藤山哲人のモバイルバッテリー診断

パナソニック「無接点対応USBモバイル電源 QE-PL203」

~巻き取り式USBケーブル付き、ワイヤレス充電にも対応

「モバイルバッテリー診断」は、スマートフォンの外部電源として普及しているモバイルバッテリーをレビューするコーナーです。(編集部)
パナソニック「無接点対応USBモバイル電源 QE-PL203」

 当連載では先日、容量2,900mAhのパナソニック「QE-QL103」を取り上げた。スマートフォンを充電するための巻き取り式USB - Micro USBケーブルがセットになった便利な製品で、“革新的なモバイルバッテリー”と紹介した。

 今回は、容量がQE-QL103の2倍の5,800mAhで、ワイヤレス充電にも対応した「QE-PL203」に迫ってみよう。

 まず1つめの特徴は、QE-QL103に引き続き、スマートフォンが充電できる巻き取り式のケーブルアタッチメントが付いている点。しかも、QE-QL103に比べるとケーブルも長く、カバンの中でスマートフォンを充電するのにちょうどいい長さだ。本体と一体になるサイズとデザインなので、カバンの中のモノに引っかかったり絡まることがない。

一体型になったケーブル巻き取りアタッチメント
ケーブルを引っ張りだすと、そのままスマートフォンに繋いで充電できる
アタッチメントを外すと、バッテリー本体を充電するためのケーブルとして使える

 第2の特徴はモバイルバッテリー本体を充電する際、本体を充電台の上にポンと置くだけでいいワイヤレス充電(無接点充電)に対応している点。ワイヤレス充電の方式にはいくつかあるが、本製品は現在一番ポピュラーなQi(チー)方式を採用する。Qiに対応した充電台であれば、スマートフォンに同梱されている充電台でも、他のメーカーが販売している充電台でも利用できる。

 なお容量については、モデルチェンジ前の5,400mAhに比べて、同サイズながら400mAhほどアップしている。

メーカー名パナソニック
品名・型番無接点対応USBモバイル電源 QE-PL203
バッテリー容量5,800mAh
サイズ90×64×24mm(幅×奥行き×高さ)
重量165g
カラー・モデルホワイト、ブラック
販売価格4,200円程度
対応スマートフォンスマートフォン全般
本体上部。USBコネクタは2つあり、2つのコネクタの合計で1.5A出力が可能
本体上部から見て右側には、とくに何もない
本体天面。電源ボタンとその横にバッテリー残量計がある。またワイヤレス充電の規格「Qi」のロゴマークも見える
本体下部には、本体充電用のMicro USBコネクタがある
本体上部から見て左側には、とくに何もない
本体底面。スペックなどが記載されている
■■注意■■

・実験結果は、室温がコントロールされていない環境で行なっています。電池は温度により、その特性が大きく変わる点にご注意ください。
・実験結果は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません。
・実験結果に基づいた実容量やロス率は、その値を保障するものではありません。
・筆者および家電Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにはお答えできません。

スマートフォンを2回充電。ケーブルはカバンに入れて使うのにピッタリの長さ

 巻き取り式のアタッチメントにあるケーブルは、指先で簡単に引っ張り出せる。長さは10cm程度で,ケーブルはアタッチメントの真横から出ている。一般的なモバイルバッテリーに付属している15cm程度のケーブルと同じくらい使い勝手がいい。

 本体サイズは90×64×24mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約165gと、やや厚みと重さがある。スマートフォンと重ねてポケットに入れて充電するというより、カバンの中で充電するという使い方がメインになりそうだが、その点このアタッチメントのケーブルは、ちょうどいい長さだ。しかも通常のケーブルは、バッテリー上部にコネクタが飛び出てしまうが、アタッチメントには突起がないので、カバンの中に入れても他のモノに引っかからず絡まない。

カバンのポケットなどに入れる使い方がメインになりそうだ
ケーブルアタッチメントには突起がないため、カバンの中でモノが絡まることもない

 バッテリー容量が1,800mAhのスマートフォン(ARROWS X F-10D)を実際に充電してみた。その結果、スマートフォンがほぼ2回充電できる結果となった。

・スマートフォン充電テストの結果
充電回数「2回」と「30%」(4,050mAh相当)
※測定条件は、WiFi:ON、Bluetooth:ON、GPS:ON、省電力モード:OFF、画面OFFの状態で充電、電池残量約10%から充電開始し90%程度までを繰り返し、アプリ「Battery Mix」にて容量変化を記録

 電源は押しボタン式のスイッチになっており、スマートフォンの電源を切った状態で充電した場合には、フル充電になってから5分後に電源が自動的に切れる。このあたりは、前回紹介したQE-QL103と同じ。一般的なモバイルバッテリーは自動で電源が切れるまで1分なので、5分間は少し長く電池容量がもったいないように思える。微弱な40mAを流した(スマートフォンの電源をONにして充電した)状態でOFFになるかを試してみたところ、自動で電源は切れなかった。

 出力は2つのコネクタを合わせて最大1.5Aとなっているが、できればキリのよい最大2Aにして欲しかった。なせならスマートフォンの急速充電はおよそ1Aという場合が多く、1Aを確保できない場合は0.5Aで低速充電する。そのため本製品で2台同時充電すると、場合によっては2台とも急速充電できないという可能性もあるからだ。

出力のUSBコネクタは2つある。2台同時充電の場合、急速充電はできなそう
アタッチメントをつけた状態でも、本体のUSBコネクタを利用できる
スマートフォンの電源をONにした状態(およそ40mAの電流が流れる)では、自動的に電源が切れなかった
バッテリー残量は、電源ボタン横にあるLEDの色で、3段階で表示される
【スマートフォン充電(出力)スペック】
項目詳細
USBコネクタ数2
USB最大電流1.5A(1,500mA、2コネクタ合計最大出力)
充電ケーブル (コネクタ)Micro USB - USB(アタッチメント式)
残量インジケータ3色1灯式
(緑:60%以上、オレンジ:30%以上、赤:30%以下)
自動電源OFFあり
同時充電スマートフォン2台:○

