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【これからは予防の時代16】乳ガンリスク要因になる「体型や身長」
2016年 8月 24日 06:30
今回は、肥満と運動、身長や出生時体重が関係している「乳ガンリスク」をご説明します。肥満や運動は自分でコントロールできますが、身長や出生時体重など、自分でコントロールできない体型も乳ガンのリスクになるのです。遺伝もそうですが、自分ではコントロールできない乳ガンリスクがある方は、前回お話ししたような生活習慣などのリスク要因を極力減らし、乳ガンの発症を防ぐようにしましょう。
太れば太るほど、乳ガンになりやすい
肥満に関して言えば、閉経後の女性では、肥満が乳ガン発症リスクを増加させることは確実視されています。日本人における「肥満と乳ガン発症リスク」関連の2013年版までの調査を検討したところ、すべての研究で、肥満は閉経後の乳ガンの発症リスクを増加させるという結果でした。閉経後の肥満は、BMI24〜29で1.5倍、29以上では2.13倍と、直線的に乳ガン発症リスクが増加します。
一方閉経前の女性の肥満は、リスクを増加させる可能性がある、という調査状況です。とは言え、閉経前女性についてもBMIの増加に比例して、直線的に乳ガンが発症する傾向がありました。
閉経後の運動はよいものの、閉経前は未解明
次に、運動と乳ガン発症リスクの関係ですが、閉経後の女性では運動がリスクを低下させることはほぼ確実ですが、閉経前の女性では運動がリスク低減をするかは分かっていません。ですが、閉経に関係ない女性の集団では、週1時間程度ジョギング相当の運動を行なうと、リスクが10%低下することは分かっています。
そのとき、閉経前女性が同じ量の運動をした場合はリスクに変化がありませんが、閉経後女性の場合はリスクが3%減るということ、また、活動量が低い人よりも高い人の方がリスクが12%も減ることが分かっています。
このように、乳ガン発症リスクと運動の関係について、前向きな研究がなされているものの、閉経前女性の運動が乳ガン発症リスクを軽減させるというエビデンスは、現状まだないのです。
出生時体重が重くても、乳ガンリスクはアップ
出生時の体重が重いと、閉経前の乳ガンリスクは、ほぼ確実に増加します。1万人以上の乳ガン患者に対して行なった複数のメタアナリシス(疫学研究)の結果、出生時体重が4kg以上の女性は、3〜3.5kg以下の女性と比較して乳ガンリスクが1.12倍に増加していました。特に閉経前乳ガンでこの傾向が強いことが分かっています。
成人期の高身長も乳ガンリスク
成人期の身長も、乳ガン発症リスクと関連があることが分かっています。身長が高いほど、乳ガンリスクが増加するのです。メタアナリシスの結果、リスクは身長5cmあたりで、閉経前で4〜9%、閉経後で2〜9%増加するという研究結果が出ています。以前、エストロゲンのお話をしましたが、身長が伸ばすのはエストロゲンの働きによるためです。