家電製品ミニレビュー

大作商事「マイファン ポータブル 10インチ」

~乾電池で動くシンプルな25cm扇風機
by 伊達 浩二
大作商事「マイファン ポータブル 10インチ」 どうしてこういう製品は、パッケージが英文なのだろう?

乾電池で動くのに、大きめのファン

 大作商事「マイファン ポータブル 10インチ」は、ACアダプタと乾電池で動く扇風機だ。

 普段は、ACアダプタで使っていて、電源が取れない場合や停電時は乾電池で使うことができる。そういう用途には充電池を内蔵した製品が多いが、乾電池を使うことで構造が簡単になるというメリットがある。

 乾電池で動く扇風機というと、卓上で使うUSB兼用の製品を思い浮かべる人が多いと思う。しかし、この製品は、ファンの口径が25cmと、一般的なサーキュレーターよりも大きい。一般的な扇風機のファンの口径が30cmなので、それに近い大きさがある。

 ファンの口径が小さいと、ファンの回転数が増え音がうるさくなりがちだ。また、風の質も、柔らかい扇風機のものとは異なり、直線的なサーキュレーターに近い印象を受けることが多い。両者の中間的な口径のファンを持つ、この製品がどのような性格なのか興味深いところだ。また、乾電池を使用することによる長所と短所を見極めてみたい。

 


メーカー大作商事
製品名マイファン ポータブル 10インチ
購入場所東急ハンズ
購入価格3,990円

 

扇風機としては、軽くてコンパクト

 今回は、東急ハンズの店頭で購入したが、パッケージは小さめで、紙袋に入れて持ち帰ることができた。箱の重量も大変に軽い。

 パッケージの内容もシンプルで、本体とACアダプタ、8ページの取り扱い説明書だけだ。

本体が薄いので、箱も薄い。大きめの紙袋で持ち帰れた箱の反対側は日本語で書かれているパッケージの中身は、本体とACアダプタ、薄い取扱説明書のみ

 マイファン本体の大きさは300×350×100mm(幅×奥行き×高さ)なので、昔風に言えばLPレコードよりもちょっと大きいぐらいだ。ACアダプタも、12V対応だが、ごく小さいものだ。

 ファンは5枚羽根だが、1つ1つの羽根は前端と後端の幅が狭く、尖った形をしている。前から見ると羽根と羽根の間の隙間が広く見える。

本体正面。ヒトデのような羽根が印象的だ本体の横幅は、ちょうど30cm定規ぐらい本体の右側面、電源スイッチがある
風量の調整はHIGH/LOWの2段階本体背面。ACアダプタの差込口以外は何もないACアダプタは小さめ

 本体の重量は、実測で892gしかない。構造が簡単なこともあるが、本体のABS樹脂が薄いことも影響している。おかげで高級感はあまりなく、1,000円台のUSB扇風機と見た目はあまり変わらない。

 とりあえず、ACアダプタのプラグをコンセントに差し、マイファン本体の側面にあるスイッチを入れると、すぐに使える。スイッチは、HIGH/LOW/切の3段階で、使い方に迷うことはない。

 ファンの部分は、上下に大きく角度が変えられる。また、本体が軽く、簡単に左右に動かせるので、自分の思ったところに、思った通りに風を当てることができる。

ファンを一番下に向けた状態ファンを一番上に向けた状態。かなり上に向くので、床に置いても顔に風を当てやすい


ファンは左右には動かないが、上下に動く範囲が広い。動かすときの音はちょっと大きめだ

 

 期待していた風の質は、扇風機というよりはサーキュレーターに近い。直線的で、当たりが固い感じの風だ。やはり、風の質はファンの口径だけではなく、羽根の形状によるところが多いようだ。

 また、動作時のファンの音も大きめだ。LOWにしても、それなりの音がする。日中のTVが付いているような部屋であれば気にならないが、夜間にずっと動かしておくと、気になってしまう。私は動かしたままでは眠れなかった。


まずLOWで、つづいてHIGHで動かした。ファンの音は大きい

 

乾電池のコストは気になるが、ケーブルレスの快感は捨てがたい

 次に、本命である乾電池で動かしてみよう。 マイファンが必要とするのは、単一乾電池が8本で、アルカリ乾電池が指定となっている。

 今回は、富士通のRスペックの4本セットを2つ購入した。このセットが、近所の店舗では1番安かったのだが、それでも1セットで627円した。2つ購入したので1,254円だ。一般的なアルカリ乾電池2本セットで500円以上する例もあった。8本購入したら2,000円を超えてしまう。マイファン本体の価格の半分以上となる。

