家電製品ミニレビュー
アピックス「タジンポット AMP-170」
アピックス「タジンポット AMP-170」 |
外国の友人に話を聞くと、日本は“グルメの国”だと言う。確かに、繁華街を歩けば各国の料理店が目に付くし、家庭でも、中華やイタリアンを食べるのは日常的だ。
それだけではない。最近ではタジン鍋という、北アフリカ地方の鍋もブームになった。タジン鍋とは、てっぺんが尖った形状をした鍋で、モロッコやチュニジアといった北アフリカ地方独特の調理器具だ。尖った蓋を閉じて煮込むことで、水蒸気が鍋のてっぺんに立ちのぼり、冷えて水滴となって食材にポタポタ落ちる。この循環により、うまみが凝縮し、ヘルシーな蒸し料理に仕上がるというわけだ。
今回は、そんなタジン鍋の蓋を搭載した電気鍋、アピックスの「タジンポット AMP-170」を使ってみた。
メーカー | アピックスインターナショナル |
製品名 | タジンポット AMP-170 |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 3,980円 |
タジンポットは、2人用のコンパクトな電気鍋で、蒸す(スチーム)、煮る(ボイル)、焼く(グリル)の3つの調理が可能だ。
本体にはタジン鍋の蓋と、平型の蓋が用意される。2つの蓋は、いずれもガラス製で、調理中に中身が確認できる。また、ステンレス製のボウル、フッ素加工のグリルプレート、蒸しアミも付属し、タジン鍋を使った蒸し料理のほか、普通の電気のグリル鍋としても使える。
本体サイズは230×200×222mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.5kg。容量は1.1L。消費電力は650Wとなっている。パッケージには20品目のレシピブックも同梱される。
製品パッケージ | 本体には、タジン蓋、平蓋、ステンレス製ボウル、グリルプレート、蒸しアミが付属する |
操作方法はシンプル。本体正面のダイヤルボタンで、加熱温度を「低/中/高」の3段階から選ぶと、自動で電源が入る。
本体正面。ダイヤル式ボタン1つで操作する。加熱温度は「低/中/高」の3段階から選べる | 本体底面。電源コードの長さは約1.2m |
取扱説明書と、20品目のレシピブックが付属 | レシピブックには、蒸す(スチーム)、煮る(ボイル)、焼く(グリル)の3項目に分けてレシピが掲載されている |
■タジン鍋の定番、蒸し料理~鶏肉のタジン、アクアパッツァ、バーニャカウダ
最初にタジン鍋の定番である、鶏肉のタジン(蒸し煮)を作ってみた。本体に、ステンレスボウルとタジン蓋を取り付ける。
レシピは、ボウルの中でにんにくを炒め、塩コショウした骨付き鶏肉を入れて焼き色を付ける。さらに玉ねぎとにんじんを入れ、玉ねぎが透明になるまで炒めたら、クミンとターメリックを少々加えて混ぜ合わせる。
そこに水約100ml、ブイヨンキューブ1個、赤唐辛子、ローリエ、サフラン各適量を加え、煮崩れしないよう最後にジャガイモとトマトを乗せて、蓋をして約20分間「弱」で煮る。
面白いのは、煮込み始めてから10分ほど経つと、タジン蓋のてっぺんから、水滴がダラダラと落ちていくこと。こうして蒸気が対流し、旨みが染みこんでゆくのだろう。ガラス製の蓋のため、中の食材の具合も確認できて、安心だ。
オリーブオイルでにんにくを炒め、鶏肉に焼き色を付ける | 最後にジャガイモとトマトを乗せれば、煮崩れが防げる |
蓋をしてすぐの状態 | 蓋をして約10分後。蓋のてっぺんから、水滴がダラダラと流れている |
でき上がった鶏肉のタジン。スパイスが効いていて、さっぱりとした味わい |
約20分煮立たせた後、塩こしょうで味を整えれば完成だ。皿に盛り付けてみると、北アフリカ料理店に足を踏み入れた時のような、スパイシーな香りが食欲をそそる。クミンやターメリックといったスパイスで味付けされているため、塩分は控えめだが、味が食材にしっかり染み込んでいる。油分も少なく、さっぱりとした味わいだ。
調理にかかった時間はトータルで約30分。分量は2人前にピッタリだった。
このほか蒸し料理として、付属のレシピブックに記載されていた「タイのアクアパッツァ」と「蒸し野菜+バーニャカウダ」も作ってみた。
タイのアクアパッツァは、ステンレスボウルにアサリを敷き詰めて、その上でタイを蒸す料理だ。アサリの塩気を利用するため、味付けは最小限。アサリがパカッと口を開いたらできあがり。所要時間わずが約20分で、ホームパーティーにピッタリな、見栄えのいい一皿に仕上がった。
アサリとタイをボイルする | ガラス製の蓋なので、アサリの様子も外から確認できる |
アサリがパカッと口を開いたらできあがり | 所要時間わずが約20分で、見栄えがいい一皿ができた |
「蒸し野菜+バーニャカウダ」は、蒸しアミを使って、蒸しアミの下に水を入れて沸かし、アミの上に野菜を並べて蒸すだけだ。蒸した野菜は、温めたバーニャカウダソースに浸けて食べる。
