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【ダウン症児と私5】泣いてばかりの、精密検査〜ダウン症確定までの1カ月

生後8日目に息子・ユキトくんが「ダウン症の可能性が高い」と告知され、不安に疑問も湧き上がるナナさん。今回は、正確な診断のために精密検査の結果を待っていた約1カ月間の出来事について、お話しを聞きました。

 

Q. 生後8日目の告知後、すぐ精密検査を受けたのですか?

最初は先生のお話に動揺してしまい、まるで他人事のように先生の声が頭へ入らなかった私ですが、先生が祖父母にも同じ説明をしているのを聞いて、「今起きていることは現実なんだ。どうしたらいいだろう」と思い始めました。そして先生からは「きちんと確定させるために遺伝子検査をしますか」と聞かれましたが、その場で申込みはせず、いったん家に帰りました。

頭のなかに「産まれたばかりの息子がダウン症だなんて」「どんな障害なんだろう」「ちゃんと成長してちゃんと学校に通い、就職できるのかな」「一生、障害に苦しみながら生きていくのか」と、次々に疑問と不安が浮かんできて、何時間も泣きました。とても息子の障害を受け入れられる状況ではありませんでしたが、ユキトの病名をはっきりさせて治療に取り組むため、旦那と二人で泣きながら遺伝子検査の書類にサインをしました。

 

Q. 精密検査を申し込んだとき、どんな気持ちでしたか?

心のなかで「検査で異常がなければいい、似たような病気で間違いだったらいい」と思いながら、次の日に遺伝子検査の手続きをしました。検査結果は1カ月後だと、看護師さんからも伝えられました。友人の看護師に電話で聞くと「心臓に穴があって筋緊張が弱い赤ちゃんは、ダウン症と考えてほぼ間違いない」と教えてくれました。やはりその言葉はすごくショックでしたが、「受け入れるしかないのかな?受け入れてみよう」と思うようになってきました。

 

Q.結果が出るまで間、ユキト君はどこにいましたか?

ユキトは、告知のあった生後8日目にNICU(新生児特定集中治療室)からGCU(継続保育治療室)へ移りました。わたしは毎日、3時間に1度おっぱいを手で絞り、スピッツという容器に入れて家の冷凍庫で保存し病室のユキトへ届けました。

ユキトも少しずつ大きくなり、ミルクの量も増えてきました。一般的に新生児はSサイズの乳首を付けた哺乳瓶で飲み始めますが、ユキトは筋肉が弱く吸う力が足りなかったため、哺乳力が弱い子用に作られた、柔らかいAサイズの乳首でゆっくりゆっくり飲んでいました。

ユキトに付き添っている1時間はいつもあっという間に過ぎ、看護師さんからおっぱい指導とマッサージケアを受けて家に帰ると、ダウン症のことを調べては泣くという毎日を繰り返していました。

 

Q. ダウン症について、どんなことをどんな風に調べましたか?

障害、病気についてや、生活面、将来のことを、主にネットで調べました。ダウン症についていろんなことを、何時間も調べては泣き、頑張っている家族やダウン症の子たちの記事やブログなどを見ては励まされ、また調べて、また泣いて……と繰り返していました。

 

Q. ご主人も一緒にGCUに行くことはありましたか?

はい。GCUには、始めての子育てで、分からないこと、戸惑うことが多い家族向けに、院内外泊ができる「ファミリールーム」という部屋が隣接していました。両親のベッド、TV、ソファーなどがあり、自宅のリビングのような部屋です。

1カ月目が近づいたある日、ここで13~17時までの4時間をユキトとパパと3人で過ごしてみることになりました。それまでユキトと1時間しか過ごせなかったので、4時間も一緒にいられるなんて本当に嬉しかったです。初めての家族3人での時間はドキドキだけど、困ったらボタンひとつですぐに看護師さんも来てくれます。

13時にファミリールームに入り、オムツ替えてミルクあげて、看護師さんにお風呂の入れ方を習って夢のような時間を過ごしました。しばらくすると先生が来て、「遺伝子検査の結果、ダウン症で間違いない」と言われました。看護師の友人に言われていたので、「ああやっぱり」と思いましたが、目の前のユキトがとてもかわいく、なんとか頑張って育てて行こうと思いました。

 

ダウン症の基礎知識5:医療と働きかけの進歩で、能力が最大化できるように

ユキトくんの心臓疾患のように、ダウン症には合併症が多いという特徴があります。しかし医療の進歩により、治療法の改善が進み、手術などの成功率も高まっています。一方、体の成長や運動能力、知的な発達がゆっくりで、最終的な到達点は人によって異なることも知られています。ゆっくりながらも発達はあるので、「ダウン症だからできない」と画一的に決めつけることなく、見守ることが重要です。また医師らによる「早期療育」などで、積極的な働きかけをすることで、子どもたちの発達の幅が広がったり、力を最大限に伸ばすことができると考えられています。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。