家電製品ミニレビュー

日立「ハイポジション扇 HEF-700HR」

~ACモーターでも、8枚羽根と微風で心地良い涼しさが得られる
by 正藤 慶一
日立「ハイポジション扇 HEF-700HR」

 このところはとにかく暑くて、外に出るだけでも汗がダラダラと出てきてしまう。毎日エアコンを使うのがもはや当たり前になっている。しかし、エアコンはすぐに部屋が冷えるわけではないので、帰宅直後や風呂あがりには扇風機が欲しい。

 というわけで扇風機の購入の検討をしたが、最近流行りのDCモーターの高級扇風機は、価格が高くて手を出しにくい。かといって、安くて機能のない扇風機で済ますのも面白くない。要するに、従来通りのACモーターで、そこそこに機能があるものが欲しい。

 そこで今回選んだのが、日立リビングサプライの「ハイポジション扇 HEF-700HR」。実売で1万円程度と、2千円、3千円の安物と比べると高いが、DCモーターの高級扇風機と比べればまだ安い。しかも、8枚の羽根で、やさしい風が出せるとのこと。このちょうど良い価格と機能に惹かれ、購入してみることにした。

メーカー日立リビングサプライ
製品名ハイポジション扇 HEF-700HR
希望小売価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格11,480円

 パッケージ内容は、羽根、羽根ガード、支柱、台座で、これを組み立てて使用する。これは扇風機としてはごく普通のことだが、羽根だけは異質で、普通の扇風機なら4枚か5枚が普通だが、8枚の翼がビッシリと備えられている。実際に測ったわけではないが、羽根は45度になるように作られているように見える(360÷8=45)。

パーツは台座、支柱、本体、羽根ガードという、ごくありきたりなものただし、羽根は8枚と細かい。これでやさしい風を送るという

 組み立てた本体は、リビング扇ということもあってそれなりに大きいが、羽根の裏側の出っ張り部分(モーター部分)は意外と薄い。スペック上では371×360×810mm(幅×奥行き×高さ)ということで、40cm四方のスペースが確保できる場所なら楽勝で設置できるだろう。リビング扇ということでコンパクトではないが、持ち運べないほどでもない。

正面から見たところ。8枚の羽根が特徴的だ横から見たところ。モーター部の出っ張り部は意外と薄め。扇風機にありがちな首振りを切り替える突起部はなく、リモコン操作で切り替える
運転モードは微・弱・中・強の4つ。支柱には現在運転中のモードが照らされる

 運転モードは弱/中/強のほか、弱よりもさらに弱い風を送る「微(うちわ風)」も用意されている。このうちわ風は日立の扇風機の特徴で、過去の製品や下位モデルにも搭載されていることが多い。

 まずは「弱」で運転してみる。風にあたってみると、確かにソフトな印象。普通の扇風機よりも、風の圧力が弱く、柔らかに感じられた。普通の扇風機は風を4枚切り、または5枚切りしているところを、本製品ではさらに細かい8枚にスライスすることで、風の塊を細かくしているのだろう。

 次に「微(うちわ風)」に合わせると、弱よりもさらに弱く、やさしい風が送られてくる。本当に微弱な風だが、これが不思議と涼しく感じられる。特にじっと座っているときには、弱よりも心地よく感じる。風の感触もソフトで、とても気持ちが良い。エアコンで冷房していても暑さを感じる場合にはピッタリで、この微風があるとないでは、体感温度がまったく違う。

 ちなみに、「中」・「強」については、普通の扇風機と同様強力な風が送られてくるため、やさしさや柔らかさについてはよくわからなかった。

運転を「微」から「強」へと段階的に切り替えているところ

 消費電力を測ってみると、「微」は8.4Wと、とても少なかった。DCモーターの扇風機では、最低消費電力が2Wだったり3Wだったりするが、ACモーターだって1ケタ台の微弱な送風はできるのだ。しかし、「弱」は22.4W、「中」は30.1W、「強」は39.5Wと、このあたりはよくある扇風機とまったく変わらなかった。

