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[今さら聞けないお金の話3]住民税・社会保険支払い、必須になる収入額

前回は「103万円の壁」「配偶者控除」「配偶者特別控除」について2018年からの変更点を含めてお伝えしました。今回は「住民税」「社会保険」についてお話します。世帯の「税金支出」を考えて時間を調整しながら働いているパートの人などは、「住民税」や「社会保険」の額も気になりますね。年末年始の休暇の間に、旦那さんと来年の働き方について話をするのにも役立つ、今さら聞きにくい「収入にかかる税金」の基本を、今回もQ&A形式でご説明していきます。

 

Q1.給料制で年収103万円以下なら、税金は0円?

前々回お話したように、給与収入が103万円以下であれば所得税は0円ですが、「住民税」は支払いが発生する場合があります。というのも、所得税の基礎控除は38万円ですが、住民税の基礎控除は33万円なので、5万円の差があります。住民税の支払額を、所得税と同じように計算すると、給与所得のみであれば「基礎控除33万円+給与所得控除65万円=98万円」を超えたところから掛かることになります。基本的な計算はこれで良いのですが、それとは別に住民税には「人的非課税」という考え方があり、一定の要件を満たせば住民税の支払いをしなくて良いとされています。「人的非課税」の項目は各地方自治体が定めていますが、全地方自治体の項目に「一定以下の所得金額の場合は住民税の納税が不要」という内容があるのです。この「一定以下の所得」の基準額を、多くの自治体が35万円としているので、その場合は収入が給与のみで100万円以下であれば住民税も掛かりません。このことを一般的に「100万円の壁」と言います。ただし、「一定以下の所得」の基準額35万円は、各自治体により異なりますので、注意しましょう。

 

Q2.住民税って、なんのために払うの?どんな収入が対象?

地方自治体が行う公共サービスの経費を、住んでいる人で分担するという考えに基づいて、収入のある住民へ収入に応じて課税される税金です。納付先により「都道府県(都道府県民税)」と「市区町村(市区町村民税)」があり、その両方を併せて住民税(個人住民税)と呼びます。

 

前年の1月1日から12月31日の収入をもとに、その年の1月1日に住んでいる住所地の市区町村役所が、都道府県民税と市区町村税を併せて課税・徴収します。個人の住民税には下記の5つのものがあり、給与収入が100万円を超えると払う必要があるのは「1.所得割」と「2.均等割」です。また各項目末尾の()内は、それぞれの納税を対応する人です。また注意したいのが、住んでいなくても事務所や家屋敷を所有していて、さらにそれらを貸し出していない場合は、その事務所や家屋敷を住所地とみなされるので、その地区での「2.均等割」が掛かります。

 

  1. 所得割:前年の所得金額に応じて課税(納税者または納税者の雇用先)
  2. 均等割:定額で課税(納税者または納税者の雇用先)
  3. 利子割:預貯金の利子等に課税(金融機関(利子の発生後に天引き)).
  4. 配当割:上場株式等の配当等及び割引債の償還差益に課税(納税者または証券会社など)
  5. 株式等譲渡所得割:源泉徴収選択口座内の株式等の譲渡益に課税(納税者または証券会社など)

 

Q3.支払う所得割、均等割は、いくら?

住民税の税率や税額は、各自治体により差があります。ここでは東京都小金井市を例に、金額を解説しましょう。

 

<平成29年度東京都・小金井市>

【所得割:税率10%】
  内訳)都民税:4%
     市区町村税:6%

【均等割:5000円】
  内訳)個人都民税:1500円
     個人市区町村税:3500円

※平成26年度から平成35年度までの間、個人住民性の均等割額は、地方自治体の防災対策に充てるために、都民税・市区町村税ともに500円ずつ加算されています

 

まず、収入額が課税対象かどうかを調べてみましょう。例えば、101万円の収入があり、また基礎控除と給与所得控除以外に引ける控除がない場合は「収入101万円-給与所得控除65万円=総所得金額36万円」となり、35万円以上なので課税対象です。

次に「所得割」ですが、これは課税所得額へ税率を掛け、税額控除がある場合はその額を引いた金額が納税額です。まずは課税対象となる所得金額ですが、これは「総所得金額36万円-基礎控除33万円=課税所得金額3万円」です。これに税率10%を掛けるので「課税所得金額3万円×税率10%=所得割3000円」となります。

これに加え、課税対象者全員が収入に関係なく一律で支払う必要がある「均等割」の5000円があるので、この場合は合計8000円の納税が必要ということになります。住民税の税額・税率は変更されることがあるので、詳しくはお住まいの市区町村役所HPで確認するか、各役所の住民税課へ問い合わせをしましょう。

 

Q4. 住民税の支払いは、どうやるの?