今回はブロッコリー、にんじん、ミニトマトを蒸したが、一番気に入ったのがにんじんだ。普段苦味があるにんじんも、蒸しただけで、想像以上に甘くなっていて驚いた。トマトは爽やかな酸味がちょうど良く、ブロッコリーはアンチョビ風味のバーニャカウダソースにピッタリだった。
「蒸し野菜+バーニャカウダ」では、蒸しアミの下に水を入れて沸かし、アミの上に野菜を並べる | バーニャカウダソースも野菜と一緒に温めてしまえば、一石二鳥だ | できあがり |
■グリル料理~鮭と野菜のバジルグリル、玉ねぎとベーコンのバター醤油炒め
付属の20品目のレシピブックには、蒸し料理のほかに、グリルと煮込み料理もラインナップしている。いずれもフッ素加工のグリルプレートを使う。ここでは、「鮭と野菜のバジルグリル」と「玉ねぎとベーコンのバター醤油炒め」を紹介しよう。
まず、鮭と野菜のバジルグリルは、鮭と野菜を並べて焼くだけ。鮭と野菜に火が通ったら、溶けるチーズを乗せて、バジルで味付けする。レシピではバジルペーストを使っているが、今回はバジルの粉末で代用した。
調理時間は約20分。でき上がった鮭は、身の奥までしっかり熱が通っていて、ホクホクとした食感。無駄な油は落ち、バジルの香りは爽やかで、全体的にさっぱりとした味わいだ。
鮭と野菜を並べて焼く。ちょうど1人前がおさまる。付け合わせの野菜には、冷蔵庫の残り物を使っても良いだろう | 平蓋もガラス製で中の様子が確認できる | グリルプレートをこのまま食卓に出してお皿代わりに使えるが、プレートは高温なので注意! |
1回の調理でできあがったのは、約1人前。AMP-170はコンパクトサイズで、掲載されているレシピは、約1人前~2人前分が中心。どれも比較的少ない食材で作れるので、節約にも繋げられそうだ。
鍋敷きを用意すれば、グリルプレートをこのまま食卓に出してお皿代わりに使えそうだが、プレート部はかなり熱くなっているので、気をつけたい。
一方、玉ねぎとベーコンのバター醤油炒めは、バターと醤油の味が染み込み、フライパンで作る時よりも玉ねぎのシャキシャキ感が薄れ、まろやかな舌触りに仕上がった。
玉ねぎ半分とベーコン40gほどがあれば作れるので、お弁当や食卓にもう一品加えたいとき、役立つ一品だ。
玉ねぎ半分とベーコン40gを切って入れ、蓋をして熱を通す | 約15分ほどで、玉ねぎがあめ色になる | フライパンで作った時とは違う、バターと醤油の味が濃厚な仕上がりになった |
■煮込み料理~やわらか煮込みハンバーグ、ショウガの雑炊
このほか、煮込み料理として「やわらか煮込みハンバーグ」と、「ショウガの雑炊」をレシピブックに習って作ってみた。それぞれ煮込んだ時間は30分程度と長めだが、調理温度を「弱」にしておけば、じっくり時間をかけて加熱していても、焦げ付かない。鍋よりも底が浅いため、具材を取り出したり、ハンバーグをひっくり返しやすかった。
煮込みハンバーグは、煮込み時間が短いのではないかと心配だったが、食べてみると野菜や肉にもちゃんとデミグラスソースの味が染み込んでいた。タジン蓋を使ったからだろうか。野菜はホクホクしていて、蒸し野菜の食感に近い。
ショウガの雑炊もあっさりしていて食べやすかった。和食から、こってりとした煮込みハンバーグまで、タジンポットで作れる料理の幅は広い。もっと寒い季節なら、タジンポットで鍋も楽しめそうだ。
やわらか煮込みハンバーグ | 三つ葉を添えた、ショウガの雑炊 |
気になった点は、調理中、通電ランプが常時点灯しないこと。調理温度を上げる際には、ランプが赤色に点灯するが、温度を下げた場合や、加熱時には、点灯していないことがある。加熱中にうっかりステンレスボウルやグリルプレートに触れぬよう、注意したい。
また、電源コードの長さは約1.2mで、調理台の上で使うには、ちょっと短めだった。
全体的には使いやすかった。正直、タジン料理が食べたいためだけに、先の尖った独特の形状の鍋を買うのは躊躇していたが、タジンポットの場合、電気鍋とタジン鍋の2WAYで使えるから、和食から洋食、主菜から副菜まで、幅広い料理が作れるのが気に入った。
最後に、冒頭の、日本は“グルメの国”だ、という話に戻そう。今や街を歩けば、イタリアンや中華、タイ・ベトナム料理、韓国料理、インド料理(というかカレー)といった各国料理の店は沢山あるが、タジン鍋に代表されるような、本格的なモロッコ、チュニジアなどの北アフリカ料理を提供してくれるお店は、まだまだ都内でも少ない。実は私は、都内でタジンを出すお店は片っ端から食べ歩いているが、店によって本場アフリカ風のテイストだったり、モロッコ系移民がパリで開いているようなビストロ風の味付けだったりと、味はまちまち。自分好みの一皿と出会えることは貴重である。
だからそんなタジン鍋を、自分好みの味付けで気軽に作れるタジンポットは重宝する存在だ。陶器やシリコン製のタジン鍋は沢山売られているが、電気を使ったタジンポットは温度調節が簡単で扱いやすい。さらに、コンパクトサイズなので、自宅で1人で食事を取る際にも、サッと調理ができるのが良い。
タジン鍋に挑戦したいけど、温度調節が難しそうと思っている方、汎用性がないのではないかと躊躇している方には、電気鍋としても使えるタジンポットがオススメだ。
2012年5月7日 00:00