家電製品ミニレビュー
富士通「H GRADE HRL001F」
■電池屋さんが作った尖った製品
富士通「HRL001F」 |
アルカリ乾電池やニッケル水素電池で知られるFDKは、富士通のブランドで多くの電池応用製品も発売している。代表的なのが、LEDを使ったランタンや懐中電灯(LEDライト)だ。「H GRADE」というシリーズ名で、数十品目の製品がラインナップされている。
特徴的なのがLEDの明るさで、ランタンでは3W級、懐中電灯では1W級の明るいスーパーLEDを搭載した製品が多い。ほかにも、以前に紹介した単二/単三/単四の乾電池がどれでも使える「LEDなんでもライト」のように、一癖ある尖った製品が多い。
今回は、H GRADEシリーズの新製品である「HRL001F」を紹介しよう。これは、コンセントで充電できる、充電式LEDライトなのだ。もちろんLEDは1W型を搭載している。
メーカー | FDK(富士通ブランド) |
製品名 | H GRADE HRL001F |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | アスクル |
購入価格 | 6,600円 |
■コンセントで充電するLEDライト
HRL001Fのパッケージは、黒と銀のオトコっぽいデザインの紙箱だ。パッケージの内容は、LEDライト本体のほかは、ペラ1枚の取扱説明書とシンプルだ。
HRL001Fのサイズは、懐中電灯型のLEDライトとしては大きめで、太いところの直径は65mm、長さは205mmある。太いのはレンズ部分で、握る部分は普通のLEDライトと変わらない。重量は約230gなので、見た目よりも軽い。
黒と銀の男っぽい外箱 | 箱に記載されている主な仕様。余談だが、ここだけでなく取扱説明書にも「内臓電池」と記載されている | 取扱説明書に記載された各部の名称と充電方法 |
一見、ごく普通のLEDライトに見える | 単四電池を使うミニLEDライトとの大きさ比較 | 操作は電源スイッチのみ。オン/オフのみで、明るさの調整できない |
LEDは1W形。反射板が深い | 点灯した状態。直視すると危険なほど明るい |
この製品の最大の特徴は、電源だろう。本体内にニッケル水素電池を内蔵しており、本体のプラグをコンセントに差し込むだけで充電できる。つまり、乾電池を必要としないのだ。東日本大震災直後の乾電池の払底ぶりを考えると、魅力的な仕様だ。
電源プラグは、本体の真ん中あたりに収納されている。まず、本体前半分のレンズ部分を曲げる。次に、電源プラグのカバーを開ける。すると、電源プラグが見えるので、手前側に90度回す。カバーを閉めれば、プラグがコンセントに挿せる状態になっている。ちょうど、本体からプラグが生えているように見える。
電源プラグは、本体の真ん中あたりに仕込まれている | レンズ部分を90度折り曲げる | カバーを開く |
プラグを起こす | カバーを閉じる。これで充電可能になる | LEDライト本体がそのままコンセントに挿さる |
2つ穴のコンセントは、両方ともふさがれてしまう | 充電中は赤いLEDが点灯する |
プラグを取り出すときの仕組みは凝っていて、とてもおもしろい。惜しいのは、電源プラグを収納するときだ、カバーについている滑り止めの部分が電源プラグで隠れてしまっているので、カバーを開けるのに手間取るという点。側面から爪を入れるようにしないと、うまく開かない。もうちょっと角ばった形状にして、滑り止めを付けてほしい。
プラグをしまうときに、カバーが開けにくい | 内蔵電池はニッケル水素電池。容量や充電可能回数は取扱説明書にも記載されていない |
内蔵されている充電池は専用型のニッケル水素電池で、交換はできない構造になっている。取扱説明書に分解方法は掲載されているが、「この説明は、製品を廃棄する際に内蔵電池を取り出すためのもの」とわざわざ注記されている。
充電時間は、電池が空の状態で5時間とされており、実測では4時間強ぐらいだった。電池が交換できないので、いったん電池を使い果たしてしまうと、これだけの時間使えないことになる。
■首が90度曲がって立つ
