのは、それほど珍しいことではないが、1カ月が見開きになっているマンスリーページがない手帳というのはかなり珍しい。1カ月1冊というのも、スケジュール管理には適していない。あくまでメモ書きやちょっとした日記に最適な製品なのだ。

1日1ページが用意されている。罫線があるので文字を書きやすい。罫線の横には8~20までの数字が記載されているので時間軸に沿って文字を書くこともできる年間のカレンダーはあるものの、1カ月単位のマンスリーページはない年間通してのカレンダーページ。本体サイズの小ささを考えるとここに予定を書き込むのは少々無理がある

 机の前に座って日記を書くより、カバンの中にその月の冊子をしのばせて、空き時間、気が向いた時に思ったことやその日の出来事をメモする方が私の生活スタイルにはあっている。

 5千円を超える価格から考えても、実用品というよりも嗜好品に近い製品。正直なところ、スケジュール管理や、電車の路線図を調べる、アドレス帳など、実用的な用途は全てパソコンやモバイル機器でまかなえてしまう。だったら、ちょっと贅沢な製品で、毎日を振り返ってみるのはいかがだろう。女性なら誰もが目に留める、鮮やかなカラーや凝った装丁は手にするだけで満足感を覚える。

MOLESKINE
http://www.moleskine.co.jp/
製品情報(英文)
http://www.moleskine.com/about_us/news/a_new_moleskine_year.php





2009年12月1日 00:00