家電製品ミニレビュー

オムロン「HEM-642」

~3,000円台の手頃な手首式血圧計の実用度
by 伊達 浩二
オムロン「HEM-642」。製品パッケージ

 ヘルスケア製品の中に、血圧計というジャンルがある。年齢を問わずよく使われる体組成計や体重計と異なり、中年以上専用というイメージがあり、40歳以下の人にはあまり興味が持てない製品かもしれない。

 ただし、中年かつ太り気味という私にとっては、気になるというか、気にせざるを得ないアイテムなのだ。高血圧は、代表的な生活習慣病であり、「肥満」「糖尿病」「高脂血症」「高血圧」の4つが揃うと、死の四重奏と呼ばれ、動脈硬化や心筋梗塞への道を一直線へ進むことになる。

 しかし、血圧の測定はなかなか生活習慣にするのが難しい。

 いま持っている血圧計は、贈答品のカタログショッピングでいただいたものだ。上腕式と呼ばれるタイプで、本体は据え置き型で大きい。机の上に置きっぱなしにできないので、使うたびに戸棚から出し入れする必要がある。上腕式は、「カフ」と呼ばれる腕帯をヒジの上の部分に巻き付けて測定するのだが、本体内にしまわれているカフを毎回取り出して、セットする必要がある。最初のうちは面白がって使っていたのだが、セットアップが面倒で、いつの間にか使わなくなってしまっている。

 今回、試したのは、オムロン「HEM-642」という手首式の血圧計だ。パッケージは上腕式に比べるとずっと小さい。購入価格は3,000円を切っている。機能を最小限にとどめた入門用機種という位置づけの製品だ。あまり店頭では見かけない機種で、通販やギフト用のルートで販売されているらしい。


メーカーオムロン
製品名HEM-642
希望小売価格オープンプライス
購入場所楽天市場
購入価格2,980円

 手首式は、カフが本体と一体になっており、腕時計のように装着する。本体は腕時計を二回り大きくしたぐらいある。それでも、上腕式に比べるとずっと小さい。付属の専用ケースに入れておけば、手近な場所に出しっぱなしにしておいても邪魔にならないぐらいだ。

梱包物一覧本体。付属の単四乾電池と比べると大きさがわかる付属のケース

 まず、付属の単四乾電池2本を入れる。1回の電池交換で約300回計測できるという。

 次に日時をセットする。最近の製品には珍しく、時刻設定の際のボタンは「進む」だけで、「戻る」ボタンがない。つまり、午前10時にセットしたいのに、1回多く押してしまい、午前11時になってしまったら、もう一回りする必要がある。ボタンを押しっぱなしにしておくと、速く進む機能はあるので、すごく時間がかかるわけではないが、ちょっと面倒だ。

左の上腕式血圧計と比べると小さい本体脇に電池を入れる。カフの形もよくわかる

 では、使ってみよう。まず、左手の手のひらを上に向ける。血圧計本体を左手の手首に置き、カフの弾力のある部分を手首にはめる。右手でカフを引っ張りながら巻き付け、マジックテープで固定する。2~3回試すと、慣れてピッチリ固定できる。カフは、ちょっと余った形になるが、取扱説明書によれば、これで良いのだそうだ。

 姿勢は、イスに座って背筋を伸ばす。左手は、机にヒジをつける。そして、血圧計が心臓の位置にくるようにヒジを曲げる。血圧計の位置が心臓に合わせることがとても重要だという。

 何回か深呼吸をして、落ち着いたあとで、普通の呼吸に戻して測定する。左手は握ったりせず、脱力しておく。

 「測定」ボタンを押すと、空気圧でカフが締まっていく。血圧測定に慣れていないと、誰かに手首を握られたようで、とても怖い。また、軽いエンジン音のような空気ポンプの音がずっと鳴り続ける。自分以外の誰かに使わせるときは、あらかじめ説明しておこう。「測定」ボタンをもう一度押せば、いつでも計測は中止できると教えておいた方が安心するだろう。

 ある程度、カフが締まったところで、測定が終了して、カフがゆるむ。正常に測定できていれば、最高血圧値と最低血圧値が表示される。交互に脈拍数も表示される。

手首から、指1本分空けたところに固定する測定した血圧の表示結果。135と86という数字は正常高値と言って高血圧症ぎりぎりしばらく待つと脈拍数が表示され、血圧と交互に表示される

 計測した結果は最新の21回分が保存されており、メモリスイッチを押すことで確認できる。計測データを、血圧計以外の機器に転送する機能はない。

 使い始めの数回は、カフの固定が緩かったり、血圧計の位置が心臓より低かったりして、予想外の測定値が出ることもあった。しかし、5~6回計って、コツを覚えると安定して計測できるようになった。正しい姿勢で計測されていれば、手元にあった上腕式血圧計に近い計測値が得られた。


測定の様子。手首からモーター音がして、手首が締まるので、初めて計測するときは緊張する。撮影のために、手の位置を心臓よりも下げているため、計測値が高めに出ている

 この血圧計の利点を挙げると、価格が安いことと、機能が少なく操作が簡単という点だ。取扱説明書も判型は小さいが、イラストもわかりやすく、操作に迷うことはなかった。繰り返しになるが、手首式のため、小型で場所を取らないことと、設置が簡単なことも重要だ。もちろん、正確さは上腕式血圧計には及ばないが、毎日の健康チェックを確実に行なうという点では、手首式のメリットは大きい。

 欠点は、乾電池を交換すると日付と時刻を忘れてしまうことだ。コストの関係で、バックアップ用のボタン電池を省略しているためと思われる。日付と時刻設定は、この手の機器に慣れていないと面倒に感じるだろう。例えば、両親にプレゼントするような時は、ちょっと考えた方が良い。電池交換のたびに日付をセットしてあげる必要があるかもしれない。

 また、手首式血圧計は、血圧計が心臓の位置に合っていることが重要だ。上位機種では、正しい位置を光や音で知らせてくれる機能を備えている。血圧測定に慣れていな高齢者には、そういう機能が有効だろう。

 血圧計は、自分で進んで購入するものではなく、健康診断などで高血圧の傾向を注意されて、初めて必要性を感じる製品だ。それだけに、使い続ける熱意を抱きにくい。とりあえず、少しでも抵抗を減らして、毎日血圧を測る習慣をつけるための機器として、手首式血圧計は推薦できる。嫌々使い始める機器かもしれないが、毎日測っているうちに、自分の測定値の傾向などが分かっていく楽しみもある。自分の体と対話し、自分を理解するための方法の1つとして、ぜひ使いこなしてほしい。




2010年4月6日 00:00