家電製品ミニレビュー
タイガー「ハイブリッド式マイコン加湿器 ATA-S500」
タイガー魔法瓶「ハイブリッド式マイコン加湿器 ATA-S500」 |
冬に活躍する家電といえば、電気ストーブやファンヒーターといった暖房器具がまず思いつくが、個人的には加湿器を挙げたい。空気が乾いてノドが荒れがちなこの季節も、加湿器を付けていれば、ノドはもちろん、くちびるや肌の乾燥も防ぐことができる。インドア派には欠かせない家電だ。
そこで今回は、昨年11月から使っているタイガー魔法瓶のハイブリッド式加湿器「ハイブリッド式マイコン加湿器 ATA-S500」について、レビューで紹介しよう。
メーカー | タイガー魔法瓶 |
製品名 | ハイブリッド式マイコン加湿器 |
品番 | ATA-S500 |
希望小売価格 | 31,500円 |
購入店舗 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 13,049円 |
■敢えて加湿器単体を選んだ理由
本体サイズは322×195×322mm(幅×奥行き×高さ)。部屋の隅に置いておけば、さほど邪魔になることはない |
このATA-S500を選んだ理由は3つある。まず1つ目が、サイズと価格がお手頃な点。本体サイズは322×195×322mm(幅×奥行き×高さ)と、1時間当たりの加湿量が500mlのタイプとしては比較的コンパクト。実売価格の1万3千円はもう少し安くてもいいかもしれないが、妥当なラインだ。
最近では、空気清浄機に加湿機能を搭載した加湿空気清浄機が流行っているが、価格は3万円以上と高額で、本体サイズも大型という弱点がある。本製品は、加湿のみの単機能ではあるが、加湿空気清浄機よりも安価で省スペースというメリットがある。適用床面積は8.5畳(木造和室の場合)で、狭い我が家には恥ずかしながらピッタリだ。
2つめが、加湿フィルターが樹脂製で、繰り返し使える点。以前使っていた加湿器では、加湿フィルターの手入れを怠ってしまったせいでダメにしてしまい、わざわざわ買い直さなければならないことが何度かあった。しかし本製品なら、例え水アカが溜まったとしても洗えば元通りにできるので、シーズン毎に改めて買い直す必要はない。
3つ目は、本体内に風を取り込む吸込口に、ウイルスの抑制効果があるという「ダチョウ抗体フィルター」が付いている点。どんな効果があるのか未知数だが、空気清浄機っぽい効果があるかもしれない、という淡い期待を込めて購入した。
加湿用のフィルターは、繰り返し使えるディスク式。手入れをしていれば、シーズン毎に購入しなおす必要はない | 本体の吸気口に付けるダチョウ抗体フィルター。キレイな空気で加湿できるという |
■加湿はパワフル。2時間で湿度は20%台から40%台に
到着した本体をナマで見ると、サイズ感は小さくもないが大きくもなく“ちょうど良い”といったところ。カラーは赤のみだが、ハデハデしいという印象はない。
使用方法は、容量3Lの水タンクに水道水を入れ、本体上部のボタンを押して運転がスタートするというもの。加湿方式は、ヒーターによる温風を加湿用のフィルターに当て、蒸発した湿った空気で部屋を加湿する「ハイブリッド式」。吹き出す風は生ぬるく、白い蒸気も見えないが、たとえぶつかって倒しても、熱湯がこぼれないというメリットがある。
加湿用のフィルターは、円形のディスクを50枚重ねたもの。デスクは直径が約10cmほどで、8cmサイズのCDと12cmサイズのCDの中間ぐらいだ。加湿用フィルターにディスク型を採用する機種は特に珍しくはないが、これまでは布タイプのフィルターを主に使ってきたため、「こんなので大丈夫かなー」と思ってしまった。このディスクが回転して水をすくい上げ、そこに温風が当たり蒸発するという仕組みだ。
操作パネル。運転モードは中央の黒いボタンで切り換える | 水タンクは容量3L。開口部が広いため、手が内部に簡単に入る | ATA-S500の加湿フィルターは、円形のディスクを50枚集めたもの。写真は未使用時 |
まずは使ってみよう。フィルターとタンクをセットし、電源ボタンで「連続運転」を選択。「ピーン」というシグナル音が鳴り、約30秒後に、「ブオー」という強い風の吹き出し音とともに、運転がスタートした。