HRL001Fの、2つ目の特徴は、本体が2つ折りに曲がることだ。前半分のレンズ部分は、通常のまっすぐの状態から、45度と90度の2段階に曲げることができる。
HRL001Fの尾部は平らになっていて、本体を垂直に立てることができる。その状態から、レンズ部分を45度や90度に曲げても、そのまま立てて置ける。ちょっと何かを照らし続けていたいという時には便利な機能だ。
底部は広めで平らになっている | ストラップを敷かないように注意すれば、安定して立つ | 側面から見る |
レンズ部分が45度曲がる | さらに90度まで曲がる | 点灯した状態 |
90度曲げて、立てた状態 | レンズ部分は見かけよりも軽いので、安定して立っている | 手で持つ場合でも曲げて持つと不思議な面白さがある |
立てた状態でも安定させるために、レンズの部分は軽く作られている。一方、比較的重いバッテリーは握りの部分に入っていて、重心を安定させている。
現状でも便利な機能だが、レンズ部分が30度ほど下向きに照らせると、作業をする手元を照らすことができて、さらに便利だったと思う。
■屋外で威力を発揮する1W級LED
この製品の3つ目の特徴は、LEDの明るさだ。1W級のLEDを搭載しているので、通常のLEDライトと比べて、かなり明るい。
また、LEDと組み合わされているレンズも、光を拡散させずビームのように集光するタイプだ。例えば、明るい昼間のオフィスで、20mほど離れた壁面を照らしても、白い光が目視できる。
光が届く距離が長いので、屋外で実力を発揮する製品だと思い、夜になってから30mほど離れたビルの壁面を照らしてみると、直径2~3mほどの明るい光がくっきりと見える。15mぐらいから先では、距離を変えてみても、あまり光の輪の大きさが変わらない。中心部分の光が直進していて、拡散しにくいようにレンズと反射板が設計されているようだ。
50cmほど先への投光。ちょっとだけ下を向いてくれると用途が広がると思う | 1mほどの距離での光の形。中央部分が特に明るいが、周囲にも光がとどくので一般的な用途でも使いやすい | 5mほど離れた場所からの光の形。中央に光が集中している。この距離を10mにしても、光の輪の大きさはあまり変わらない |
ただし、屋外用としては惜しい点が2つある。
1つは電池の寿命だ。一般的なLEDサーチライトでは、単一乾電池4本を使って50時間程度の電池寿命を持っているが、この製品はカタログ値では1時間半、実測値でも2時間ほどしか使用できなかった。充電時間が長いだけに、この電池寿命の短さは制約と言えるだろう。
もう1つは防滴性だ。この製品は防水性/防滴性は備えていないので、雨中では使用できない。電源プラグやバッテリーを内蔵しているので難しいのかもしれない。
■ちょっと欲張りすぎだが、可能性を感じさせる面白い製品
この製品は、「コンセントで充電できる」、「レンズ部分が90度回る」、「1Wの強力なLEDを搭載している」という、という3つの要素を持っている。
しかし、電池寿命の短さが、用途を狭めている。
では、この製品がダメな製品かというと、そうは感じなかった。操作していてとても面白い製品であることは間違いない。なんというか、これを手元に置くために用途を探してしまうような面白みがある。それぐらい、3つの特徴が魅力的なのだ。
ただし、魅力的な要素を盛り込みすぎて、製品のバランスというか実用性がやや欠けている感じがする。3つのポイントの、どれか1つを手放すことで、残りの2つの長所が生かされて、さらに面白い製品が生まれるのではないだろうか。
たとえば、「コンセントで充電できる」と「レンズ部分が90度回る」という長所を生かすために、LEDの明るさを落として、電池寿命を長くするという手はあるだろう。
同様に、レンズ部分が90度回るという利点を諦めてバッテリーの容量を2倍に増やし、「1Wの強力なLEDを搭載」した「コンセントで充電できる」製品を考えると、これも魅力的に感じる。バッテリーを交換可能な形にするのもアリだと思う。
現状では価格が高めなこともあり、すべての人には勧められない。ただ、3つの特徴が魅力的なので、購入して使いこなしを考える楽しみがある製品だ。各要素をうまく生かした後継製品にも期待したい。
2012年11月19日 00:00