 また、単一乾電池はとても重い。なんと、8本で1,087gもある。包装用フィルムなどを除いても、1kgを越えてしまう。マイファン本体よりも乾電池の方が重いのだ。

 本体底面のカバーを外し、8本の乾電池を入れる。入れ方にコツがいるので、カバーには電池を入れる順番が指定されている。この通りに入れないと、最後の2本が入らなくなるので、注意が必要だ。乾電池を入れた本体の重さは、実測で1,970gもある。

 電池部分のカバーには、プラスネジが2本付属している。カバーのツメは浅く、単一乾電池が重いので、外れてしまいやすいのだ。ちなみに、ネジを固定する穴の精度はあまり高くない。ちゃんとしたプラスドライバーを用意して、しっかり締めるようにしたい。

 単一乾電池8本を入れると、ぐっと重心が下がり、本体が安定した。上端部をちょっと突いたぐらいでは倒れない。

本体底面。電池ボックスのカバーの大きさがわかる乾電池は8本必要。入れ方にコツがある電池ボックスの中に、袋に入れたネジが貼られていた
乾電池を入れない状態での本体は892gしかない今回使用した、富士通製の単一アルカリ乾電池。4本セットが2つ必要だった。重量は1,087gもある乾電池を入れると1,970gあった

 重くなったマイファンだが、乾電池駆動はとても面白い経験だった。電源のことを考えなくてよいので、台所、ベランダ、トイレなど、どこにでも持って行ける。車や自転車で移動する人であれば、屋外でも持ち出せるだろう。充電池内蔵型の扇風機に比べ、本体が薄いので、動かしやすく感じる。自分が移動する先に合わせて、持ち歩きたくなるのだ。

 暑い日に、自分に近いところで使っていても、風の質などは気にならない。たとえば、湯上がりにあぐらをかいた足の間にマイファンを置いて、顔に風を当てることができる。そうすると、強い風が当たって気持ちよく、快感だ。

 また、机の上に置いてみても、それなりに使えてしまう。ただ、この使い方だと、ファンの位置が近くなるので、風の強さと動作音がやや気になってしまう。とくに、動作音は大きく聞こえる。静かなオフィスでは「LOW」でも隣の人に気兼ねが必要だろうと感じる。

 そこで、Watchのオフィスで、何人かの人に協力してもらい、隣の人がこの製品を使っていたら気になるかと試してもらった。すると、「LOW」なら良いという人と、「LOW」でも嫌という人が半々だった。そして「HIGH」は全員が嫌だと答えた。

コンセントのない台所にも置ける一般的な大きさの机の上にも置ける移動のときは本体の枠を持つと持ちやすい。指挟みに注意

 ちなみに、数日間で十数時間使ってみたが、乾電池の消耗は感じられなかった。取扱説明書によれば、LOWで約40時間、HIGHで約24時間となっている。

自分の部屋で使うファンとしてお勧め

 マイファンは、長所と短所がはっきりした製品だ。長所は、機能がシンプルであること、手軽に移動できること、乾電池を使ってケーブルレスで使用できることだ。短所は、ファンの音がうるさめなことと、乾電池のコストが高いことだろう。

 これまで、充電池を内蔵したファンを2台試してきたが、ケーブルレスで使える快感は、この製品がずば抜けて良い。機能がシンプルなこと、本体が小さく薄いことなどが理由だろう。自分が移動するところに、一緒に移動するのが苦にならない。ただし、乾電池を入れた状態の2kgという重さはギリギリで、もうちょっと軽くあってほしい。

 たとえば、単三形のエネループ8本とスペーサーを使えば、乾電池のコストと重さの問題は改善される。メーカーの指定電池ではないため、動作については自己責任となるが、魅力的なアイデアだ。

 ただし、マイファンは、それ以外でもいくつか弱点はある。1番はの弱点はファンの音で、これは独特の羽根の形によるところが大きいと感じる。もっと、羽根の形状とモーターを見直すことで改善できる可能性があるだろう。

 また、風量についても、現状ではHIGH/LOWの2段階しかないが、LOWをもう少し弱くして、MIDを作ってほしい。風量切替を3段階にして、微風を作ってほしいのだ。

 さらに言えば、樹脂の質感をもうちょっとあげて欲しいとか、この大きさで黒1色はヘビーなのでカラーバリエーションがほしいとか、いろいろ要望はある。

 しかし、全体的に好印象の製品であることは間違いない。また、特に防災とか停電とかを考えなくても、軽いノリで使えるパーソナルな扇風機として、存在価値のある製品だと思う。複数の人で居間で使う扇風機としては推薦できないが、自分の部屋で使うファンとしてなら、お勧めできる製品だ。






2011年8月1日 00:00