家電製品ミニレビュー

ティファール「イージープレシング」

~ボイラー搭載でプロ並みのパワフルスチームを連続噴射
by 阿部 夏子

プロ並みのスチーム噴出ができるアイロン

ティファール「イージープレシング」

 これまで、何台ものスチームアイロンを使ってきたが、性能だけを考えると、学生時代にバイト先で使っていた業務用のスチーマーが断トツで優れていた。

 スチーマーというのは、蒸気で洋服のシワを伸ばすもので、アパレル関係の店舗ならほとんどの店が使っている。スタンド型で、台座部分に大きな給水タンクとボイラーを備えており、スイッチを入れると掃除機の吸い口みたいな吹き出し口から、熱い蒸気がどんどん吹き出す。

 主な用途としては、ボディ(マネキン)が着ている洋服のシワを伸ばしたり、ディスプレイ用の洋服のシワを伸ばすこと。アイロンと違って押しつけることがないので、洋服が立体的に仕上がるのが特徴だ。

 スチーマーとアイロンでは、本体構造も形状も全く違うので、比べるのはおかしいかもしれないが、「洋服のシワを取る」という用途においては、大量のスチームを連続して出すことができるスチーマーが圧倒的に有利。その理由は本体の構造にある。スチームは、水をボイラーで沸騰させて作っているが、アイロンとスチーマーでは水の量も、ボイラーの性能も全く違う。

 前述したようにスチーマーのボイラーと給水タンクは、ボイラーの吹き出し口とは別の場所に設けられている。一方、一般的なスチームアイロンでは給水タンクもボイラーもスチーム噴出口も全て本体に内蔵している。そのため、ボイラーも給水タンクも小さく、スチーム噴出能力も少ないのだ。

 アイロンのスチームの少なさに不満を感じていたが、業務用のスチーマーに比べてスチームの量が少ないのは当たり前だし、しょうがないとあきらめていた――そんな時に知ったのが、今回紹介するティファールのアイロン「イージープレシング」だ。給水タンク、ボイラーを別に装備するするスチームアイロンで、業務用スチーマー並みのスチームを噴出できるという。



メーカーティファール
製品名イージープレシング
希望小売価格26,250円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格16,300円


 この構造自体は、イージープレシングが初めてというわけではない。ティファールでは過去にも、同様の機構を搭載した「スチームジェネレータープロミニッツ」を発売している。ただし、定価は50,400円でちょっと手が出なかったというのが本音だ。イージープレシングは価格を従来製品よりも約半分に下げながらも、給水量は約2倍にするなど機能面でも向上している。

大きいけど軽い!

 前置きが長くなってしまったが、ここからは本体を見ていこう。本体は、ボイラーや給水タンクが内蔵されているスタンドとアイロン部から成る。普通のアイロンとは構造が違っているため、サイズも大きめで、パッケージサイズも普通のアイロンに比べると3倍近い。

製品パッケージ給水タンクとボイラーが内蔵されたスタンドと、アイロン部から成るアイロン部

 サイズの大きいスタンド部も普通のアイロンとは違うところだが、1番目をひくのは電源コードとは別に、アイロン部とスタンドをつなぐコードがあるというところ。電源コードの3倍近い太さがあるこのコードは、ボイラーで作ったスチームをアイロンに伝えるためのコードなのだ。中を熱いスチームが通るので、コードは断熱構造が施されている。

 スイッチは、スタンド部分にボイラーのON/OFFスイッチとスチーム量の調節ダイヤルが、アイロン部にはかけ面の温度調節ダイヤルが、それぞれ設けられている。給水はスタンドの底面付近にある吸水口から行なう。容量は1Lで、普通のアイロンに比べると3倍以上もの容量。タンクの蓋も、ネジが付いた本格的なもの。

 この給水タンクとボイラーにより、毎分60gのスチームを連続噴射する。また、ボイラー内は3.5気圧まで上がるため、スチームの温度も一般的なものより高めの140℃を維持できるという。

スタンドからは電源コードと、アイロン部にスチームを流す太いコードが出ている給水タンクはスタンドを一体になっている給水タンクの蓋。ネジが付いた頑丈な造りのもの
ボイラーのON/OFFスイッチとスチーム量の調節ダイヤルかけ面の温度調節はアイロン部分で行なうスチームスイッチはハンドルの内側にある

 実際に製品を触ってみて一番驚いたのは、アイロン部の軽さだった。重さは1,067g(実測)で、普通のアイロンと比べてちょっと軽いかなくらいの差なのだが、スチームアイロンの場合、本体重量にタンクの水の重さが加わる。イージープレシングでは、タンクが本体とは別に設けられているため、これ以上重くなることがなく、手にした感覚がとても軽い。

アイロン本体かけ面は滑りが良い特殊セラミック採用アイロン重量は1,067g

まずはスチームのお手並み拝見

 まずは、イージープレシングが得意なスチームの連続噴射の実力を見てみよう。用意したのは旦那が毎日着ているスーツ。ひざ裏や、お尻のあたりに座りシワが目立つ。このシワを自宅で取るのはかなり難しい。苦肉の策で入浴後の湯気がもうもうした浴室にスーツを持ち込んで、必死でシワを伸ばしていたりした(それでもきれいにはならない……)。それが、イージープレシングを使うと、ものの5分でシワなし、きっちり仕上げることができる。

 使い方は簡単。まず給水タンクに給水して、スタンド部にあるボイラースイッチをON、その後スチーム量設定ダイヤルを最大に設定。アイロン部にはサーモスタットランプが付いているので、このランプが消えたら準備完了だ。