実容量率は標準以上。出力は2,900mAhモデルとそっくり

 独自の測定器を用いて、連続して1Aの電流を流し、電圧と電流の変化、そしてスマートフォンに充電できる実容量を測定した。

 なお実用量とは、パッケージの「○○mAh」というバッテリー容量のうち、実際にスマートフォンを充電できる容量を示す。実用量率は、表示容量に対する割合で、値が大きいほど高性能バッテリーといえる。

電圧はまるで定規を当てたかのように、ピッタリ5.0Vをキープし続ける
電流は前半若干低めとなっているが、後半は900mAを中心に±50mAで安定している

 独自の測定器でテストした結果、電圧は文句なく安定。電流も、前半は850mAを割り込むところも見かけられるが、後半は900mAを中心に±50mAで安定している。若干電流が低めな点が気になるだけで、実用上はまったく問題なく安定した電力を供給するだろう。

 前回のQE-QL103のグラフと見比べると、とても似ていて面白い。20分あたりで850mAまで落ち込んで、1時間経過すると950mAに持ち直すところまでそっくりだ。

 表示容量5,800mAhのうち、実際にスマートフォンへ充電できる実容量率は64%。標準より少し多いといった感じだ。

実際にスマートフォンへ充電できる実容量率は、表示容量の64%に当たる約3,700mAhだった

 なお計算を元に出した実用量から、各種スマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機をおよそ何回充電できるかは、次のとおりになる。Android系の場合()内が内蔵バッテリー容量を示している。

【実用量と各種スマートフォンの充電回数予測】
項目詳細
バッテリー表示容量5,800mAh
連続利用時の実用量3,722mAh(64%)
連続実用量1,000mAh あたりの価格1,128円
充電回数(理論値)Android(1,300mAh):3.1回
Android(1,500mAh):2.7回
Android(1,800mAh):2.3回
Android(2,000mAh):2.0回
Android(2,200mAh):1.8回
Android(2,500mAh):1.6回
Android(3,000mAh):1.4回
iPhone 4S(1,432mAh):2.8回
iPhone 5(1,434mAh):2.8回
iPad 2(6,580mAh):0.6回
iPad 3(11,560mAh):0.4回
ソニー PSP(1,200mAh):3.4回
任天堂 3DS(1,300mAh):3.1回

充電時間はワイヤレス充電も有線充電も同じ。しかしワイヤレス充電は便利

 本体内蔵のバッテリーを充電するに当たり、ワイヤレスとMicro USBコネクタから充電する場合の時間差が心配だったが、いずれも6時間15分で変わりはなかった。およそ6,000mAhのバッテリーの充電時間としては平均的だろう。

 Micro USBコネクタから充電する場合には、1つ注意が必要。巻き取り式アタッチメントのUSBコネクタは左右に非常に大きいため、USBハブに差し込むと、左右のコネクタをふさいでしまう。ただし、コネクタが縦に並んでいる場合は、ふさいでしまわないように切り欠きが設けてある。

USBハブに使う場合は、左右に並んだUSBコネクタをふさいでしまう
縦に並んだUSBコネクタなら、コネクタをふさぐことなく有効に使える

 バッテリーから話はずれるが、ワイヤレス充電は一度使うと便利でやめられなくなる。今回テストに使用したスマートフォンはQi規格に対応しており、しかも購入時には充電台もセットになっている。Qiに対応していれば、メーカーがどこであっても、この充電台に置くだけで、バッテリーが充電できてしまう。これはとてもラクだ。モバイルバッテリーやスマートフォンのMicro USBコネクタは、手荒に扱うと緩んだり、ガタが来て接触不良になってしまう恐れがあるが、ワイヤレス充電ならそもそもコネクタを使わない。

 今回使用した充電台は、充電したい機器を中央に置く必要はないため、台の上ならどこにおいてもかまわない。あとは充電器が自動的にモバイルバッテリーの位置を検出して、自動的に充電を開始する。もし複数のバッテリーを置いた場合は、1本ずつ順番に充電してくれるのだ。

ワイヤレス充電の充電台として、スマートフォンに付属したdocomoのQi対応充電器をしよ空いた。パナソニック製ではないが、Qi対応機器なら何でも充電できる
充電台に複数のバッテリーを置くと、順番に充電してくれる
【本体充電スペック】
項目詳細
本体充電用コネクタMicro USB
同梱充電器(仕様)なし
充電時間(カタログ値)6.5時間
充電時間(実測)6時間16分

2,000~2,500mAhスマートフォンを2回充電するのに最適

 バッテリー残量計が色による3段階表示という点に加え、2つのコネクタ合計の最大出力が1.5Aという点を考えると、複数のスマートフォンを持ち歩く人向けというよりも、1台のスマートフォンを2回充電するためのモバイルバッテリーとして使うのが良いだろう。中でもスマートフォン内蔵のバッテリー容量が2,000~2,500mAhという場合にはピッタリだ。

 また、Qiによるワイヤレス充電にも対応しているため、Qi対応の充電台やスマートフォンを持っている人にもオススメしたい。

【総合評価】
メーカー・品名パナソニック QE-PL203
ロスの少なさ ★★★☆☆(3)
持ち歩きやすさ★★★★☆(4)
単位容量の安さ★★★★☆(4)
 充電の早さ ★★★☆☆(3)
使い勝手のよさ★★★★☆(4)

藤山 哲人