家電製品レビュー

日本の家に合うのは扇風機? サーキュレーター? 答えは「扇風機としても使えるサーキュレーター」だ!

アイリスオーヤマ「サーキュレーター扇風機」(KSF-DCV181T)~30畳モデル。~24畳までの小さく安いモデルもある

「ニッチだけど便利な家電があればいいな!」という欲求に、素早く応えて製品化するアイリスオーヤマ。その機動性とアイディアに加え、お値ごろ感に驚かされる方も多いだろう。

今回まさに、その代表例! 「サーキュレーター扇風機」をご紹介する。

このモデル、昨年から店頭に並んでいるのを見たことがある人もいるかも知れない。でもここで紹介するのは、新製品で音声操作できる「サーキュレーター扇風機」だ。他のアイリスオーヤマ製品の音声操作家電と同じ(一部製品除く)で、OK,Googleなどと話しかけるスマートスピーカーは不要。買ったその日から、面倒な設定なし。本体だけで音声操作ができる優れものだ。直販サイトでの価格は19,800円。

まずは結論! このサーキュレーターがオススメの家庭とは?

このサーキュレーターと扇風機の間を行くコイツは、機能云々を説明するより、まずこんな部屋向けと提示したほうが、話が早いだろう。

みなさんは、こんな事例に当てはまらないか「あるある」をチェックして欲しい。

・冷房時の電気代を節約したい!
【冷房時】横に向けて首振り

冷房時に風の流れを作ることで、清涼感をアップ。風があるので設定温度を2℃ほど上げても、体感温度が変わらないため、電気代の節約ができる。

エアコンの風が届かない場所に気流を作ることで清涼感アップ。エアコンの設定温度が下げられるので電気代節約に

・リビングの冷暖房の空気がキッチンに届かない!
【冷暖房時】横向き首振り固定

キッチンまで冷気や暖気が届かない場合は、たとえば廊下に本機を置いて空気の流れを変えると、快適なキッチンに。また揚げ物などをしてキッチンが暑くなったら、外に向けて送風して換気したり、キッチン天井付近の熱気をリビングに送り出し、冷気を誘い込むことも。

キッチンの入り口に置いて、LDの冷気や暖気を送り込む

・部屋がL字、家具の影になり空気のよどむところができる
【冷暖房時】上下左右首振りで部屋全体の空気を攪拌

部屋の形が複雑だったり、家具がエアコンの風の流れを阻害してしまう場合は、部屋の見通しが利くところに本機を置いて、上下左右に気流を振ると、空気のよどみがなくなり室温が均一に。

L字の部屋などは角に設置して空気を隅々まで送る

・冬場足元が寒いところができてしまう
【暖房時】上向き固定で左右首振り

できるだけエアコンの対角線(反対側)に設置して、首を上向き固定に。これで部屋の上部に溜まる暖気を部屋全体に攪拌し、部分的に寒い場所にも暖気をまわす。

エアコンの対角線状に設置して部屋全体の空気を攪拌

・効率的に換気したい!
窓の外に向けて固定

ベストは風上と風下の窓を全開にして換気したいところ。でも都市近郊だとなかなか、そうは行かない場合もあるので、本機を使って換気を。本機を窓の近くに据えて、外に向けて首振り固定で送風。これでサーキュレーター部分から排気、窓の上部から吸気され、効率的に換気可能に。

窓の外に向けて換気用にも使える

・エアコンの衣類乾燥モードを使いたいが風が当たらない!
エアコンの風を衣類に向けて

エアコンはたいてい南側の左右どちらかの壁に設置されているのが日本のご家庭の大部分。でもこれだと衣類を部屋干ししても、エアコンの乾いた空気が当たらない。とくにカーテンレールに洗濯物をかけているご家庭。そんなときは、エアコンの風をサーキュレーターで衣類に向けてあげると、素早く乾燥が可能に。

エアコンの部屋干しモードを使う場合は、エアコンから出てくる乾燥した空気を洗濯物に当てるようにする

そもそもサーキュレーターと扇風機って何が違うの?

