やじうまミニレビュー

CHEMEX「Filter-Drip Coffee Maker」

~こだわり派におすすめの本格ドリップコーヒーメーカー
by 阿部 夏子


やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです


CHEMEX「Filter-Drip Coffee Maker」

 コーヒーが好きでこれまでもたくさんのコーヒーメーカーを使ってきたが、ドリップコーヒーには苦手意識があった。というのも、自分でドリッパーとフィルターを買ってきて、毎日コーヒーを淹れていたが、その日によって味にばらつきがあり、いまいち満足できず、結局コーヒーメーカーを購入したという経緯があるからだ。

 しかし、今回紹介するCHEMEX(ケメックス)の「Filter-Drip Coffee Maker(フィルタードリップコーヒーメーカー)」を使ってからは、そんな苦手意識が一気に吹き飛んだ。最初はビジュアルに惹かれて購入したが、その味は確かなもの。今は電動のコーヒーメーカーの出番が少なくなるくらい愛用している。


メーカーCHEMEX
製品名Filter-Drip Coffee Maker
希望小売価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格3,780円


 まず、特筆すべきはそのデザインだろう。まるで理科の実験に出てくるような独特の形をした本体は、全てガラス製で、くびれの部分だけ木とレザーで囲まれている。1941年の誕生以来変わらないというこのデザインは高く評価されており、ニューヨーク近代美術(MoMA)の永久展示品としても指定されている。サイズは3カップと6カップの2つが用意されている。今回は、3カップ用を購入した。
製品パッケージ三角フラスコのような独特の形をした製品本体注ぎ口がついている
底面。全てガラス製になっているくびれの部分には木とレザーが巻かれている。注ぐ時はこの部分を持つ

 一度見たら忘れられない本体デザインもさることながら、もう1つの大きな特徴は専用のフィルターにある。コーヒーメーカーに100枚で1,800円(Amazon.co.jp)という価格は、コーヒーフィルターとしてはかなり高額だが、それには理由がある。

 半円形に小さな円がくっついたような形をしたフィルターは、その形も厚みも一般的なフィルターとは異なる。普通のフィルターより厚みがあり、しっかりした造りのフィルターは、その都度自分で折って使う。折り曲げて本体にセットすると、先がとがった円錐形になる。

100枚で1,800円の専用フィルター半円形のような不思議な形をしている使う時はその都度折る。まずは半分に畳む
出っ張っている部分を内側に折るさらに全体を半分に折り畳む本体上部から差し込むようにしてセットして広げると、先がとがった円錐形になる

 一般的なコーヒーフィルターは底の部分が平らな台形のような形をしているが、ケメックスのフィルターは、この円錐形がおいしさの秘密だという。コーヒー粉が一点に集まり、均一な抽出を可能にするほか、コーヒーの渋みの原因となる酸味や脂肪分を分厚いフィルターが取り除いてくれるという。

 実際使ってみると、これが驚くほど違う。まず違うのが抽出時のスピード。普通の紙フィルターを使った時の2倍くらいの時間がかかる。そして、その味わいも全く違うものになった。同じ豆を使って淹れたはずなのに、ケメックスで淹れたコーヒーの方がずっと濃厚でかつまろやかに仕上がるり、豆のランクが1つ上がったように感じる。

コーヒーの粉をセットしたところお湯を注ぎ入れているところ豆が蒸されて、ゆっくりと膨らんでいくのがわかる
コーヒーは円錐形のフィルターの先から少しづつ抽出されるコーヒーを淹れたところ。本体デザインが格好良いので、テーブルの上でも目立つ

 母に普通のコーヒーメーカーで淹れたコーヒーを飲んでもらい、翌日の朝ケメックスで淹れたコーヒーを飲んでもらったところ。すぐに違いに気がつき「この豆おいしいわね。昨日の豆とは違うでしょ?」と言っていたほどだ。

 味やデザインに関しては期待値以上だったが、使い勝手に関しては不満もある。まず、コーヒーをカップに移す時に本体中央の木の部分を持って注ぐのだが、持つ部分の径が小さく、非常に持ちにくい。本体はガラス製で熱が伝わりやすいため、持ち手部分もかなり熱くなるので、注ぐ時は注意が必要だ。

注いでいるところ。ガラスの一部が溝になっていて、そこの溝の中をコーヒーが通っていくコーヒー抽出直後は本体が熱くなっているため、注ぐには注意が必要。持てるのは木の部分だけなので、かなり不安定な持ち方になる

 もう1つは、手入れの問題。スポンジ丸めてなんとか、底面まで洗っているが、中央部分がくぼんだデザインは、決して洗いやすくはない。ケメックスでは専用の洗浄ブラシも用意しているが、そちらのお値段2,100円(Amazon.co.jp)――専用のフィルターに加えて、専用のブラシまでとなるとなかなか手が出にくいのも事実だ。

 フィルターをその都度折らなければいけない、使った後の手入れも大変、と色々手間はかかるが、それでもやっぱり使いたくなる。コーヒーが好きで、その都度豆を挽いて淹れるという人ならばこのくらいの手間は全く気にならないだろう。

 平日の慌ただしい朝ではなくて、週末の昼間にじっくり時間をかけて使いたい製品。決して安くはないが、コーヒー好きの人なら満足感を得られるだろう。





2012年 8月 30日   00:00