家電製品ミニレビュー
貝印「SELECT 100 マルチブレンダー」 後編
貝印「SELECT 100 マルチブレンダー」 |
前回は製品の基本的な機能とジューサー、マッシャーの実用例をご紹介した。貝印のマルチブレンダーではそれ以外にもミンサー、ウィスク、ビーター、グラインダーの4つのアタッチメントが付属する。今回は残り4つのアタッチメントを使用した料理に挑戦である。
■海老とホタテのアジアン・シーフード・ボール(ミンサー)
まずは材料をミンチにできるアタッチメント「ミンサー」を試してみよう。「キレイレシピ」を参考に、海老とホタテで「アジアン・シーフード・ボール」作りに挑戦だ。材料は海老、ホタテ貝柱、玉ねぎ、にんにく、バジル、酒、塩、砂糖、薄力粉など。
ほどよいサイズに刻んだ材料をボウルに入れ、調味料とともにミンサーで細かく砕いていく。全体が滑らかになったら薄力粉とバジルを追加し、さらに砕いていくあとは170℃の油でこんがり揚げてできあがりだ。和風にもエスニックにも使えそうなシーフード・ボールができるのだ。
バジルと薄力粉以外の材料を適当なサイズにカットしてボウルへ | アタッチメントは「ミンサー」を選ぶ | 混ぜながら、何度もミンサーで砕いてゆく |
こちらもあっと言う間にミンチに! というわけにはゆかず。手際の悪さも手伝って、滑らかになるまでになんだかんだと10分近く格闘しただろうか。底の材料にはミンサーが届かないせいか、かなり大きな破片が残ってしまった。ときおりヘラでかき混ぜながら、入念に砕いてゆかねばならない。
滑らかになったら、バジルと薄力粉を追加してさらに混ぜる | タネが完成した……つもりが大きな玉ねぎの破片が出てきてしまった。薄くなっていると取りこぼし易いようだ |
ただし、フードプロセッサーでは有無を言わさず砕ききってしまうところだが、微妙に食感を残したいというときにはマルチブレンダーのほうがコントロールしやすいような気もした。今回は少しバジルの形を残したかったので、加減しながら作業してみた次第だ。
170℃の油で揚げる | 完成したアジアン・シーフード・ボール | 滑らかになっているのがわかる |
■マヨネーズ (ウィスク)
人生初のマヨネーズ作り |
前述の「アジアン・シーフード・ボール」と合わせて紹介されていたのがご存知「マヨネーズ」だ。マヨネーズの材料は、卵黄1個、サラダ油100cc、酢大さじ1、塩小さじ1/4である。これら材料をグラスに入れ、アタッチメントを「ウィスク」に取り替えたマルチブレンダーをグラスの中に沈めた。「HI」で一瞬回転させたところ、グラスの底が一部マヨネーズになった。気をよくしてそのまま勢いで「HI」で混ぜながらグラスの中でマルチブレンダーを上下させ、満遍なく攪拌した。
しかし混ぜれば混ぜるほどマヨネーズ風ドレッシングといった風情になってゆき、どんなに攪拌してもトロリとしたマヨネーズにはならなかった。大失敗である。
アタッチメントを「ウィスク」に交換 | それっぽいものが完成したように見えるが…… | サラサラで大失敗! マスタードや胡椒をプラスして、マヨネーズ風ドレッシングだと思えば使い道はかなりありそうだが…… |
何がいけなかったのかと大いに悩んだが、その答えは取扱説明書の中にあった。マルチブレンダーでマヨネーズを作るには、底が平らで内径6.5~9cm、ガードが沈む程度の小さめの縦型の容器を用意し、ウィスクは“低速で”回転させなくてはいけないのだという。つまりボタンは「LO」である。しかも食材に空気が入るとうまくできないらしい。ということは、アタッチメントを回転させながらを何度も出し入れするなどはもってのほかというわけだ。食材の深さが足りない(広く浅い容器を用いた)場合も同様に失敗する可能性があるらしい。
マルチブレンダーギリギリのサイズである計量カップを使ってマヨネーズ作りに再挑戦だ。 |