連続運転中の湿度の変化。最初は23%だったが、2時間後には42%、3時間後は44%となった。室温が上がっているが、加湿器以外の空調はしていない |
すると、部屋の湿度はどんどん上がっていく。スタート時の湿度はたった23%だったが、30分毎に31%→36%→39%→42%と、順調に数字を伸ばしていき、3時間後には44%となった(部屋は約6畳)。この頃になると、ノドの乾きなどはほとんど感じられなかった。しっかりと加湿ができたといえそうだ。
しかしこの連続運転だと、風の勢いが強すぎるせいか、テレビの音がやや聞き取り辛くなった。運転音は最大で42dBらしいが、これは洗濯機の脱水や乾燥時の音に近い。そこで、風量を弱めてヒーターもOFFにする「ひかえめ」モードに切り換えると、テレビの音が聞き取りやすくなった(運転音は最大29dBとのこと)。当然、連続運転よりも加湿量は落ちるが、静かさを重視する場面では、ひかえめモードにしておくのが良いだろう。
連続加湿時の風のようす。それなりに音がするため、テレビの音が聞き取りづらくなるが、その場合は「ひかえめ」に設定するとよい(動画後半) |
運転モードにはこのほか「標準」「高め」もある。「標準」は現在の湿度によって風量の強/弱、ヒーターの入/切を切り替え、「高め」は標準よりもやや高めに湿度を調節するというもの。いずれも、湿度が高くなりすぎると、自動で運転をストップする“おまかせ運転”となる。連続運転だと約6時間で運転が切れるので、就寝時など長く運転させたい場合は、「ひかえめ」「標準」あたりにセットしておくと便利だ。
なお、タンクが空になったときには、ボタンを押す際の「ピーン」という音が繰り返される。この音はかなり大きく、音量の調節はできないので、同じ部屋に居るならば、気付かないことはないだろう。ただし、夜中にこの音で目が覚めることもあったので、夜中に利用する際は、オフタイマーやおまかせ運転モードを駆使して水切れが起こらないように調節したい。
タンクの水が切れた場合は、「ピーン」という音が繰り返される |
■吸い込む空気はしっかりキレイにするダチョウ抗体フィルター&プレフィルター
ダチョウ抗体フィルターは、最初は写真のような袋に入っている |
ここで、本製品の特徴のひとつである「ダチョウ抗体フィルター」について触れよう。本製品に付属するダチョウ抗体フィルターとは、ウイルスの活動の効果を抑制する「ダチョウ抗体」を染み込ませたフィルターのこと。このフィルターを吸気口に設けることで、きれいな空気で加湿できるという。
この「ダチョウ抗体」とは、無菌化されたウイルスをダチョウに注入し、そのダチョウから生まれた卵に含まれるウイルスの抗体のこと。ダチョウなど鳥類には、雛鳥を外界の病原体から守る「受動免疫システム」があり、そのシステムを利用してできたフィルターというわけだ。
……と言われても、効果のほどは不明。確かにこの加湿器を使ってから風邪は一切引いていないが、それは加湿器で湿度を上げている効果も大きいだろう。また、漠然と「ウイルスに効く」と言われても、それが何ウイルスを指しているのかは、取扱説明書では書かれていない。効果についてピンと来ない、というのが正直な感想だ。
しかしこのフィルター、加湿時に使用する空気の汚れを濾し取っているということだけは、確実に言える。というのも、使ってから2カ月ほど経ったフィルターを見ると、ダチョウ抗体フィルターと、その外側にあるプレフィルターに、ホコリがギッシリ付いている。ダチョウ抗体フィルターに触れると、小さな粉がバフッと舞い上がるのが確認できた。部屋中の空気を清浄するとまではいかないが、少なくとも、吸い込んだ空気については、キレイにしているということは言えるだろう。
使用開始から2カ月後のダチョウ抗体フィルター。見た目ではそこまで汚れてはいないが、指で触ると、粉が舞い上がる | ダチョウ抗体フィルターの外側にあるプレフィルター。ホコリの跡が残っている |
■加湿フィルターのメンテナンスは浸け置き洗いだけでもやっておきたい
さて、加湿器で問題なのがメンテナンス性。水道水に含まれるカルキ成分が水アカとなり、フィルターにビッシリ付いて目詰まりが発生、交換期限になっていないのに加湿フィルターを買いなおすハメに……なんて経験をした人は、私を含め多いハズだ。