スタンドの給水タンクに水を入れる。容量は1Lなので、電気ケトルなどの大型容器を使うと便利ボイラースイッチを入れて、調節ダイヤルは最大にセットサーモスタットランプが消えたら準備完了

 スチームの噴射スイッチはハンドルの内側に設けられている。このスイッチを押すと、もうスゴイ! ブシューとすごい勢いでスチームが噴出する。まるで白い煙が上がっているような大量のスチームが、発生する。


スチームをパンツに向かって噴射しているところ

 シワを取るためには、まずスチームを噴射して、そのあとなでるようにして、生地を平らにしていく。スチームの量は多いが、高温なので、衣類が濡れてしまうということはなく、あっという間に蒸発する。スーツの上下、両方のシワを伸ばしても、5分くらいで作業が終わってしまった。

スーツのジャケット裏にあった、座りシワもスチームをかけて、さっと伸ばすようにするだけであっという間にとれた
パンツの膝あたりはシワが寄りやすいスチームを使うとすぐにシワが取れる
シワが付きやすいコットンジャケットスチームを全体にかけて、手で形を整えると、すぐに生き返る
スチームボタンを軽く押すだけで、すぐに大量のスチームが出てくる

 使っていて一番違いを感じたのは、スチームボタンを押す時の感触だ。

 一般的なスチームアイロンではスチームボタンを押す時、まるでスチームを押しだすような重い感覚がある。連続噴射したいと思っても、数秒もするとスチームの出が悪くなって「プスップスッ」という、空ぶりの音。何度もスイッチを押さなければならないので、右手が疲れてきてしまう。

 それがイージープレシングでは、スイッチの感触はごく軽くて、スイッチを押している間中、安定したスチームが出てくる。スイッチを軽く押すだけで、大量のスチームが出てくるこの感じは、普通のアイロンにはないものだ。

もちろん、普通のアイロンがけもできる

普段使っているアイロン台のアイロン設置用スペースには入らなかった

 次に試したのは、Yシャツのアイロンがけ。これも、スーツ着用で会社に通っている人なら、避けては通れない作業だ。

 シャツをアイロン台に広げて、アイロンを定位置に――と思ったところで、思わぬ事態が発生。私が普段使っているアイロン台は、スタンド式と言って立ったまま使えるタイプのもの。アイロン台のサイドには、アイロンを置くためのスペースが設けられている。しかし、イージープレシングのスタンド台は大きすぎて、そのスペースに収まりきらないのだ。仕方なく、ダイニングテーブルの上にイージープレシングを置いて使うことにした。

 実際の作業の方は、一般的なスチームアイロンと同じように進めることができた。ただ、アイロン本体の重さがやや軽めなので、しっかり折り目を付けたいという時は、やや力を入れる必要がある。また、イージープレシングならではのスチーム用の太いコードが付いているので、最初はアイロンの取り回しに少々戸惑った。

 ただし、襟周りや袖口など、普通のアイロンでは難しいところも、スチームで一気に仕上げられるのはイージープレシングならでは。時間がないときは、アイロン台を出さずに、ハンガーにかけた状態で、一気にスチームだけで仕上げるというのも良いかもしれない。

かけ面を使ったアイロンがけも問題なくできるスチーム用のコードが太いので、最初は取り回しに戸惑った
アイロンをかける前のYシャツかけた後

頑固なシワに大量スチームが有効

 アイロン台を使って作業を進めていくうちに、イージープレシングは普通のアイロンでは苦手な頑固なシワが付いた薄手の生地や、厚手の生地に向いているかもしれないと感じた。

 実際試してみると、これが大正解。かけ面だけを使って伸ばすよりも、本体を少し浮かしてスチームを使いながら、シワを伸ばすようにすると、厚手のランチョンマットや、洗濯でシワだらけになった薄手の枕カバーをきれいに仕上げることができた。

普通のアイロンでは苦手な厚手のランチョマットのシワも楽々取れる細かいシワがたくさんついた薄手の生地スチームを使いながらだと、細かいシワもすぐに伸びる

アイロンが苦手な人にこそ勧めたい1台

かけ面によるプレスに頼らずに、スチームだけでシワが取れるので、アイロンが苦手な人にこそお勧めだ

 業務用と同じ機構を搭載したアイロンと聞くと、なんだか使う方のハードルも上がってしまう気がするが、使ってみるとその逆。アイロンが苦手な人にこそお勧めしたい1台だ。

 アイロンは通常、かけ面を使って、生地をプレス(押す)してシワを伸ばしていく。このプレス作業が難しいのだ。衣類にシワが寄った状態で使うと、シワにまでクセが付いてしまうし、一度クセが付いてしまうと今度はそれを取るのが大変。

 イージープレシングは、スチームで衣類の生地の奥まで水分を浸透させるため、イージープレシングという名前の通り、簡単にシワが取れる。

 かけ面を使ってのプレスが苦手なら、アイロン台の上に衣類を広げて、上からスチームを噴射、そのあと手でシワを伸ばすようにすればそれなりにきれいになる。一度この大量のスチームに慣れてしまうと、普通のアイロンには戻れなくなるほどの便利さがある。スチームですいすいとシワが取れていくので、使っていて楽しいと感じるくらいだ。

 本格的な製品なので、たまにしか使わないという人よりも、日常的にアイロンを使うという人向き。本体サイズや価格だけを見ると、ハードルが高いかもしれないが、構造に裏打ちされた使いやすさがある。





2011年1月28日 00:00