藤山哲人のモバイルバッテリー診断

ソニー「USBポータブル電源 CP-F10LSAVP」

~出力3.6Aでタブレット2台充電もできる10,000mAhの大容量モデル

「モバイルバッテリー診断」は、スマートフォンの外部電源として普及しているモバイルバッテリーをレビューするコーナーです。(編集部)
ソニー「USBポータブル電源 CP-F10LSAVP」

 タブレットPCやスマートフォンなど、大容量の内蔵バッテリーを持つモバイル機器が多数登場しているが、それに伴ってモバイルバッテリーも10,000mAhを越える大容量タイプが発売されている。

 今回紹介するのは、10,000mAhの容量を持つソニーの「USBポータブル電源 CP-F10LSAVP」だ。以前に3,500mAhモデルの「CP-F1LSAVP」を紹介したが、デザインはそのままで、厚みが2倍になったという感じだ。

 容量が大きいため、モバイルバッテリーを1回充電するだけで、スマートフォンが何回も充電できる。反面、重くて大きいという短所もある。また、内蔵バッテリーが2,000mAh未満のスマートフォンを使っている場合、1万mAhのモバイルバッテリーはオーバースペック過ぎる。タブレットユーザーや、スマートフォンのバッテリーが3,000mAh以上で、1日にほぼ2回充電をする人のようなヘビーユーザー向けの商品だろう。

 ポケットには厚すぎて入れにくいため、機器を充電する際は、カバンの中に入れることになるだろう。重量は260gで、一般的なモバイルバッテリーと比べるとずっしりとした重さを感じる。

パッケージ内容。USBケーブルとUSB-ACアダプターが付属する
以前紹介した3,500mAhモデル「CP-F1LSAVP」(左)に比べると、かなり分厚く重い
メーカー名ソニー
品名・型番USBポータブル電源 CP-F10LSAVP
バッテリー容量10,000mAh
繰り返し利用回数1,000回
サイズ(幅×奥行き×高さ)70.4×130.6×16.5mm
重量260g
カラー・モデルシルバーのみ
実売価格6,500円程度
対応スマートフォンAndroid:○
iPhone:○
iPod:○
iPad:○
本体上面。左から、充電用MicroUSBコネクタ(その下に充電中/残量表示のLED)、合計で最大3.6A出力できるUSBコネクタ×2、電源ボタン
本体上部から見て右側面。カーブになっていて机には置けない
本体天面。ボディはアルミ製で、「SONY」のロゴがエンボス(型押し)加工されている
本体下部。この面は平らなので、机などに置ける
本体上部から見て左側もカーブになっている。この面は机に置けない
本体底面。コネクタの説明やバッテリーのスペック、残量ランプの見方などが印刷されている
■■注意■■

・実験結果は、室温がコントロールされていない環境で行なっています。電池は温度により、その特性が大きく変わる点にご注意ください。
・実験結果は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません。
・実験結果に基づいた実容量やロス率は、その値を保障するものではありません。
・筆者および家電Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにはお答えできません。

大出力3.6A! スマホは約4回、タブレット2台同時充電も可能

 内蔵バッテリー容量1,800mAhのスマートフォン「ARROWS X F-10D」を実際に充電してみた。ケーブルは50cmと非常に長く、大電流に対応できるよう、とても太い。これだけの長さがあると、たとえば出張の際は、新幹線の背もたれにある雑誌入れにモバイルバッテリーを挟んでおき、スマートフォンやタブレットは折りたたみのテーブルに置いて、充電しながら使うことが可能だ。その一方で、カバンの中に入れるとケーブルが長すぎて邪魔になるかもしれない。

ケーブルは50cmと非常に長い
付属のUSBケーブルは、一般的なケーブルに比べて太く長いが、しなやかに曲がる。左がCP-F10LSAVPのケーブル、右が一般的なケーブル

 実際に1,800mAhのスマートフォンを充電したところ、3回と90%充電できた。この回数は、バッテリー残量0%から充電した値だが、たとえば20%近くになったら充電するようにすれば、同クラスのスマートフォンが5回近く充電できる計算になる。