本製品は冒頭でも述べた通り、加湿フィルターは樹脂製で、丸洗いすれば交換が不要。そのためランニングコストも不要という。では、実際に丸洗いをしてみよう。なお本製品では、フィルターや水受け皿といった水垢が溜まりやすい部分は、週2回の手入れが必要としている。しかし、忙しくてそこまで手入れができない人も多いと思われるので、今回は使用開始から2カ月の間、手入れをまったくせずに使い続けた。
本体内の加湿フィルターを見ると、50枚のディスクの半分くらいに、ディスク外周部まで水アカが発生しているのが分かる。また、水受け皿にも水アカのカスが漂っている。これらは、手入れを放置すると、性能低下や悪臭の元になるという。
使用開始から2カ月、何もメンテナンスしなかった状態の加湿フィルター。左半分の色が変わっている部分に、水アカが溜まっている | 加湿フィルターを載せる水受けの皿にも、水アカのカスが落ちている。放置すると、性能低下や悪臭の元になるらしい |
さっそく手入れに移ろう。加湿フィルターは、水かぬるま湯に入れて振り洗いをする。それでも落ちない場合は、ディスクを1枚ずつ外して、クエン酸を入れて浸け置きをしたり、歯ブラシでこすり落とすとのことだ。
しかし、水アカはディスク内部の凹凸にも入り込んでおり、1枚1枚歯ブラシで磨くのはかなりの苦労だ。個人的には台所用のスポンジの方が、ディスク全体が洗えて便利に感じた。また、漬け置きするだけでも水アカは意外と落ちた。水受け皿や水タンクは、すすぎ洗いとスポンジ洗いでOK。水タンクは開口部が広いため、手はスッポリ入る。
ただ、やはり放置した期間が長かったせいか、水アカはひとつずつゴシゴシと洗わなければ、なかなか落ちてくれない。完璧に汚れを落とす必要はないが、2カ月も放置するのではなく、コンスタントに手入れをしておいた方が良かったと、今さらながら後悔している。
基本は加湿フィルター丸ごとの浸け置き | それでも汚れが取れない場合は、写真のようにディスクを1枚ずつ剥がして洗う |
ディスクはご覧の通り水アカが付着している | ディスクをすべてバラした後、さらに浸け置きをし、ブラシでゴシゴシと洗う |
掃除機でホコリを吸い込んだ後のプレフィルター。見違えるようにキレイになった |
ダチョウ抗体フィルターとプレフィルターの手入れは、フィルターユニットを取り出して分解し、それぞれを掃除機で吸い込むだけ。ただし、ダチョウ抗体は開封から約半年で抗体の効果が薄れるため、次のシーズンは別途購入する必要があるらしい(希望小売価格は1,470円)。加湿フィルターのコストはかからないのに、別のフィルターでお金がかかってしまうのは、もったいないと感じる。
まあ、前述の通りプレフィルターとダチョウ抗体フィルターは、掃除機で手軽にメンテナンスできるので、ダチョウ抗体の効果を重視しない人は、そのまま使い続けるのもアリかもしれない。説明書には、ダチョウ抗体フィルターが寿命を迎えても、加湿能力に支障はないとしている。
■加湿器や空気清浄機を持っていない人に、とりあえずの1台として
タイガーの加湿器「ATA-S500」について一通り見てきたが、手頃なサイズと価格、抗ウイルスを謳うフィルター、ランニングコスト不要の加湿フィルターという点を考慮すると、加湿器単体としては十分な機能を備えているといえる。
細かいことを言うと、本体に持ち運び用のハンドルが無いため、移動はやや面倒。一応、本体底部には持ち手部分はあるが、「普段は居間で、就寝時はベッドルームで」といった使い方には向かないかもしれない。どちらかというと、「部屋のこのスペースにずっと置いていたい」というシーンにこそ、ピッタリ当てはまる。
最後になったが、消費電力は最大でも435W。さほど電気を食うわけではないが、暖房器具やドライヤーなど1,000W以上を使う器具と同一のタップで使う際には、上限の1,500Wを超える恐れがあるのでご注意いただきたい。
この正月は自宅で過ごすことが多かったが、この加湿器があったおかげで、ノドの荒れや風邪などを気にすることなく、快適に過ごすことができた。まだ空気清浄機も加湿器を置いていない部屋や、加湿空気清浄機を買うほど部屋が大きくない場合には、「とりあえず」の1台としてお勧めしたい。
2011年1月7日 00:00