やじうまミニレビュー
ロジテック「LRT-ER100」
■パソコン周辺機器屋が作った防災ラジオ
ロジテック「LRT-ER100」 |
ロジテックという会社は、もともとはパソコン周辺機器のメーカーで、HDDやルーターなどを主に扱っている。なので、「地震警報機能付きラジオ」を出したのは、ちょっと意外だった。もっとも、ロジテックはスマートフォン用のワンセグチューナーなども作っており、放送受信機器のノウハウも持っているので、社内的には素直な技術的発展なのかもしれない。
地震警報機能と言っても、このラジオが単体で地震を予測するわけでは、もちろんない。放送局から発信される緊急放送を受け、それをスピーカーから伝えるわけだ。緊急放送は、一般のラジオでも受信できるが、このラジオでは電源がオフの場合でも、緊急放送を受けると、自動的に電源が入り、緊急放送を大きな音で鳴らすようになっている。
また、この製品は普通のラジオとしても利用できるのが特徴だ。ラジオ局が放送する緊急放送を利用した地震警報機は、ユニデン「地震津波警報機 EWR200」を始めとして何機種か登場しているが、これらは地震警報機専用で、一般ラジオとしては使用できない仕様となっている。地震警報機とラジオを兼ねた製品は、久しぶりに登場したもので、かなり珍しい。今回は発売前だったので、エレコムから商品を借用してレビューしている。
メーカー | ロジテック |
製品名 | LRT-ER100 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | 直販サイト |
購入価格 | 7,980円 |
■2つの緊急放送を受信して警告
パッケージには「地震や津波を来る前に知る!」と大きく書かれている |
普通のラジオとしての性能は後回しにして、まず地震警報機としての機能を見てみよう。
この製品の地震警報機能は、NHK FMが緊急時に放送する2つの放送を利用している。1つは、「緊急地震速報(EEW)」、もう1つは「緊急警報放送(EWS)」という。
緊急地震速報は、地震が発生した直後のP波(縦波)を受け、S波(横波)の到着前に警報するものだ。P波の方が速いため、遅いS波が到着するまでに、うまくすると数秒程度の余裕がある。その時間を、振動に対する備えにあてることができるのだ。東日本大震災以来、何度も発令されたので、東日本に在住の方は、テレビや携帯電話で耳にしたと思う。
緊急警報放送は、津波や大規模地震の警報などが発令された場合に行なわれるものだ。緊急地震速報よりも、ずっと以前からある。こちらは、東海地震の警戒宣言が発令された場合や、津波警報が発令された場合に放送される。
2つを比べると、今すぐのナマの地震を警告するのが緊急地震速報、人が判断した警戒宣言を警告するのが緊急警報放送と言える。
このラジオには、2台のラジオが入っていると思えば良い。1台は緊急放送の受信専用、もう1台が一般のラジオの受信用だ。1台は常に緊急放送に向けて待機しているので、ラジオとしてNHK FM以外の局を聞いていても、常に警報を受け取れる仕組みになっている。
■初期設定を行なう
緊急放送はNHK FMの放送を利用しているので、NHK FMの電波が受信できるようにする必要がある。
NHK FMの周波数は全国統一ではなく、地域によって異なっている。つまり、いまラジオを使っている地域に合わせて、周波数を設定する必要があるのだ。
基本的な操作部分 | 本体正面。左がスピーカー、右がボリュームダイヤル。真ん中がLED | 操作部分。プッシュボタンが中心。液晶はバックライトがあるので見やすい |
右側面。端子の説明は日本語でわかりやすい | 背面。アンテナと乾電池ボックスのフタだけ | 乾電池は単二アルカリが4本 |
乾電池を入れた状態で重量は531gあった | 左側面。アンテナ端子の横にあるのはストラップ用の金具 | 付属のストラップを付けた状態 |
本体サイズは170×71.62×73mm(幅×奥行き×高さ) | ACアダプタは最近の製品としては大きめだ |
まず、本体に単二アルカリ乾電池4本を入れるか、付属のACアダプタを接続して、電源を入れる。その後、「設定/決定」ボタンを押したら、添付されている「エリア番号表」(A4で3ページもある)を参照し、2桁のエリア番号を入力する。札幌の「01」から沖縄の「54」までコードが割り振られているのだ。東京都の場合コードは「16」だった。「設定/決定」ボタンを長押しして設定が終了する。この設定が終わると、緊急放送を受信するNHK FMの周波数が設定される。
エリア番号表。これで3分の2の量 | エリア番号表の一部。左がAM局、右がFM局 |
もう1つ、重要なのは放送波の受信状態だ。FM放送の受信状態が良くないと、せっかくの緊急放送が受けられない。このラジオでは、受信状態が良好な場合は、緑色のLEDが点灯する。受信状態が悪いと、LEDが点滅して警告する。緑色のLEDが点灯していればOKと覚えれば良い。
