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【ダウン症児と私2】普通じゃない我が子に絶望〜ママになる覚悟を決める

前回は、ユキトくんの出産と「新生児一過性多呼吸、筋緊張低下」と書いてある紙を見付けたところまでのお話を伺いました。今回は、ユキトくんがダウン症だという診断を聞き、子育てする覚悟を決めるまでのお話を、ナナさんの思ったことなどを交えながらお伝えします。

 

 

生後1カ月くらいまでには診断されるダウン症

最近では、ダウン症は、生後1カ月ほどで診断されることがほとんどです。現れる症状や程度は人によって異なりますが、心臓や消化器系などに異常があったり、中耳炎などの感染症を起こしやすいという、身体的な特徴があります。また、体の成長がゆっくりで、運動能力や知的発達の遅れが見られ、最終的な到達点にも個人差があります。

 

Q.その紙を見つけたときどんな気持ちになりましたか?

旦那が帰ったあとの病室で、ものすごい大きな不安感に襲われ、絶望でずっと泣いていました。時間が経つにつれて、いてもたってもいられなくなり、福岡の実家の父に電話し、すぐに新幹線で来てもらいました。そして義父母も駆け付けてくれました。

 

Q.集まったご家族とはどんな話しをされたのですか?

集まってくれた父や義父母へ、「呼吸数が多く、筋肉が弱い」と先生から言われたことを告げると、父は心配しながらも「大丈夫。呼吸は落ち着くし、筋肉は強くなるから」と言いました。

 私が泣きながら「あの子は普通の子じゃないです」と何度言っても、「何も心配いらない」「何かがあったときのために検査はするだろうけど、大丈夫だよ」としか言ってくれませんでした。

 それでも、不安は収まらず、家族だけしかいない時間外の病院のロビーに「だってあの子は普通の子じゃないもん」というわたしの叫び声が響きました。

 

Q.病名の内容はすぐに理解できましたか?

いえ、よく分かりませんでした。分からないままではいられなかったので、1人になってから、震えながらネットで検索しました。するとまず「新生児一過性多呼吸」は字の通り、一過性のもので落ち着いてくるとのことが分かりました。次に「筋緊張低下」を調べて愕然としました。

「筋肉の緊張が弱く、ふにゃふにゃとした赤ちゃん……」

「脳性麻痺、ダウン症……」

とあり、あとは知らない病名が10個くらい書かれていました。

Q.その後どうされたのですか?

泣きながら病室を飛び出し、今度は叔母に電話しました。話を聞いてくれた叔母が「分かった。どんな子供であろうと、受け入れよう」と言ってくれたことで、少しだけ落ち着き、覚悟が生まれました。

 

でも、電話を切っても落ち着かないので、今度は看護師さんに「先生に筋緊張低下と言われた」ことを相談しました。

 

Q.看護師さんからはどんなお話がありましたか?

看護師さんは「先天性の問題は誰にでも起きる可能性があるのよ。私にもナナちゃんにも、先天性の問題を抱えて産まれる可能性はあったの。たまたま、ユキトくんだっただけなのよ。誰も悪くないし、誰の責任でもない。ママとして頑張れることは、おっぱいを出してあげることだよ」と、優しく話してくれて、おっぱいが出るようにマッサージをしてくださいました。この言葉に励まされ、ママとしての1歩を踏み出す気持ちが芽生えました。

 

ダウン症の基礎知識2:早くから現れる特徴

ダウン症で現れる特徴には個人差がありますが、新生児期に多く見られる特徴がいくつかあります。

  1. おとなしくて反応が弱い
  2. お乳の飲みが悪い
  3. 頭や鼻、耳や目尻などの形に特徴があり、外見的に似ている
  4. 抱くとやわらかい

ダウン症の赤ちゃんは、自分の周囲を認識して理解することが苦手で、視力よりも聴力が弱い場合も多く、話しかけてもおとなしくて反応が弱いと感じることがあります。また筋力が弱く、首がすわるのが遅かったり、立つ、歩くなどの基本的な行動を覚えるまでに時間がかかります。しかし、認知、運動、言葉の成長は、周囲の働きかけと日々の積み重ねで伸びる力でもあるので、周りの人が積極的に関わることが赤ちゃんの力を引き出し、ゆっくりでも彼らの世界を広げていくことにつながります。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。