ワイドショーなどで僕が説明させてもらうときは「サーキュレーターも扇風機も同じモン!」って言っちゃってます(笑)。でも正確には違うの! ごめんなさい! テレビでそう言っちゃったのは、視聴者が40歳以上の主婦の方で、みなさん「今晩の献立何しようかしら? 」ということで頭がいっぱいのところに、細かいことを説明すると混乱しちゃうから。でも記事なら「ながら」の方は少ないので、きちんと説明できる。テレビって不憫な媒体……。

そもそもメーカー各社さんが、サーキュレーターと扇風機を分けているのは、それぞれに違いがあるから。そりゃ当然!

扇風機

ご存知の通り扇風機は、風を送る機械。その意味ではサーキュレーターと同じだが、できるだけ送った風が上下左右に広がるようにしているのが特徴だ。

つまりできるだけ全身に風が拡散するように、今の扇風機は設計されている。なぜなら自然の風は、顔だけじゃなく全身をなでるようにスゥーっと通って涼しいから。だから扇風機の羽の部分は、床から1mぐらいの高さにある。これで上下左右に1mずつぐらい広げて、全身に風を送っている。

一般的な扇風機の風の流れを、スモークを使って可視化したところ

とはいえ普通のご家庭のLDKなら、扇風機でも十分に空気を攪拌できるので、サーキュレーターとしても使えるというわけだ。

サーキュレーター

扇風機との大きな差は、その羽の形状にある。最近の扇風機は、羽の枚数が7,8枚あるのはザラで、内側と外側で2重になっているものすらある。しかしサーキュレーターは、船のスクリューのような羽3,4枚が普通だ。この「船のスクリュー」というのがポイント。

船は推進力を効率よく得るために、水を強く細く遠くまで、かき出すようになっている。サーキュレーターも同様で、空気を強く細く遠くまで飛ばすのだ。さらに部屋の空気をより循環させるために、床スレスレの高さに設置して斜め上の天井に向けるのが特徴だ。

サーキュレーターの風の流れは、細く遠くに飛ばすこと

このように細く遠くに風や水を飛ばすには「旋回流」という、ひねりを加えた流れが適している。スクリューは自然にこの旋回流を作り出すが、本機はさらにグリルにも渦巻きをつけているので、より旋回させて、細く遠くまで飛ばすようになっている。ちなみに扇風機のグリルの渦巻きは、旋回流と反対方向の渦になっていて、旋回する流れを打ち消すようになっている。

両者にはこのような違いがあるが、浴びていて気持ちがいいのは扇風機の面の風。旋回流のサーキュレーターは、かなり離さないと全身に当たるほど風が広がらない。つまりサーキュレーターの近くで風を浴びると、頭だけ、胸だけ、お腹だけにしか風が当たらない。全身に浴びたい場合は、上下左右に首を振るといい。

扇風機とは逆に、遠くまで空気を飛ばせるのがサーキュレーターなので、広いLDKやL字の部屋、家具でエアコンの風が遮られ、空気のよどみができているところにも、しっかり風が送れるのが特徴だ。

どっちかというと「サーキュレーターに近い扇風機」

今回紹介しているアイリスオーヤマの「サーキュレーター扇風機」は、サーキュレーターと扇風機の中間。でもその羽の形状から、風の質はサーキュレーターに近い。だから近くで風を浴びると、体の部分的にしか風が当たらない。しかも羽の数が少ないので、大きな空気の塊だボボボ! と飛んでくる感じだ。たとえて言うなら、ウチワで猛烈に扇いだような風。

アイリスオーヤマの最新式「強力コンパクトサーキュレーター 上下左右首振りタイプ」(PCF-SC15T)でも、左右90度、上下72度まで。サーキュレーターとしては、めちゃ首が振れる部類

さて一般的なサーキュレーターは、床近くにありそれほど首を振ることができない。しかし本製品は、扇風機と同じ位置にファンを持つので、さまざまな方向に首が触れるのが特徴。左右の首振りは、60、90、120度から選べ、固定することも可能。また縦方向の首振りも可能で下方向に15度~上方向に90度まで動く。

左右首振りは最大で120度
上下首振りは下に15度/上に90度で、全105度まで振れる

風は1m先から送風しても領収書が飛ばない「1」から、通常使う「4,5」、お風呂上りなどに一気に体を冷やしたい「10」の10段階ある。また風にリズムをつけたり、衣類乾燥モードでは左右に首を振るが遠くには強く、近くには弱い風を送り、衣類に対して均一の風が当たるようできる。またお休みモードでは、自動的に縦の首振りが入り、体に直接風が当たらないようにする。

操作パネル。シンプルなボタン配置で分かりやすい

また就寝時に併せて使いたいのは、入・切タイマーだ。それぞれ2・4・8時間後が設定できる。

サーキュレーターとまったく異なるのは、扇風機のようにファンの高さを変えられる点。4段階の切り替えが可能で、いちばん下にするとファンの中心が57cm、高くすると66cmになる。

扇風機と同じで、支柱の長さを変えられる

扇風機と音声操作の相性はベストマッチ!