支払い方法は下記の2つがあります。支払いに際しては、納税額を合算して請求されます。

 

<1.普通徴収>

給与所得以外の所得者は、基本的にこの方法です。市役所から送付される「支払通知書」を使って、指定された金融機関の窓口・コンビニエンスストア・各市役所の窓口で直接支払います。1年分の税金を、一括と4期分割のどちらかを選択して払います。

 

<2.特別徴収>

給与所得者は、基本的にこの方法で支払います。また1部の公的年金支給者も、この方法を選択できます。給料か支給年金から、天引きの形で支払います。

 

◇東京都主税局<税目別メニュー><個人住民税>
http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/kojin_ju.html#kju_1

◇東京都主税局<都税Q&A><区市町村税個人住民税>
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shitsumon/sonota/index_j.htm

 

Q5.収入があると、所得税、住民税以外にも支払いが必要?

社会保険制度の保険料があります。社会保険制度は健康保険・介護保険・年金保険からなる狭義の社会保険と、労働者災害補償保険(労災保険)・雇用保険からなる労働保険に分かれています。狭義の社会保険である健康保険・介護保険・年金保険は、収入や勤務先、働き方によって加入する義務が発生するため、保険料の支払いが必要になります。また、雇用保険料は労働者にも支払義務が発生します。次の段落で詳しくご説明します。

 

Q6.いくらの収入で健康保険・介護保険・年金保険に加入?

狭義の社会保険は、収入が約130万円未満のときは扶養内に入ることができるため、主婦(主夫)の方は保険料の支払が不要です。ただし2016年10月の法改正で、勤め先の規模や働き方により、年収が約106万円でも加入義務が発生する場合が出てきました。そのため現在、支払い義務の発生する年収は、約106万円、約130万円いう2種類になっています。これを一般的に「106万円の壁」、「130万円の壁」と言います。ご自分の勤め先が、どちらなのかを下記でチェックしてみてくださいね。

 

<年収約106万円(交通費を含まない)>
以下5つの条件をすべて満たす場合は社会保険に加入する義務があります

  1. あらかじめ決められた労働時間が週20時間以上
  2. 給料が月額8万8000円以上
  3. 社会保険の被保険者が501人以上の企業に勤めている(500人未満でも会社が社会保険適用事業所であれば加入義務が発生する場合がある)
  4. 1年以上働くことが見込まれている
  5. 学生でない(夜間・定時制を除く)

 

<年収約130万円(交通費を含む)>
交通費を含まず、年収約106万円の条件1.〜5.へ当てはまらない場合

 

◇平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大) |厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/2810tekiyoukakudai/

 

Q7.雇用保険料の金額って、いくら?

一方、労災保険・雇用保険からなる労働保険は、労働者1名以上いる会社は、原則では加入義務があるため、お給料をもらっている方は基本的に加入しています。とは言え、労災保険は雇用主に全額支払義務があるため、従業員は支払不要です。そして雇用保険は、働く人と雇用主の両者に支払い義務があります。料率は上の表の通りで、この料率に交通費などを含む「賃金総額」を掛けた金額が、従業員が支払う雇用保険料です。

 

◇雇用保険料率について |厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000108634.html

 

まとめ

今回までの話に出ていた金額の壁に関して、上の表に大まかにまとめました。2018年からの働き方を考える際の参考にしてくださいね。このほか、旦那さんの会社で家族手当等の手当てがある場合は、妻の収入によりその手当が減ったり、なくなってしまう場合もあります。その基準額を「妻の年収103万円未満」としている会社も多いようですので、そのあたりも含めて、まとまった休暇の際に旦那さんとお話をしてみてはいかがでしょうか。

やよい

2級ファイナンシャルプランナー技能士、日商簿記検定2級、証券外務員二種をもつ、パート主婦。虫嫌いでお酒が大好きな旦那と、3匹の猫と、まったり暮らしています。