つまり失敗要素ばかりだったことが判明した。そこで思い切って計量カップをそのまま使ってリベンジしてみることにした。前回同様に材料を入れたら、アタッチメントを静かに沈め、「LO」を押す。すると瞬間的に攪拌された部分がマヨネーズになった。「LO」を押しながらアタッチメントが材料から出ないようにそっと持ち上げ、材料の中だけで攪拌されるようにしてみた。するとほぼ全体がトロリとしたマヨネーズになったのである。大成功だ。所要時間にしてわずか数秒の出来事だ。
作ったマヨネーズは冷蔵庫で一晩保存しても分離することもなくしっかり固まったままだった。子供の頃、母がマヨネーズ作りにはまっていたことがあったが、やはりうまく固まらない、一度固まっても油分が分離しやすいということでかなり苦労していたのを覚えている。それに比べたらマルチブレンダーで作ったマヨネーズのなんと簡単なことよ。
自家製マヨネーズが手軽に作れるとなると夢は広がる。今回はオイルに特定保健用食品対象の「健康エコナ」を使用してみたが、このように健康にも配慮できるうえ、用途に応じていろんなアレンジが可能だからだ。しかもわずか数秒で完成する。マヨネーズ好きにとってはたまらないのではないだろうか。
慎重に動作させた結果、あっと言う間にマヨネーズが完成。やはり空気をいれてはいけないようだ | 付属のクリーナーで容器に移し変えてみたが、かなりいい感じの仕上がりに | 見た目もまずまずで、リベンジ大成功! |
■生クリーム(ビーター)
アイスクリーム作りの材料 |
マルチブレンダーのアタッチメントとして「ビーター」というものが付属している。これは生クリームなどの泡立てに用いるものだ。泡立てというとハンドミキサーに代表されるような針金のような独特のヘッドを想像するかもしれないが、ビーターは平べったい金具。果たしてこんなものが回転するだけで生クリームが泡立つのかと疑問に駆られながら、アイスクリームの材料となる生クリームを泡立ててみることにした。
氷水につけたガラスのボトルに生クリーム(スジャータホイップ)を入れ、ビーターを装着したマルチブレンダーを沈める。高速で作動させたところ、わずか数秒で液体だった生クリームが固まり始めた。生クリームの中で全体がよく混ざるようにマルチブレンダーを動かしてかき混ぜつつさらに攪拌したところ、10秒もかからないうちにしっかりとポイップされた生クリームが完成してしまった。「あっ」と思ったらできていたというくらいの感覚だ。
「これで泡立てができるの?」と思ってしまったアタッチメント「ビーター」 | わずかな時間で生クリームがどんどん固まっていく | ついでに白身や黄身も泡立てておく |
続けて黄身や白身を泡立て、全体を一つにまとめてさらにビーターでよくまぜればアイスクリームのタネは完成だ。十分泡立てたものはそのまま小分けして冷凍してもよいし、アイスクリームメーカーを使えばさらに滑らかなソフトクリームのような仕上がりになる。今回はちょうど本コーナーでもご紹介した貝印のアイスクリームメーカーのボウルが冷えていたこともあり、30分かけてアイスクリームを仕上げてみた。
全体をあわせてさらによく混ぜたら、アイスクリームメーカー(貝印)に流し込んで30分ほど冷やす。そのまま小分けして冷やし固めてもよい | 完成したアイスクリームはカップに分けて冷凍庫へ |
実はこの「ビーター」には余談がある。初めてマルチブレンダーを試したのは、この生クリーム作りだったのだ。クリームの泡立てが一番身近に感じていたからなのだが、これが散々だった。当時は縦型のガラスのボトルではなく、普通のボウルで泡立てようとした。マルチブレンダーをボウルに入れ、スイッチを押すとすごい勢いでクリームが周囲に飛び散ってしまい、肝心の泡立てもうまくゆかずという厳しい結果に。泣く泣くハンドミキサーの出動となってしまった。
これがきっかけで「スティックタイプのブレンダーは自分に合わないかも!?」と思い込みかけたのである。しかしなんてことはない。容器を変えただけで成功したわけだ。やはり材料が広く浅くなる容器は向いていないようである。