最近はリモコンが付属する扇風機やサーキュレーターが多い。でもこのリモコン、ミント菓子の「FRISK」や「MINTIA」、シャープペンの芯のケースのように小さく薄い。だからテレビ以上にリモコンを紛失しがち。

扇風機に付属するリモコンは、なんでこんなに小さいの?
本機にはリモコンホルダが付いているので、付いていないヤツよりは「どこ行った!」とはならないハズ

でも本機はリモコンも付いているが、音声操作でも動かせるのが特徴だ。しかもスマートスピーカーは不要。本体だけで、買ったその日から音声で動かせる。だからリモコンをなくしがちな扇風機と、音声操作の相性はピッタリ。

「ねえ扇風機」か「はい! 扇風機」と声をかけると、動作の指示待ちの「ピッ!」という音がする。これに続けて、次のように声をかけると色々操作できるので便利だ。

電源を入れて、電源を消して、風量を強く、風量を弱く、上下首振り(言うごとにON/OFF切り替え)、左右首振り(言うごとに角度切り替え)、首振りを止めて、などの操作ができる。

音声操作を使ってみた

テレビをつけていると、たまに誤認識して動作指示待ちになることもあったが、それはGoogle Homeなどのようなスマートスピーカーでもよくあること。ご愛嬌で済ませたい。

また風量が多いと風の音で「ねえ扇風機」が聞こえないことがあるみたいなので、ちょっと大きい声で話してあげるといい。すると指示待ち状態では風量を少なく静かにして、扇風機が耳を澄ましてくれるところが可愛らしい。

日本のだいたいのご家庭は、サーキュレーター専用機よりコッチ

一般的なサーキュレーターは、床スレスレに置いてエアコンと反対側に設置して空気の攪拌専用に使われる。ただしこれは、絵に描いたような四角い部屋での話だ。

日本ではリビングにも家具がひしめき、狭い土地に家を建てるので部屋の形も複雑になりがち。しかもキッチンは、南側にカウンターがあり、東か西に出入り口があるので、エアコンの冷気・暖気が届かないのが普通だろう。

一般的な扇風機に比べて軽く小さいので、持ち運びにも便利。夏の暑いキッチンの救世主になるだろう

となれば、最初に挙げた例の「あるある」が多いはずだ。筆者が思うに、日本のご家庭にいちばんあったサーキュレーターが、アイリスオーヤマの「サーキュレーター扇風機」だ。

空気の攪拌だけでなく、エアコンの気流を強制的に変えたり補助したり、効率的に換気をする「Air Streamer」(エアストリーマ)としても使えるのが、この形なのだ!

首振り幅も広く、色々な用途に使える

藤山 哲人

家電の紹介やしくみ、選び方や便利な使い方などを紹介するプロの家電ライター。独自の測定器やプログラムを開発して、家電の性能を数値化(見える化)し、徹底的に使ってレビューするのをモットーとしているため「体当たり家電ライター」との異名も。 「マツコの知らない世界」(番組史上最多の5回出演)「ゴゴスマ」(生放送2回)「華大の知りたいサタデー」(生番組4回)「アッコにおまかせ」「NHKごごナマ」(生放送2回)「カンテレ ワンダー」(5回)「HBC 今ドキ!(生中継4回)」はじめ、朝や昼の情報番組に多数出演し、現在インプレスの「家電Watch」「PC Watch」やサイゾー「ビジネスジャーナル」などのWeb媒体をはじめ、毎月ABCラジオなどで連載やコーナーを持っている。 趣味は、鉄道、飛行機、バス、車の旅行や写真とシステム&構造。電子工作、プログラム。あと神社めぐり。

Facebook