老師オグチの家電カンフー

耳と声に自信がない人のためのイヤホン選び

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
イヤホンをJabra「Elite 7 Pro」に乗り換え。価格は27,280円。連続再生時間はイヤホン単体で最長8時間、充電ケースと併用で最長30時間使用できる

このご時世、スピーカーよりマイクのほうが重要かも。そう感じるようになったのは、Zoomなどのオンラインミーティングがきっかけです。マイクの性能が低いせいなのか、話し方なのか、相手の声が聞き取りにくい。または周囲の騒音が入ってくる。そんな経験はありませんか? 聞いている方はストレスも溜まるし、会議もスムーズに進みません。

とくにノートPCのマイクは頼りになりません。一時期、パソコンのスピーカーにハーマンなんとかやドルビーなんとかを搭載するのが流行りましたが、なかなかマイクの性能にまで気が回らなかったのでしょう。

なので、最近はイヤホンマイクを使う人が増えました。ユーチューバーもイヤホンマイクを使っている人が多く、しっかり声を伝えるためのマイクの重要性が広く認識されてきた気がします。

前置きが長くなりましたが、イヤホンを新しくしました。これまで音楽を聴くために購入されていたイヤホンですが、通話やオンライン会議で使われるマイク性能も重視したいという話です。

以前使っていたのは、ノイズキャンセリング機能を搭載したBose「QC30」。何の不満もなかったのですが、ゴムの部分が剥がれてきたので新しいイヤホンを物色。左右が分離した完全ワイヤレスイヤホンJabra「Elite 7 Pro」に乗り換えてみました。

「Elite 7 Pro」の特徴のひとつが、骨伝導センサーを使用した通話性能。強風など周囲の騒音が強まると、自動的に骨伝導センサーが起動し、顎の骨の振動から伝達される音声をしっかりと伝えるといいます。オンライン会議において、1人だけ外で、風切り音がバリバリに入っている状況ありますよね。皆が内心、「早く気づいてミュートしてくれよ」と思いつつ誰も指摘しないような。しかし、騒音を会議に流している本人もわざとじゃないですから。こういったノイズキャンセリングされるイヤホンマイクを使用することで解決できます。

片耳5.4gと軽量かつコンパクト。完全ワイヤレスは落としそうなイメージがあるが、しっかりと耳に馴染む

「Elite 7 Pro」を使用してから10日ほどですが、電話での取材でも相手にしっかりと話が伝わっているようです(毎回「音質どうですか?」と確認してみた)。自分の声は、どちらかというとボソボソらしいですが、それでも聞き返されることはありませんでした。

音楽の音質については、加齢で耳の性能が落ちているので、評価する自信はありません。ただ、自分としては好みに近く満足できるレベルです。もしかすると、ユーザーの耳に合わせてサウンドを調節する「MySound」の機能の効果かもしれません。アプリから「MySound」を実行すると、イヤホンから蚊の鳴くような音が鳴り、聞こえたタイミングでボタンをタップしていくと、その人の聴覚の特徴を分析、聞こえにくい音域を補うプロファイルが生成され、サウンドを最適化するといいます。

そもそもの聴覚に自信がないため、よくわからないのですが、とくに不満はありません。イヤホンやヘッドホンに対しては、絶対的な音質よりも、「低音が物足りない」というようにマイナス評価しがちな私ですが、「MySound」によって補われている可能性もあるんでしょうか。

もちろん、外出時のバスや電車などのシチュエーションでも使ってみました。ノイズキャンセリング機能はめちゃくちゃ強力ではないですが、音楽を気持ちよく聴くには十分でしょう。

マイクで拾った外の音をイヤホンしたまま聞こえるようにする「ヒアスルー機能」も搭載しています。初期設定では左側のボタンを押すとノイズキャンセリングとヒアスルーを切り替えられます。ヒアスルーの強度設定は5段階あり、強めにすると補聴器のように周囲の音が拡大して聞こえます。電車の中で音楽を聴き、乗り換え時にヒアスルーにして駅構内を移動すると、周囲の音がハッキリ聞こえるので安心感があります。というか、完全ワイヤレスなので、この機能は必須ですね。首に掛けるタイプのイヤホンのように外してぶらんと下げて歩けませんから。

音楽ではなく通話メインなら、ひとつのイヤホンのみ使用する「片耳モード」が便利です。クルマの運転中含め、ほとんど耳から外すことなく生活できてしまいそうです。聞けば、Jabraを展開するGNグループは世界有数の補聴器メーカーでもあるらしく、聞こえ方にとっての知見を持っているはずです。いずれは補聴器の機能を備えたイヤホンも登場するのでしょうか。

アプリ「Jabra Sound+」から「MySound」を起動すると、性別と誕生年、聴力テストによりプロファイルを作成し、オーディオを最適化する
左右のボタンにそれぞれ機能が割り当てられる。右を1回で音楽再生・一時停止、通話応答・終了、2回で着信拒否。左を1回でノイズキャンセリング・ヒアスルー切替、2回で音声アシスタント起動といった具合
音楽用イコライザー
ANC(ノイズキャンセリング)とヒアスルーはそれぞれ5段階に調節可能
イヤホンを通じて聞こえてくる自分の声「側音」の調整が可能。通話イコライザーの設定では、相手の声が低い場合「トレブルを大きく」、高い場合は「ベースを大きく」で声が聞き取りやすくなる
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>