・スマートフォン充電テストの結果
充電回数「3回」と「90%」(6,948mAh相当)
※測定条件は、WiFi:ON、Bluetooth:ON、GPS:ON、省電力モード:OFF、画面OFFの状態で充電、電池残量約10%から充電開始し90%程度までを繰り返し、アプリ「Battery Mix」にて容量変化を記録

電源を入れた瞬間、残量が点滅回数で表示される。2回繰り返されるが、あっという間なのでお見逃しなく。スマートフォン充電中の残量は表示されない

 使い勝手で気になったのは、バッテリー残量が大雑把なことだ。残量は、電源を入れたときにランプが点滅する回数で表され、3回点滅が「(残量が)多い」、2回点滅が「中くらい」、1回点滅が「少ない」と、3段階で示される。説明書には、これがそれぞれ何%残っているかを示す記述はなかった。均等に割るなら、順に約70%以上、約70~30%以上、それ未満ということになるが、それでも実用上5回ほどスマートフォンを充電できるモバイルバッテリーとしては、区分けが粗すぎだ。残量が少ない状態で使うと、1回フル充電できるかどうかでヤキモキするだろう。できれば5段階で表示して欲しいところだ。

 また、本製品はスマートフォンがフル充電になると自動的に電源が切れるオートパワーオフ機能を備えているが、スマートフォンによっては、電源を入れたままの状態だとオートパワーオフが効かない場合もあるようだ。バッテリー状態の監視アプリなどを入れて、充電完了したらアラームを鳴らすなどして、手動でモバイルバッテリーの電源を切ってやると、より効率よく使えるだろう。

 最大出力は2ポート合計で3.6Aとなっている。したがって充電時に2.1A必要な第3世代iPadと、1.3A必要な超急速充電のスマートフォンの同時充電も可能。機種によってはタブレット2台同時充電もできる。

iPadとスマートフォンの同時充電も可能。機種によっては、タブレットの2台同時充電も可能だ
iPad2とGalaxy Tabの同時充電もできた
【スマートフォン充電(出力)スペック】
項目詳細
USBコネクタ数2
USB最大電流最大3.6A(1ポートあたり2.1Aまで)
充電ケーブル (コネクタ)Micro USB - USB
残量インジケータ1色1灯点滅回数式
(3回点滅:残量多、2回点滅:中、1回点滅:少)
自動電源OFF本体電源ON時も有効
40mAでOFFを確認
同時充電スマートフォン2台:○
スマートフォン+iPad2:○
合計出力は最大3.6Aまで

実容量率は68%と高効率

 たいていのスマートフォンは約1Aで急速充電するため、独自の測定器を用いて連続して1Aの電流を流し、電圧と電流の変化、そしてスマートフォンに充電できる実容量を測定した。

 なお実用量とは、パッケージの「○○mAh」というバッテリー容量のうち、実際にスマートフォンを充電できる容量を示す。実用量率は、表示容量に対する割合で、値が大きいほど高性能バッテリーといえる。

 電圧は0.05Vのブレはあるものの、4.9V程度で極めて安定した出力を見せている。電流は875mAとやや低めで、±30mA程度のブレが見られるが、全体的には安定した出力と言っていい。

電圧は極めて安定に推移している
電流は若干ブレがあるが、全体的には安定している

 10,000mAhという表示容量のうち、実際にスマートフォンの充電に使える実容量を計算してみたところ、約6,800mAhだった。実容量率は68%と、非常に高い値となった。他社の一般的な実容量率は60%台前半で、しかも同社のこれまでのモバイルバッテリーは実容量率が60%に届かないものもあったが、本製品では名誉挽回とばかりに高い実容量率を誇っている。

実用量率は68%と非常に高い数値となった

 なお計算を元に出した実用量から、各種スマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機をおよそ何回充電できるかは、次のとおりになる。Android系の場合()内が内蔵バッテリー容量を示している。