 各モードでは、リモコンまたは本体のボタンを押して「リズム運転」にもできる。「微」にリズム風を使用すると、さらに弱い運転になるが、消費電力は8W→22W→15W→8W→22W→5W……などと、数字が頻繁に切り替わって忙しくなる。風もたまに「弱」っぽいのが一瞬だけ送られてくるなど、どうにも制御が忙しいように見える。このあたりがACモーターの弱点かもしれない。

消費電力も測ってみた。写真は待機電力中のようす。0.5W消費しているもよう「微(うちわ風)」はたったの8.4W。DCモーターよりも多いが、1ケタ台に収まった「弱」になると一気に22.4Wまで上がった
中は30.1W強は39.5Wだった

 日立の扇風機でもう1つ特徴的なのが、首振り運転の角度が3段階から設定できる点。モーター下部のバーを動かすことで、45度/70度/90度に設定できる。私が特にこの45度が、1人でパソコンやゲームをしている際に浴びるのにピッタリで、非常に気に入っている。首振り角度が90度だと、まったく風が来ない時が数秒間あるが、45度なら範囲が狭いので、体に風が当たる時間が多い。

 首振り運転は、本体の首振りボタンまたはリモコンで行なう。風量はどれに合わせても首振りスピードは同じなので、送風用とは別に、首振り用のモーターを搭載しているのだろう。なお、リモコンはチャイルドロック以外の機能がすべて操作できるため、非常に使いやすい。

首振り運転の角度が選べるのは、日立の扇風機の特徴。個人的には45度で1人で当たるのが大好きだリモコンはチャイルドロック以外の機能を備えている

 このほか、オンタイマーとオフタイマー機能も搭載。設定範囲は1~9時間と非常に幅広く、もちろんON/OFFの併用も可能(ただし、OFF→ONのみ。ON→OFFの順番では設定できない)。利用中は支柱部に数字が表示され分かりやすい。また、運転から20分毎に運転モードを弱め、2時間後、または10時間後に運転を自動で停止する「おやすみ運転」という機能というのもある。

 最後に紹介したいのが、本体背面のツマミを押すことで、首の高さが最大1,100mmまでビョーンと伸びるところ。これを最大まで伸ばせば、デスクに座っている際にも、上半身に風がしっかりと届く。このあたりは日本メーカーらしい機能だ。首振り運転も合わせれば、部屋全体の空気が循環できるだろう。

オンタイマー(上)とオフタイマー(下)も備える。写真は同時に設定しているところで、「4時間後に運転をストップし、5時間後に再開する」ということになる電気を消しても視認性はバッチリ。眩しいと感じることはなかった
リビング扇ということで、首はビヨーンと最大1,100mmまで伸びる。椅子に座っている際も上半身に風が届いて嬉しい支柱には溝があり、810~1,100mmの間で段階的に長さが調節できる

 以上、本製品についてひと通り見てきたが、これといったマイナス面はないものの、DCモーターで2万円以上の“最高級”クラスの扇風機と比べると、やや物足りなさを感じる。“8枚羽根でやさしい風”とはいえど、風の塊は若干感じられるし、首振り角度の選択やうちわ風機能についても、従来モデルとは変わっていない。バルミューダの「GreenFan(グリーンファン)」や、東芝「Sient(サイエント)」、ダイソンの「Air Multiplier」など、高付加価値を備えた製品と比べると、地味な印象は拭えない。

 しかしそれを踏まえても、良い扇風機に感じられた。中でも、8枚羽根によるやさしい風と、弱よりも弱いうちわ風はとても心地良かった。エアコンとの併用にはピッタリで、エアコンを28℃設定にして、本製品の微風で運転すれば、いやな暑さを感じることなく、快適に過ごせている。

 暑さに困っているけど、エアコンは使いすぎたくないし、DCモーターの高級扇風機も手を出しづらい――そんな方は、ぜひこのHEF-700HRをお勧めする。部屋にやわらかな微風を送るだけでも暑さは和らぐ、というささやかな感動を味わっていただきたい。






2012年8月3日 00:00