緊急放送用チューナーの受信状態が安定すると緑色のLEDが点灯する | LEDライトの部分を押すと、白色LEDが3つ点灯する |
最近は電波が受信しにくい鉄骨鉄筋コンクリート構造のビルが増えたため、室内では電波が受信できない場合がある。このラジオの本体にはFM放送の受信用に長いロッドアンテナが装備されており、アンテナを伸ばすことで受信しやすくなる。我が家はマンションだが、このアンテナをある程度伸ばすことで無事に受信できた。
さらに受信状態が悪い場合に備えて、外部アンテナを接続する端子が用意されている。一般のビルでは、FMラジオ放送用のアンテナ配線をしている例は少ないので、周波数帯が近いテレビのUHF用アンテナ端子につなぐことになる。ただ、このラジオのアンテナ端子はミニプラグなので、普通のアンテナ配線用ケーブルでは接続できない。接続用の専用ケーブルを用意してほしいところだ。
初期設定が終わり、受信状態が良ければ、緊急放送受信用のチューナーは電源スイッチの状態に関わらず、ずっとNHK FMを受信し続ける。そして、緊急放送が行なわれれば、音声でその放送を伝え、本体に内蔵されている3つの白いLEDが点滅して、緊急事態を知らせる。
なお、このLEDは普段でも点灯させることができる。懐中電灯の代わりにはなるほど明るくはないが、ほかに灯りがない状態での非常灯にはなる。
■ラジオの性能は必要十分
通常のラジオ放送を聞くための操作は簡単だ。ボリュームダイヤルを回して電源を入れ、FM/AMのバンドを選び、+と-の2つの選局キーで放送局を選べば良い。
警報放送を聞くための地区設定をすると、その地域の放送局もプリセットで登録されるので、いちいちチューニングを行なう必要はない。
ボリュームダイヤルとFM/AMの切り替えスイッチは、赤い部品が使われているので、ここを操作すれば良いのだなとわかりやすい。ついでに選局キーも赤にすれば良かったと思う。
また、液晶の手前に5つのボタンが用意されており、ここによく聞く放送局を登録することもできる。放送局をプリセットするときに、ついでにこのボタンにも登録してくれると便利だと思う。5つ以上の放送局がある地域もあるが、その場合は、モードキーとの組み合わせで選択できるようにすれば10局まで登録できるので足りるはずだ。
ラジオとしての受信感度などの性能は、ごく一般的なものだ。ビル内では、FMはアンテナを伸ばす必要がある。AMについても主要局は受信できる。音質もほどほどだが、もともとスピーカーがモノラルなので、高品質で音楽を聞くような性格の製品ではない。ニュースやトーク番組を聞くには十分だ
AM放送については、受信感度が不足する場合は、外付けのアンテナが別売で用意されている。1,680円なので、マンションなどで感度が不足するときは利用すると良いだろう。
■発展途上だがうまく育てて欲しい製品
机の上に置いた状態。本体のコンパクトさがわかる |
約2週間ほど、このラジオを使用してみたが、緊急放送を受信する機会はなかった。
電源には乾電池を使ったが、ラジオとして使うのを1日1時間程度にして、緊急放送を待ち受けている状態で、約5日間で電池が切れる。電池が切れると、緑色のLEDが消えるのでわかりやすい。実際に地震などの警告を受けるための機器として使用する場合は、ACアダプタで使用するべきだろう。
個人的には、緊急放送とはいえ音を出してほしくない状況もあるし、乾電池を消耗しない形で持ち歩きたい場合もあるので、緊急放送の受信待機をオフにするスイッチも欲しい。緊急放送が受信できないというリスクもあるのだが、選択肢としてあれば便利だと思う。
また、本機の特徴である、乾電池駆動で緊急放送を必要とするような状況としては、たとえば旅行などが考えられる。その場合は、NHK FMの放送周波数が変わってしまうので、初期設定をやり直す必要がある。ただし、初期設定を行なうためには、付属している紙のコード表が必要であり、ちょっと面倒臭い。
たとえば、あるメーカーのラジオは、同様の設定を地名で行なえる。設定モードに入ると、「札幌」→「函館」→「旭川」のように地名が順番に表示されて、その中から選択できるので、コード表がなくても簡単に設定できる。そこまで行かなくても、PDF化したデータをWebで見られるとか、簡略化した表をカードサイズで用意するなど、もう一工夫して欲しい。
【8月29日11時追記:製品版にはラジオの背面に貼る地域コード表のシールが付属します。お詫びして追記させていただきます】
緊急放送機能付きのラジオとしては、手軽なサイズと親しみやすいデザインを持ち、なかなか面白い製品だと思う。ただ、初期設定のやり方や、ラジオ局の選択ボタンへの登録など、もうちょっと手を加えると便利になるのにという惜しいところがある。これで終わりにするのではなく、うまく育てていって欲しい製品だ。
2012年 8月 28日 00:00
やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです