暮らし

【ダウン症児と私43】話せない子とは、言葉以外でコミュニケーションを

福祉幼稚園で言語聴覚士の先生と個別面談をした、ユキトくんとナナさん。今回は、ユキトくんのコミュニケーション能力を引き出すために教えてもらったアドバイスを具体的にお話いただきました。先生からは、言葉以外でもコミュニケーションを行なうため、いろいろな方法を教えていただいたそうです。

 

「理解できてない」と思っているのは、誤解かも?

Q.前回の言語聴覚士の先生からのアドバイスでは、「もう1回」「まねっこ遊び」「ちょうだい、どうぞ」「たくさんほめる」の4つを続けていくことが、ユキトくんのコミュニケーション能力をアップするのに重要だということでしたが、もう少し具体的なアドバイスはありましたか?

A.はい。先生は「ユキトに対してどう接すればいいか」と、「ユキトの反応にどういう意味があるのか」を、具体的な事例をとり混ぜながら教えてくださいました。例えば、私はユキトに「もう1回?」と聞くときに、指を1本立てて聞いているのですが、ユキトが指に触ったら理解できていて、触らなかったら理解できてないと思っていました。でも先生は、ユキトがうんうんと体を動かしたり、声を出したり、ニコニコしたり、指ではなくママの違うところを触ったり、目が合ったりしたときは、それぞれの動作が「もう1回」のサインなので、きちんと受け止めて、笑顔でもう1回遊んであげればいいのだと教えてくださったのです。

 

Q.「もう1回なら、指を触ってね」と伝えていても、それは大人が決めたルールなので、ルールの分からないユキトくんは、指に触れないながらも、違う方法で「もう1回」を伝えていた可能性があるんですね。

A.そうなんです。ユキトの好きな体を使った遊び、例えばくすぐったり、高い高いを2、3回と続けたあと、これまでも指を立てて「もう1回?」と聞いてはいました。でも指に触ってくれないときは、伝わってないんだなと思っていたのです。よく考えると、指に触る以外の反応で「もう1回」を伝えてきていた可能性があったのです。

 

まねっこ遊びは、まずはママが真似をするところから

Q.ユキトくんはまだ「まねっこ遊び」や「模倣」ができなかったと思いますが、そのアドバイスはありましたか?

A.子どもは大人の真似をしていろいろなことを覚えていくので、ユキトにも「まねっこ遊び」をたくさんして欲しいと思っていました。でもそうではなくて、まずはユキトのやっていることを大人が真似する「逆模倣」から始めて、コミュニケーションの意味を覚えさせる必要があると分かりました。

ユキトは、両手におもちゃを1つずつ持ってトントンと音を出して遊ぶことが好きなので、ユキトが遊んだらママも一緒にトントンと遊びます。ユキトが声を出したら、一緒に声を出します。そうすることで、ユキトの楽しさがママに伝わっていることに気が付いてもらえると教えていただきました。

また、ユキトが声を出したら「はーい」と言ってそばへ行き、「なあに?」と話し掛けることで、「声を出したらママが来てくれるんだ」とユキトも分かるようになっていきます。そんな逆模倣を繰り返すことで、ユキトもママを模倣するようになってくるのかなと、思えるようになりました。

 

声に出して繰り返す、出来たら褒める

Q.ほかに、アドバイスはありましたか?

A.「ちょうだい、どうぞ」を、ユキトに対してまずはママがやってみる。いっぱい繰り返してやったら、ユキトに「ちょうだい、どうぞ」をしてもらう。できたら褒める。褒めるときは、「上手にできたね~」「頑張ったね~」と声に出してたくさん褒めます。このとき、名前をしっかり呼ぶことも重要なのだそうです。また、声を掛けるときは、ユキトに分りやすいように、短く声を掛けるのが良いということでした。コミュニケーション能力が発達する前は、ダラダラと長い会話は理解ができないのだそうです。

 

ダウン症の基礎知識43:楽しい繰り返しで覚えていく

コミュニケーションの能力をアップするには、繰り返しが重要ですが、その繰り返しが「楽しい」と思えるようにしてあげることが大切です。ママは、逆模倣をするときも、「ちょうだい、どうぞ」をするときも、楽しそうな顔を見せて、褒めながら続けてあげましょう。ママが疲れた顔で無表情に働き掛けたら、子どもたちも不安になってしまいます。ママ自身が心から楽しむには、リラックスタイムを持つことも重要ですよ。新しいことができたら、たくさん褒めてあげて、一緒に進んでいけることを楽しんでみてください。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。