【実用量と各種スマートフォンの充電回数予測】
項目詳細
バッテリー表示容量10,000mAh
連続利用時の実用量6,751mAh(68%)
連続実用量1,000mAh
あたりの価格
\963
充電回数(理論値)Android(1,300mAh):5.3回
Android(1,500mAh):4.6回
Android(1,800mAh):3.9回
Android(2,000mAh):3.5回
Android(2,200mAh):3.2回
Android(2,500mAh):2.8回
Android(3,000mAh):2.3回
iPhone4S(1,432mAh):4.9回
iPhone5(1,434mAh):4.8回
iPad2(6,580mAh):1.1回
iPad3(11,560mAh):0.6回 ソニー PSP(1,200mAh):5.8回
任天堂 3DS(1,300mAh):5.3回

大容量だが一晩で充電完了。繰り返し「1,000回」も魅力

2.1A出力できる付属のUSB-ACアダプターで内蔵バッテリーを充電しているところ

 10,000mAhという大容量になると、モバイルバッテリーの充電時間も使い勝手を大きく左右する。本製品の場合、同梱のUSB-ACアダプター利用で7時間となっている。実際に何回か充電して平均充電時間を調べてみたところ、だいたい7時間半となった。カタログよりはやや遅めだが、一晩寝ている間に充電できることを考えれば、使い辛さを覚えることはないだろう。

 なお同梱のUSB-ACアダプタは2.1A出力だが、本製品の入力値は最大1.5Aとなっている。最低0.5Aからでも充電可能となっているので、0.5A(500mA)出力のUSB-ACアダプターやパソコンのUSBコネクタでも充電可能だが、この場合、丸1日(23時間)かかる点に注意して欲しい。

 また本製品の特徴の1つに、繰り返し利用回数が1,000回という点がある。一般的なモバイルバッテリーでは、繰り返し利用回数が500回というのが一般的。つまり本製品は、他の製品に比べて、2倍繰り返し利用ができるというのだ。

【本体充電スペック】
項目詳細
本体充電用コネクタMicro USB
添付充電器(仕様)2.1A出力(ワールドワイド対応)
充電時間(カタログ値)7時間(同梱USB ACアダプタ利用時)
充電時間(実測)7時間33分
繰り返し利用回数1,000回

アダプター付きで6,500円は安い! 出張用のモバイルバッテリーにオススメ

 ひと通り使ってみたが、容量も大きく出力も高いため、出張など移動中に使うモバイルバッテリーにピッタリという印象だ。

 筆者の経験だと、普段はモバイルバッテリーを使わなくても、出張になると長距離移動中の暇つぶしや事前の調べモノでデータ通信が極端に増えたり、見知らぬ土地に行ってナビを使ったりと、日常とは違うの使い方をすることで、スマートフォンの電池がすぐになくなってしまうことが多い。しかし、10,000mAhクラスの容量があれば、電池切れの恐れも少ない。

 特にタブレット端末のヘビーユーザーにオススメしたい。1ポート辺り最大2.1A出力できるので、第3世代iPadも急速充電できる。さらに2ポート合計で3.6Aの出力も可能なので、1.3A程度必要なスマートフォンの超急速充電も同時に行なえる。さらにこの大出力を活用して、タブレット2台同時充電も機種によっては可能だ。逆に、スマートフォン1台で本製品を利用する場合は、内蔵バッテリーが2,500~3,000mAh以上で1日に2回程度充電する人向けとなる。

 価格の面でも魅力的だ。安い店だと約6,500円程度で買えるうえ、この価格には市場価格で1,500円程度の2.1A出力のUSB-ACアダプターが含まれている。とすると、モバイルバッテリー本体自体は5,000円程度なので、かなり安いことになる。

 2.1A出力ができるUSB ACアダプターが同梱されて、かつ一般的なモバイルバッテリーの2倍の1,000回繰り返し利用ができて、価格もお手頃と、かなり自信を持ってオススメしたいモバイルバッテリーだ。

【総合評価】
メーカー・品名ソニー「CP-F10LSAVP」
ロスの少なさ ★★★★☆(4)
持ち歩きやすさ★★★★☆(4)
単位容量の安さ★★★★★(5)
 充電の早さ ★★☆☆☆(2)
使い勝手のよさ★★★☆☆(3)

藤山 哲人