暮らし

【これからは予防の時代11】ガン発生のメカニズムから見た「乳ガン予防」

乳ガンの2大要因は「エストロゲン」と「家族歴」であり、前回はエストロゲンと更年期や閉経の関係性をお話しました。そこで今回は、一般的なガン発生のメカニズムをお伝えし、そこから乳ガンの予防を考えたいと思います。

 

ガンになる基本のメカニズム

「ガン」になるのは、身体の細胞が分裂のときに突然変異を起こして「ガン細胞」ができてしまうからだと、聞いたことがある人も多いでしょう。基本としてはそのとおりです。でも実際にガンが発病するには、突然変異が一定量、蓄積しなければならず、時間がかかります。ですので、ガンは子どもよりもお年寄りの方が多いのです。

 

細胞分裂の突然変異はなぜ起きる?

この細胞分裂のとき「突然変異がなぜ起きるか」ですが、細胞が分裂するときのDNA複製のミスです。通常はミスが起こると修復されるのですが、この修復がうまくいかないと突然変異が発生してしまいます。ですので、細胞分裂を促進する物質は、発ガンも促進してしまいます。

 

ガン予防の原則

ここまでのお話から分かるとおり、ガン予防の原則は、細胞の突然変異の蓄積を防ぐことです。発ガンに至らない数の遺伝子が変異した細胞では、ガンは発病しません。突然変異が、ガンになる個数に達しなければいいのです。例えば発症に7個の突然変異が必要とすると、6個までの突然変異では発症しません。現在の突然変異が4つならば、残りの3つの突然変異が起こらないように生活すればいいのです。

 

女性ホルモンとガンの関係

前回お話したとおり、女性ホルモンの「エストロゲン」は乳腺細胞の増殖を促すので、乳ガンを促進します。ですので、乳ガンの予防も治療も、初経開始時期、閉経時期、分娩回数、授乳期間、ホルモン補充療法などの、患者の女性ホルモン状況によって変化してきます。この女性ホルモンと乳ガンの関係については、次回詳しくお話する予定です。

乳ガンのエストロゲン以外の原因と予防

乳ガンの発生には、エストロゲン以外にも、遺伝、環境といった多くの因子が関与します。ですので、遺伝的に乳ガンになるリスクが高い人は、努力でできる予防を心がけましょう。具体的には、節酒、禁煙、運動、ダイエットなどです。逆に言えば、お酒、タバコ、運動不足、肥満がガンのリスクとなります。またリスクの状況に応じて、適切な時期に検診を受けることで、早期発見していくことも大切です。

 

 

高島裕一郎(医学博士)

予防医学を専門としている医師です。医療の高度化でさまざまな病気の原因がわかるようになりました。これは同時に、いろいろな病気を予防することができるようになってきたことを意味します。生活習慣病やガンなど、生活のなかで予防のできる病気と、その予防方法について、お伝えしていこうと思います。日本医師会認定産業医、日本人間ドック学会認定医。