走るライター南井正弘のコレはホントにスグレモノ!

ワンランク上を目指す中級ランナーにもおすすめ。ブルックス「ハイペリオン」

実際に履いて使って走ってから書く、ライターの南井正弘が「コレはホントにスグレモノ!」と太鼓判を押すスポーツアイテムを、毎週レコメンド!
ブルックスの「ハイペリオン(Hyperion)」

2020年のリリース以来、シリアスランナーの日々の練習用シューズ、中級ランナーの本番シューズとして高い評価を得てきたブルックスの「ハイペリオン テンポ」。ゴーストシリーズとともに日本におけるブルックスのベストセラーの一角を占める人気モデル。ワールドワイドで高い評価を得ており、このコラムでも2020年5月に紹介している。数々のカラーバリエーションがリリースされ、最近のランニング業界では珍しいロングセラーとなっていた。

そんな名作が遂にモデルチェンジ。その名もシンプルに「ハイペリオン(Hyperion)」として、より速い重心移動を可能とし、速さへの追及を後押しすべく、機能性のアップに成功している。

まず、窒素ガスを注入した軽量のDNAFLASHフォームをミッドソールに採用することで、グリップ性に優れたアウトソールと連動し、力強い走りを可能に。さらなるスピードアップへと導く。走行中の素早い重心移動を可能にするブルックスのラインナップにおいて最も軽量なシューズとなっている。また、足を包むアッパー部分に関しては、ワープニットとメッシュ素材を使用した新構造で、より軽量で通気性が向上している。

ミッドソールは窒素ガスを注入した軽量のDNAFLASHフォームを採用。反発性はもちろんのこと、ハイペリオン テンポより衝撃吸収性がアップしている気がした
アッパーはワープニットとメッシュ素材を使用した新構造で、より軽量で通気性が向上している

これまでに4足のハイペリオン テンポを着用してきて、「最近の速めで走れるシューズでは最も高い完成度の1足では!?」と思っていたので、心のどこかに「まだモデルチェンジしなくても……」という気持ちがあったが、実際にハイペリオンを履いて走ってみると、その考えは容易に覆された。

とにかくランナーの意思に忠実で、そのクイックな反応は、ワンランク上を目指して日々努力を重ねるランナーに最適。推進力の高さと適度な脚部の保護性能を兼ね備えており、特にアウトソールのグリップ性の高さは、ここ数年でダントツ。ランナーの脚力をロス無く路面に伝えてくれる。

アウトソールのグリップ性は特に秀逸で、ここ数年で履いたランニングシューズでトップレベル。アスファルトやコンクリートといった舗装路で最高のグリップ性を発揮する

速めのペースに向くシューズというと、クッション性を軽視しているように思うかもしれないが、このシューズにはそれは当てはまらない。DNAFLASHフォームのミッドソールは、中級以下のランナーが履いても問題ないレベルの衝撃吸収性を確保している。これにより、前モデルのハイペリオン テンポよりも履きこなせるランナーのレンジが、拡大した気がする。価格が19,800円から20,900円と値上げされたのは少し残念だが、他ブランドの大幅値上げと比較すると、値上げ幅は小さく、そのスペックアップを考慮すると許せるレベルである。

南井 正弘

フリーライター、『ランナーズパルス』編集長。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後ライターに転身。雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆している。主な著書に『人は何歳まで走れるのか?』『スニーカースタイル』『NIKE AIR BOOK』などがある。「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日走るファンランナー。ベストタイムはフルマラソンが3時間50分50秒、ハーフマラソンが1時間38分55秒。