やじうまミニレビュー

DHC「防災対策 食品加熱キット」

~災害時でも温かい食事が食べられるキット
by すずまり


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DHC「防災対策 食品加熱キット」

 最近、温かい飲み物や食事が特にうれしい季節になったなと考えつつ、ふと昨年の3月11日のことを思い出した。これまでもある程度、非常時のための水や食料は用意していたつもりだったが、よく考えてみたら温かい食事のことは考えていなかった。非常時に温かい物を食べるというのは贅沢かもしれないが、そういうときこそ少しでも温かい食事ができたら、体に熱を与えるだけでなく、気持ちも支えてくれそうな気がしたのだ。

 温かい食事といえば火を思い浮かべるが、非常時は、状況的に火が使えない場合もありそうだ。そこで見つけたのが「DHC 防災対策 食品加熱キット」だった。


メーカーDHC
製品名DHC 防災対策 食品加熱キット
購入場所DHC公式オンラインショップ
購入価格1,000円/セット

 

 これは、加熱袋1つに対して使い捨ての発熱剤が3つセットになった製品で、電気、ガス、火などは全く使わず、わずかな水と使い捨ての発熱剤だけでレトルト食品やパックご飯が温められるというものだ。加熱袋は断熱不織布が使われていて、サイズは280×130×200mm(幅×奥行き×高さ)。再利用可能なので、1セットで3回温められることになる。

1袋に加熱袋1つ、発熱剤が3個入っている加熱袋を広げた様子口にはファスナーがついている

 入れられる食品は、パックご飯(約160g)1つに対してレトルト食品1袋か、レトルト食品2袋となっており、温めの所要時間はレトルト食品同士が約15分、パックご飯とレトルト食品を約20分となっている。

 これなら食品と一緒にコンパクトに保管できるし、加熱袋は保冷バッグとしても使えるので無駄がなさそうである。1度に温められる量が1人分に限られそうだが、現状では十分といえる。さっそく入手して、試してみた。

90mlの水に発熱剤が反応して発熱。約20分で温まる

 使い方はごく簡単だ。加熱袋のジッパーを開けて底を十分広げたら、アルミのパッケージから取り出した発熱剤を底に置く。その上にパックご飯を乗せ、ご飯の上にレトルト食品を乗せる。

 その状態で、90mlの水を、発熱剤にかかるよう袋の端から注ぎ入れるだけである。アルミのパッケージには90mlの線がついているので、折り目を付けてから計量カップ代わりに使用できる。

食品加熱キットと、パックご飯、レトルトカレーを用意加熱袋の中の様子。発熱剤を置く場所には不織布がついている袋から取り出した発熱剤。サイズとしては小さな使い捨てカイロ程度
発熱剤を加熱袋の中に置く発熱剤の上にパックご飯を置く。今回は200gのものを使用した

 発熱剤に水が触れると、瞬時に「シュー! ゴボゴボゴボ……」という音が鳴り、水蒸気が立ち上り始める。素早くファスナーを引いて加熱袋の口を閉じ、約20分待つのだ。15分が経過する頃、音が静かになるので、それを目安にするといいだろう。時間が来たら袋からレトルト食品とパックご飯を取り出す。

パックご飯の上にレトルトカレーの袋を乗せる90mlの水を注ぎ入れる。発熱剤に水が届いた瞬間から加熱が始まる手早くファスナーを閉じて約20分待つ

 これがかなりいい具合に温まっているのだ。パックご飯は十分食べられる程度に柔らかい。発熱剤と直接触れていただけあって、かなりの温度。素手で取り出すのは危険なほどである。一緒に温めたカレーをかけたところ、ぬるさは全くなく、できたてのカレー並の“温かい料理”として食べることができた。状況によっては涙が出るほどうれしいかもしれない。

使用後の加熱袋の様子。中に水はないご飯は軟らかくなっていた食品加熱キットで温めたカレー

水を注いだ直後の状態。沸騰する音とともに、ファスナーの隙間から水蒸気が立ちのぼる

 通常の写真ではどの程度温まっているのかが伝わらないだろうと思い、参考までに赤外線サーモグラフィカメラでも撮影してみた。一部キャリブレーションがずれてしまったが、温度は室温の20℃から100℃の範囲で色分けしている。不織布の放射率は調整していないため、あくまでも参考値ということでご了承いただきたい。

