家電ミニレビュー

冷房が苦手なら、スマホで全操作できるLevoitのタワーファンがいいかも

アプリで制御できる「Levoit Classic 42インチスマートタワーファン」

2023年の7月は観測史上もっとも暑いとされていたが、2024年の7月はさらにその記録を更新した。この暑さは8月に入っても衰えることなく、記録的な暑さが長引くといわれている。筆者は比較的冷房の冷えには強い方だが、エアコンが苦手という人は、寝苦しい夜は大変だろうと思う。

そうした方々への情報として以前「冷風扇」をご紹介したことがあるが、今回はタワー型ファンをご紹介したい。

Levoit(レボイト) Classic 42インチスマートタワーファン(以下スマートタワーファン)は、米国VeSync社が新規投入するシリーズ。VeSyncは2012年創業の小型家電を得意とするメーカーで、健康家電の「Etekcity」、キッチン家電の「COSORI」、空調や季節家電の「Levoit」の3ブランドを展開している。

特徴は多くの製品がIoT化されており、1つのプラットフォームアプリ「VeSync」でコントロール可能なことだ。今回ご紹介するスマートタワーファンも同様である。価格は16,880円。姉妹機に36インチモデルもあるが、こちらはアプリ非対応だ。

今回はデモ機をお借りして、自宅で使ってみた。

場所も取らず、かなり軽量

モデル名の42インチというのは本体の高さを表しており、メートル法に直すと約107cmということになる。直径約17cmの円筒系で、足もと部分だけ直径約33cmのスタンドになっている。

重量は4.2kgで、背面の取っ手部分に手を突っ込んで簡単に移動できる。電源はACアダプタで、消費電力は4Wから28W。おそらくACアダプタの交換だけでワールドワイド対応しているということだろう。風量は1から12までの12段階が選択できる。

背面のリモコン収納部
リモコンを外すと持ち運び用の取っ手になる

風は円筒系のシロッコファンが回転する仕組みで、背面カバーを開けてファンをガバッと外して洗うことができるので、掃除も簡単だ。前面には風の上下角を決めるフィンも付けられており、手動で角度が決められる。

ネジを2つ外すだけでファンを取り外せる

首振りも対応しており、角度は90度だ。この手のファンは吹き出し口前面のフィン部分が動いて風の角度を変えるものが多いが、本機はボディ全体が回転する機構となっている。

上下方向にも風向きが調整できる

天面にタッチ式のボタンがあり、基本的な操作はここで可能だ。付属のリモコンでも同じ操作ができる。前面にディスプレイがあり、気温またはファン速度のどちらかが選択できる。昨今はあまり室内に温度計などを設置していない人も多いと思うが、室温が常時わかるのは体調管理の上でも重要だ。

天面はタッチ式のボタンになっている
リモコンでも同じ操作ができる
前面にディスプレイ

動作モードはノーマル、ターボ、自動、アドバンストスリープの4つがある。基本的にはファン速度を制御するだけなのだが、自動およびアドバンストスリープは、室温に応じてファン速度を自動で調整する。

独自の「VeSync」アプリで細かいコントロールが可能

見た目以上のパワー

今回はスマートタワーファンをお借りして、1週間ほど使ってみた。本機は基本的には扇風機であり、風が体に当たっていればそれなりに涼しくは感じるが、冷風扇のように気温を下げる機能はない。昨今の暑さを考えれば、このファンだけで凌げるということは考えず、エアコンと組み合わせて使用するべき製品だろう。

一般の羽根が回転するタイプの扇風機と違うのは、風の出方の指向性が高いということである。どちらかといえば、エアサーキュレータに特性が近いように思える。つまりエアコンの冷風を遠くまで届けるとか、エアコンの吹き出し口では対応できないような角度に変えて送風するといった使い方に向いている。

風の到達距離は、最大パワーの12で7mとなっている。一般的な六畳間は長辺がだいたい4m弱なので、隣の部屋ぐらいまでは楽に送風できるパワーがあるということである。実際に筆者の仕事部屋は、隣のリビングのエアコンで冷やされた空気を送風することで賄っているが、本機をリビングに置いて仕事部屋に送風させたところ、室温が3度下がった。これまで冷風扇オンリーではせいぜい温度が1度ぐらい下がる程度だったので、これはかなりの効果だ。

逆に室温の高い状況でこのファンを使用しても、熱い空気をただひたすら吹き付けるだけなので、風が当たっていてもそれほど涼しくは感じられない。

本機の特徴である、スマホでのコントロールを見ていこう。リモコンで操作できる機能が一通り使えるのはもちろんだが、アドバンスドスリープ機能に関しては、2つのモードから選択できる。これはリモコンや本体パネルからは操作できないところだ。

温度変化に対応したファン速度の履歴も確認できる
アドバンスドスリープモードは2つのタイプから選択

もう一つの強みは、スケジュールが組めるということである。決まった曜日の決まった時間に特定のモードをON/OFFできる。休日や出勤日に合わせて調整できるというわけだ。

動作スケジュールも設定できる

ただ繰り返すようだが、本機では温度のコントロールはできないので、エアコンのタイマー機能と組み合わせる必要がある。だが残念ながら「VeSync」アプリではエアコンは制御できない(そもそもVeSyncではエアコンを作っていない)ので、IoT的に連動できるには至らない。

IoT化という点では、Amazon AlexaやGoogle Homeの音声コマンドには対応する。どちらかでスマートホーム化しているご家庭では、ホームオートメーションの一部として動かすことは可能だ。

スマートスピーカー経由でボイスコマンドにも対応

若干割高だがメリットも多い

一般的にタワー型ファンの平均価格は、だいたい7,000〜8,000円といったところではないだろうか。本機はその点では割高ではあるが、多彩な動作モードとスマホ対応がポイントとなる。

特に睡眠時は、温度を監視して自動的に風量を制御するアドバンスドスリープモードがあり、エアコンの冷えすぎによる寝冷え対策にもなる。エアコンの風を直接受けるよりも、インテリジェンスな温度管理が可能だ。

個人的には、ここまで色々制御できるのであれば、首振り角度も任意に設定できるとよかっただろう。90度固定は、寝ながら使うには若干角度が広すぎるように思う。

独自のシロッコファンによる風は、独特の自然なうねりがあり、一定の風量が吹き続けるという感じが少ない。この点も評価できるところだ。また地味なところでは、サイレントモードがあり、モードや風量を変更したときの「ピッ」という動作音を消せる。夜中にモードを変更するときなど、家族を起こさずに操作できるのはありがたい。

同社としても初のファン製品ということで、連携できる製品がまだないところは残念だが、今後の展開にも期待したい。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。