家電製品ミニレビュー

ダイキン工業「セラムヒート ERFT11LS」

~省電力もハイパワーも自在、芯から暖まるスポット暖房
by 正藤 慶一
ダイキン工業「セラムヒート ERFT11LS」

 この冬は、加湿ファンヒーター加湿器をガンガンに併用していた。室温は25℃オーバー、湿度も50%以上は当たり前。おかげで今のところは風邪もなく、とても快適に過ごせている。

 しかし、先日届いた電気代の紙を見てびっくり。月1万円を超えてしまった。普段なら高くても7千円程度で済むのに……これは明らかに加湿ファンヒーターと加湿器の使いすぎだ。加湿ファンヒーターの消費電力が1,200Wと高いうえに、しかもそれを加湿器と併用してしまったのがいけなかったのだろう。加湿ファンヒーター単体で使用すればそこまで問題ではならなかったはずだ。

 改めて我が家での過ごし方を考えてみると、ファンヒーターのように部屋全体を暖めるよりも、カーボンヒーターのような“スポット暖房”の方が向いているかもしれない。パソコンやゲームなどでじっとしていることが多いため、いつも居る場所だけを部分的に暖めた方が、電気代を節約できるはずだ。

 というわけで、今回はスポット暖房の家電として、ダイキン工業の「セラムヒート」を使ってみよう。


メーカーダイキン工業
製品名セラムヒート
品番ERFT11LS
価格オープンプライス
参考価格27,800円(ビックカメラ)

 セラムヒートは、本体のヒーターから放射される遠赤外線で暖まる暖房器具。ファンヒーターのように熱風を送るのではなく、人体に吸収されやすい遠赤外線を放つことで、身体を芯から温めることができるというもの。輻射式の電気ストーブのカテゴリに入る製品だ。ダイキン工業がエアコン以外に手がける暖房器具として、家電業界では名の知られた製品だ。

 今冬モデルの「ERFT11LS」では、従来モデルに比べてアップグレードが施された。1つ目は、新しい反射板の採用で、足元方向への照射範囲が広がった点。2つ目は、省電力モードの搭載。3つ目が、全面ヒーターの角度が変更しやすいハンドルの採用だ。さらに、オフタイマーの時間も3時間から6時間に延びている。これらの点についても、併せて取り上げてみよう。

 本体サイズは282×291×688mm(幅×奥行き×高さ)で、大きめの印象を受ける。ヒーター面が横長ということもあるかもしれない。重量は6kgと重いが、背部にあるハンドルで簡単に持ち上げられる。台座部は四角形で、安定している。

ヒーター部分は上に30度、下に5度傾く。また、持ち運びやすいよう取っ手も用意されているヒーター部は台座(写真)を中心に70度回る。自動首振り運転も可能
上部の2つのダイヤルで運転をコントロール。左がヒーター出力、右が電源兼オフタイマーとなる。運転中は右にあるオレンジ色のランプが点灯する

 操作はヒーター上部のダイヤルで行なう。ダイヤルは向かって左側がヒーター出力、右側が電源兼オフタイマー。ヒーターの目盛りは1から10まであり、出力はそれぞれ330W~1,100Wとなる。右側には50Hz/60Hzごとに1~6時間の目盛りがある。電源のON/OFFスイッチはなく、オフタイマーを回すことで運転がスタートする。つまり、運転中は常にオフタイマーが掛かっていることになるが、これは電源の切り忘れを防ぐためだろう。

 まずは運転させてみよう。ヒーターの出力を5~6の間にセットし、電源ダイヤルをONにする。すると、運転開始から約30秒程度で、体がじわーっと暖かくなってきた。出力はフルパワーの半分程度、身体まではヒーター部からは1mほど離れているにもかかわらず、十分に暖かい。これがファンヒーターなら、空気が温まるまでしばらく待たなくてはいけないが、セラムヒートならスイッチを入れて1分も経たずに、暖を取ることができた。