■ふりかけ(グラインダー)
次はスタンドの後ろにセットされている粉末作り用容器「グラインダー」でふりかけ作りに挑戦だ。材料はレシピを参考に、乾物の小エビ、せんべい状のちりめん、白ごま、昆布、塩などを用意。これらをグラインダーに入れマルチブレンダーをセット。30秒ほど混ぜてみた。
せんべい状のちりめんは固まりが残り、昆布もかなりおおざっぱではあったが、海産物ベースのオリジナルふりかけができあがっていた。唐辛子を少々加えると大人の味になりそうだ。また、また上からお茶をかけてお茶漬けにするといい出汁がでそうである。独自の味を追及したくなる一品だ。もっと細かいほうが好きな場合は、付属のパウダープレートを入れて混ぜると、粒子がより細かくなる。
カルシウムがたっぷりとれそうなオリジナルふりかけの材料 | それぞれ適量を容器に入れていく | フタをしてアタッチメントをとりはずしたマルチブレンダーを差し込む |
スイッチを入れるとグラインダーブレードが回転し、オリジナルふりかけができあがり。ちりめんが一部残ってしまったが、これは大きすぎかつ入れすぎが原因だろう | あつあつご飯にかけると素朴でホッとするおいしさ! |
■コーヒー豆(グラインダー)
グラインダーでは最大35gまでのコーヒー豆も挽けるので試してみた。粗挽きっぽい仕上がりになったが、作りたい分だけ挽けたらというときに便利だ。なお、コーヒー豆の場合、付属のパウダープレートは使用できないので注意しよう。
グラインダーでコーヒー豆を挽いてみよう | 一度に挽ける豆の量は35gまでと決められている | 挽く前の豆の様子 |
マルチブレンダーを差し込み、グラインダーブレードを回転させる | 挽き終わったコーヒー豆 | あとはお好みでどうぞ |
■省スペースな1台でマルチな活躍を望まれる方に
ビーターによる生クリーム作りのコーナーでも触れたが、マルチブレンダーのファーストインプレッションはあまり良いものではなかった。もともとスティックタイプのミキサーへの憧れはあったのだが、説明書をあまり読まずに普段通りに試した結果、材料が思い切り周辺に飛び散ってしまうという最悪の出だしだったからである。ハンドミキサーならスイッチを押すだけであとは持っているだけなのに、マルチブレンダーは混ぜている間ずっとボタンを押しっぱなしにしなければならないという点にも疲れと戸惑いを感じていた。しかし容器の選び方や握り方がまずかっただけだった。
説明書によれば、使用できる容器のサイズとしては内径6.5cm以上、深さ8cm以上が望ましいとされている。ジュースやマヨネーズ作り、泡立てには、別売の専用のカップ(DK-5044)を使用するといいらしい。正しくグリップすれば無駄な力を入れずにすむし、適切な容器を用いればその性能を遺憾なく発揮してくれるのである。このほかにも必読箇所があるので、取扱説明書には必ず目を通しておくことをお勧めする。
1台で6役もこなせるマルチブレンダーなら、なんらかの用途でいつもキッチンにでている可能性は高い。付属のブラシを使えば手入れも簡単だ。使い慣れれば慣れるほどそのよさを感じるだろう。それまで挑戦しなかった料理も身近に感じられるに違いない。
スタンド付きなので、使用途中で手軽に立てかけておけるところもいい。できれば受け皿があればさらによかったかもしれない。中にはアタッチメント選びが面倒に思われる方もいるだろう。とりあえず「マッシャー」か「ジューサー」をつけておけば、泡立てや混ぜもの以外は割とマルチに対応できてしまいそうな印象だ。慣れてきたら料理に合わせてつけかえるようにすれば問題なさそうである。
あとは「コードレスだったら」とか、「もう少しグリップが細かったら」とか、「押したままにできたら」と思っている人もいらっしゃるのではないかと推測。手が小さめの筆者としてはぜひ望みたいところだ。
2009年9月11日 00:00