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【ダウン症児と私21】食事がままならないユキトくん、摂食評価外来を受診

1歳になった弟のマサトくんのヤキモチで、ユキトくんの食事タイムは毎回大わらわ。今回は、食べ物を口に入れても取り出してしまうようになってしまったユキトくんが、摂食評価外来を受診したときのお話です。普段の食事や生活のリズムを伝え、複数の職種の医師や作業療法士に食事の様子を見てもらい、必要な指導や訓練が何かを見極めてもらう検査です。

 

食事に関する困りごとを相談する窓口「摂食評価外来」

Q.弟のマサトくんが、ナナさんとユキトくんの間に入って、食事を邪魔するようになったということですが、どういう状態でしたか。

A.食事のときは、弟のマサトの食事をまず済ませて、ユキトの食事をするようにしていました。でも、ユキトに離乳食をあげようとすると、マサトが間に入って、泣きながらユキトの食事を床に落としたり、食器を持って逃げたりするのです。ユキトも毎回泣いてしまい、口の中に入れた食べ物を自分の手で取り出して、床に落としたり、服や体になすり付けるようになっていました。

さらにユキトは、食事中に自分の喉を強く押すというクセが出てきました。あまりにも強く押すので、「グルッ」という大きな音が反射で出ます。食事中に何度も何度も「グルッ」と音が出るほど自分で自分の喉を強く押すのです。これは、とても心配になりました。ユキトが2歳11カ月になったころの話です。

 

Q.病院や療育センターなどで、相談をされましたか?

A.はい。通っている遺伝子科の先生に相談したところ、摂食評価外来という食事の指導と食事内容の評価をする専門の外来を受診することになりました。9月に紹介いただきましたが、予約がいっぱいで受診できたのは12月になってからでした。

 

摂食評価外来には、事前に日常の食事や生活リズムを報告

Q.摂食評価外来の受診には、事前の準備が必要でしたか?

A.はい。外来へ行く1週間前までに、過去3日分の食事内容や時間、生活リズムなどを記入して郵送しました。下記のような内容です。

 

8:00起床、8:30朝食

ビンのベビーフードのおじやをあげようとするが2、3口しか食べず、口へ手を突っ込み出してしまう

  • おじや
  • ヨーグルト
  • プリン
  • ミルク

 

12:30昼食

私がベビーフードのおじやをあげるものの、弟がいつも通り大騒ぎ。どうしても食べなかったため、祖母の家へ預け、祖母に昼食をお願いする。

  • ベビーフードのおじや1つ100g完食(祖母宅には弟がいないので落ち着いて1ビン食べたが2個目は出してしまったとのこと)
  • プリン:2口だけ
  • ミルク

 

16:30お風呂

17:00ミルク

19:00夕食

  • ビンのベビーフード半分食べる
  • プリン
  • ヨーグルト
  • ミルク

 

20:30就寝

 

Q.プリンやヨーグルトなど、柔らかいものが多いですね

A.はい、あげすぎのような気がしていましたが、どうしてもベビーフードやおかゆを食べることができないため、やむを得ずプリンやヨーグルトをあげていました。ミルクも同じで、お茶を哺乳瓶に入れてあげても全く受け付けず水分が摂れないので、ミルクもこまめにあげていました。

 

発育状況を評価するテストを受ける

Q. 初めての摂食評価外来はどんなことをするのですか?

A.まずは、子どもの発育状況を複数の領域に分けて評価する遠城式発達検査を受けました。臨床心理士さんからユキトの普段の生活について、下記のような質問に、できるかできないかを答えるという形で行われました。

 

●移動運動
首がすわりましたか?
寝返りはできますか?

●手の運動
ガラガラを振りますか?
手を出してものを掴みますか?

●基本的習慣
ビスケットなどを1人で食べることができますか?
コップで飲めますか?

●対人関係
人の声がする方向を向きますか?
あやされると声を出して笑いますか?

●発語
泣かずに声を出しますか?
声を出して笑いますか?

●言語理解
大きな音に反応しますか?
人の声で静まりますか?

 

全ての質問に答え診察室に入ると、白衣を着た先生たちがずらっと10人くらいいました。神経科医、歯科医、看護師、臨床心理士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士が1人ずつ自己紹介をしてくれましたが、いつもと違う雰囲気にユキトは泣き出してしまいました。

 

Q.大勢の医師の前でどんなことをしたのですか?

A.まずは母子で写真を撮ったあと、食事の様子をビデオ撮影しました。いつも通り、ユキトにおじやのベビーフードをあげましたが、口に手を突っ込み出してしまいました。次にあげたヨーグルトは全部食べられました。ほかに茹でてすりつぶした野菜もあげましたが、全く食べませんでした。スープは一口だけ飲んで、あとは嫌がってしまいました。先生方が私の代わりにユキトに食べさせてみたりしましたが、全部口から出してしまいました。その間も、ユキトは自分で何度も喉を強く押して、「グルッ」といわせていました。先生からは、「食べ物を飲み込むタイミングと、喉を強く押すタイミングがずれているので、喉を押さなくても飲み込むことができている」と言われました。また、弟がヤキモチで邪魔することを相談すると、「食事の環境を変える必要がある」と言われました。

 

Q.今回の検査結果はいつ頃でるのでしょうか?

A. 摂食評価の結果は1カ月先になると言われました。また、ベビーフードのおじやは味が薄いので少し醤油やダシを入れて味付けすることと、食事中に弟と距離を取るため、祖父母にも協力を得て食事環境を変えるようにというアドバイスをいただきました。さっそく家で、ベビーフードにダシ醤油を掛けてあげると、少しずつ食べてくれたので、ホッとしました。

 

ダウン症の基礎知識21:摂食評価外来

「摂食」とは、食べ物の咀嚼から、飲み込む(嚥下)までの一連の動きのこと。摂食評価外来は、固形物を食べられない、食べ物を噛まずに丸呑みしてしまう、上手く飲み込めずにむせたり吐き出してしまうなど、障害をもつ子どもに見られる食の問題を解決するための外来です。複数の職種の医師や作業療法士が、実際に食べる様子を見て、問題点を多角的に評価し、必要に応じて追加検査や、個別の指導・訓練を提案します。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。