加熱が始まったばかりの袋サーモグラフィで見ると、発熱剤のある下から熱が生じているのが分かる口の付近がだいぶ熱い。側面を触っていると温かくて気持ちいい

 加熱中の袋は下から温度が上昇しはじめ、70℃台まで温まっているのが分かる。さわって見ると温かいがやけどするほどの熱ではない。ファスナーを開けた時点では、中の食品はおおむね80℃前後にまでなっていた。あれこれと作業しながらのため、どうしても温度が下がってしまうのだが、お皿に盛りつけたところでもご飯の温度は60℃台。もっと手早く用意できていれば、かなり温かい状態で食べられるだろう。

手の皮膚温(大体34℃くらい)に対して、袋の口がかなり高音なのが分かるファスナーを開けたあとの中の様子レトルトカレーはおおむね50~60℃後半。中央は低め
レトルトカレーを裏返してみたところ、レトルトカレーの裏側とパックご飯は70℃後半まで温まっていた盛りつけてみた。だいぶ冷めてしまったと思うが、それでも表面の最高温度は約67.5℃(下20℃、上100℃を256色で表していたが、これは下14.8℃、上68.5℃となってしまったため、色の分布が変わっている)

ムチャをしてほぼ2人分を温めてみた

 しかし、いざというときは節約したくなるのも心情だ。1回で温められるだけ温めたいと思うこともあるのではないだろうか。本来ならNGだが、パックご飯2つにレトルトカレー1つ、レトルトのスープ1つを順に入れたらどうなるかを試してみた。

パックご飯2つに、レトルト食品をさらに2つ入れるというムチャをしてみる発熱剤の袋は計量カップとしても使える90mlの水を注ぐ

 加熱袋に入れることはできたが、やはり熱は十分回らなかった。発熱剤に触れていたパックご飯は軟らかくなっていたが、下から2つめのパックご飯はそこそこ温まっているもののご飯は固く、おいしく食べられる状態にはなっていなかった。さらにその上にあったカレ-は、温かいものの満足のいく温度とは言えず、スープは明らかにぬるかった。実際食べてみても、体が温まると感じるものではなく、むしろわびしさを感じてしまうほどだった。

20分後のパックご飯。右が発熱剤の真上にあったもの。水滴からも温まっているが分かるが、左のご飯にはほとんど変化が見られなかった発熱剤の真上にあった右のご飯はスプーンで簡単にご飯がすくえたが、十分加熱されなかった左のご飯はスプーンで割るくらいの固さだった

 こちらも赤外線サーモグラフィカメラの写真で温度をチェックしてみた。パックご飯の出来は、発熱剤に触れていたかどうかで大きく変わってしまった。発熱剤に触れていなかったパックご飯は、中心部の温度が明らかに低い。水色の部分は26.8℃。周りを囲む黄緑色の部分は36.1℃。周囲のオレンジ色の部分は40~50℃で、人肌程度にしか温まっていなかった。一方、発熱剤の真上にあったご飯は、最も白っぽい部分が約61℃。ご飯の表面としては50~60℃で、その差は10℃にも及んでいた。

右は発熱剤の真上にあったパックご飯。左は下から2つめのパックご飯その温度差は一目瞭然に

 盛りつけ後のカレーとスープの温度は、ご飯の最も温かいところが64.4℃となっているが、ごく狭い範囲。カレーに至っては40℃半ば程度の温度だった。スープも最も高い部分で55℃、ほとんどは40℃前後だった。お風呂なら40℃はうれしい温度だが、食事となると少々厳しい。ムチャをしてはいけないということだ。

お皿に移したときの温度をチェックカレーは40℃半ば程度しかなかった。スープもカレーも混ぜるとかなりぬるくなった

あると絶対安心! でもアツアツで食べたいなら量を厳守

 正直、どこまで温まるのか半信半疑だったが、食べてうれしいレベルまで温まることが分かった。1セットで3回まで使えるので、水や食品と一緒にそろえて置いておくと安心だろう。使用期限は手元に届いてから5年が目安とのことなので、定期的な点検は忘れずに行ないたい。

 ただし、無理に量を増やすと温めきれないので注意しよう。また、発熱剤をむやみに増やすのも危険なので、使用方法は守りたいところだ。発熱剤の主成分はアルミニウムとのことなので、使い終わったら各自治体所定の方法で処分しよう。





2012年 11月 28日   00:00