片付け過ぎない片付け術
[片付け過ぎない片付け術68]片付け実例・老父の書斎を使いやすく快適に
2017年 12月 21日 06:30
年老いた両親が、若いころよりも片付けられなくなっているのを、ここ数年の帰省で目の当たりにしました。今回は、片付けの実例として、70歳を過ぎた父親の書斎を片付けたときのことをお話します。実例を通して、ほかの人の片付けられない理由を見ると、あなたも共感することがあるかもしれませんし、片付ける際のポイントからは、あなたの片付けで参考になることがあるかもしれません。今回ご紹介する父はまだ現役で仕事をしていますが、若いころよりも書類などが乱れており、本人も仕事のしにくさを感じるようになっていました。そこで、長年ビジネスマンとして活躍してきた父のプライドを保ちながら、使いやすく片付けることに重点を置いて行ないました。
「身体機能の衰え」により、片付けがおっくうに
保険関係の会社で働いていた父は、定年後、保険代理店としてお客様の保険を取り扱っています。身の回りのことは、脱いだ靴下さえも母任せの父ですが、仕事に関してはとてもきっちりとしており、会社員時代はもちろん、退職後に自宅で代理店を開いてからも、書斎のデスク周りや書棚は常に整理整頓されていました。
しかし昨年の帰省では、父が「書類の細かい字が読みにくくなり、物の出し入れも体に負担が掛かるようになってきたよ」とぼやいていました。とは言え、頭はまだまだしっかりしており、お金の計算を間違えたり、お客様との約束を忘れるようなことは決してありません。どうやら、身体機能が衰えたことで、書類を瞬時に判別したり、出した物をしまったりすることがおっくうになってきたようです。そこで父に、書斎を見せてもらいました。
困っているのは「地層のように積み上がった書類」
父の書斎は、以前のような整然さはなく、物が雑然と置かれた状態でした。「今、一番困っていることは?」と尋ねると「地層のように積み上がった書類」との答え。確かに、デスク上の書類トレー(写真左)には、すぐに必要な書類と、いつの物か分からない書類が混在していました。お客様へお渡しする大事な書類はいつも上の方へ置いているそうですが、急を要しない書類や処分してもいい書類などは下へ下へと積もってしまっています。
デスクの上以外にも、仕事関係の書類は部屋のあちこちに点在して(写真右)、「定位置」が決まっていないようです。そこで、1度全部の書類出して、「今のお客様に関する、必要な書類」「今すぐは必要ないが、期間ごとに見直したり、保管の必要がある書類」「破棄してOKな書類」の3つに分けてもらいました。
書類を分けたら「適材適所」へ
書類の整理は時間が掛かるものですが、そこは長年ビジネスマンとして働いてきた父。すぐに勘を取り戻し、みるみるうちに書類が分けられ、破棄する書類も大量に出ました。
次に、残った書類を、父の仕事の流れを聞きながら、使いやすい場所へ収めます。すぐに使う書類は、デスクへ向かっての作業で出し入れしやすいようにデスク上の書類トレーへ入れたり、クリアファイルへ挟んで立てたりしました。必要なときに見返す書類は、デスク脇の深さのある引き出しの中へ。数年間保管する書類は、出し入れの頻度が少ないので、紙袋へまとめ、部屋の奥の書棚へ立てました。それぞれ、使用頻度や父の動線に合った場所に収まったので、出し入れのストレスが格段に減りました。
趣味や思い出など「生きがい」になる物は、1番良い場所へ
書斎にはプライベートの物もありましたが、こちらも仕事の書類同様に「定位置」が決まっておらず、散らかった状態でした。ですので、こちらも「取っておきたい物」と「処分してよい物」に分けてもらいました。ゴルフや庭木の世話など趣味のもの、同窓会関係やアルバムなど、長年大切にしている物は、いつでも見ることができ、自分を励ましてくれるように、ソファに座ると正面に見える場所へ、父と一緒に飾りました。同級生が来ればサッとアルバムを出したり、ゴルフのスコアカードを見せたりと、楽しい時間を過ごせます。年老いた父にとって、仕事以外の心安らぐ時間は、「生きがい」にもつながる大切なもの。公私ともに居心地の良い書斎に変身しました。
まとめ
片付けたあと、父は「これまで自分がやってきた片付けは、ただ空間を空けるために物を動かしていただけだった。自分の動線や、使用頻度なんて考えたこともなかったよ。これは使いやすくなったね」と喜んでくれました。そして半年後再度帰省したときに書斎を見たら、半年前と変わらない状態が保たれており、安心しました。
近年話題になっている「親の片付け」にも、いろいろな方法がありますが、今回は、長年仕事に打ち込んできた父のプライドを尊重し、「捨てる・捨てない」や、収納場所などは、父自身に判断・決定してもらいました。これで、父が満足して過ごせる書斎になったと思います。ただ、身体機能はこれからも衰えていく一方なので、定期的に訪問し、見直し、サポートしていくつもりです。