ヒーターは全部で3つあり、出力が小さい場合は中央のみ、大きい場合はすべてが熱くなる運転中のようす。ヒーターが赤くなるが、明るい部屋だと確認しづらい

 ここで、出力を最低出力となる「省電力モード」に合わせてみた。これは今回のモデルから追加されたモードで、3本あるヒーター管のうち、真ん中1本だけを使うというもの。定格出力はたった250Wと低いが、これが実際は十分に暖かい。さすがに1m以上離れると暖かさが薄れるものの、それ以内の範囲であれば問題なく使えるだろう。ほんのり、じんわりと暖かいので、身体が熱を持ちすぎないのも良いところだ。パソコンやゲームで長時間動かない場合にピッタリだろう。

 最大出力の目盛り「10」(1,100W)だと、ガッツリとした暖かさが感じられ、帰宅後に冷え切った身体を暖まるのに最適だ。十分に暖を取った後は、徐々に出力を下げていけば、その分電気代が節約できる。また、暖まった後にその場を離れても、体の芯が暖まっているため、寒くないというのもうれしい。これが遠赤外線の効果なのかもしれない。

省電力モードは、250W(定格)の低消費電力で暖めるモード。これが意外にも、しっかり暖かい。本体に近い一で、長時間移動しないなら、十分に暖が取れる出力を高めれば、1m以上離れていても暖かさが伝わってくる。勉強や仕事に最適

 使っているうちに、セラムヒートの土台前面のあたりにも、暖かさが届いていることに気付いた。これが新採用の反射板による効果なのだろう。足元まで暖まることができた。本来の使い方とは外れるが、雨や雪で濡れた靴を乾かすのにも使えそうだ。

 ところでセラムヒートは、通常は縦方向のヒーター部を、回転させて横向きにもセットできるところも特徴のひとつ。今回のモデルでは、この回転をラクにするためのハンドルが、ヒーター部の左下部(縦置き時)に用意された。操作は非常に簡単で、ハンドルを持ってヒーター部を時計回りに回すだけ。片手でも簡単に切り換えられる。前モデルでこのハンドルがなかったのが信じられないくらいだ。

 運転音については、ほとんど無音と言っても良いくらい静か。運転中にヒーターの金属カバーが熱の影響できしむ音がわずかにするくらい。テレビや音楽の妨げになることはほとんどないだろう。焦げなどのいやなニオイも感じられなかった。

土台前面のあたりも暖まっており、足元も暖かいヒーター部回転用のハンドルを新搭載した

ヒーターはハンドルを握れば簡単に回転できる。なお、運転中の角度・位置変更は、説明書では禁止されている点をご注意いただきたい首振り運転中のようす

 ひとつ注意していただきたいのが、複数の機器が繋げるタップに接続する場合は、単独で使用すること。タップの定格容量である1,500Wをオーバーする場合があるためだ。これは出力を高めた場合はもちろん、出力の目盛りが「5」や「4」など、低めの場合でも同様だ。

 というのも、目盛りが「4」の消費電力をワットチェッカーで調べたところ、通常は約260Wと低いものの、数秒おきに約1,000W近くまで上がっている。説明書では「4」の消費電力の目安を「560W」としているが、実際には260Wと1,000Wを繰り返して出力しており、結果的に消費電力の平均が「560W」ということらしい。なので、“セラムヒートの消費電力が560Wなら、900Wの暖房器具を同じタップに繋いでもギリ大丈夫よね”と思っていると、タップの定格容量をオーバーしてしまう恐れがある。細かい点だが、説明書で指示されていることなので、気をつけていただきたい。


出力の目盛りが「4」の場合の消費電力の変化。約260Wと約1,000Wの出力を繰り返す運転となっている

 使い方としては、寒い時にはハイパワーで使い、だんだん暖まってきたら、省電力モードへと切り換える、というのが賢い使い方だろう。じんわりと浸透する暖かさが気持ち良いのはもちろん、省電力モードの消費電力は実測で約260Wと低いため、エアコンやファンヒーターよりも電気代を安く済ませることができる。

 暖かいのはもちろんのこと、ハイパワーから省電力まで、場面によってパワーが選べる自在性も見逃せない。体の芯から暖まりたい人には言うまでもなくピッタリだが、それに加えて、風が出るから乾燥する、暖かくなるまでが遅い……など、エアコンやファンヒーターの暖房が合わない人にもお勧めしたい。

省電力モードの消費電力は、実測でも約260W程度省電力モードなら、最大消費電力435Wの加湿器(左)と併用しても、そこまで電気代の浪費にならないだろう





2011年1月31日 00:00