老師オグチの家電カンフー
白物家電の名前はなぜ「ゆるい」のか?
2019年4月10日 06:00
家電製品、とくに生活家電のネーミングが気になって仕方がありません。
ブランディングが重要な自動車や化粧品、AV機器ほど力は入っていないけど、スナック菓子ほどのオモシロ系でもない。がんばって考えてそうな割にはゆるくて、そもそも愛称がないケースも多い。今回は、そんな白物家電の名前をイジってみることにします。
洗濯機:「からまん棒」の衝撃
とくに名前を付けていないメーカーが多いのが、洗濯機です。「ドラム式洗濯乾燥機<型番>」と、タイプが前面に押し出されるケースがほとんどです。それでも、いくつかのメーカーは独自の名前を付けています。
たとえば、東芝「ザブーン」。ええと、このネーミング、何か説明が必要でしょうか。小鳥に「ピーちゃん」と名付けるぐらいのシンプルさです。
もっともネーミングに力が入っているのは、日立でしょう。ドラム式は「ビッグドラム」、タテ型全自動は「ビートウォッシュ」、安めの全自動は「白い約束」、2層式には「青空」。後ろ2つはかなり懐かしさもある名前です。
そんな日立のネーミングセンスを決定づけたのは、80年代の「からまん棒」ではないでしょうか。洗濯槽の中心に棒状の突起を設け、洗濯物の布がらみをほどく機能なのですが、その名前と当時アイドルの河合奈保子を起用したテレビCMは、小学生だった私に強烈な印象を残しています。そこからの伝統なのでしょう、「風アイロン」や「ナイアガラ洗浄」といった機能へのネーミングにもこだわりが見られます。
今思い出しましたが、昔ナショナルに「愛妻号」って洗濯機もありましたね。
冷蔵庫:「ベジータ」は野菜の味方か?
冷蔵庫も「○○タイプ」というようなグレードと容量を表す数字を含んだ型番のみが多いです。製品名があっても、かなり説明的。三菱電機「置けるスマート大容量」、日立「真空チルド」などは、特徴や機能そのままです。
かろうじて愛称っぽい名前は、東芝「ベジータ」でしょうか。これも野菜の鮮度を保つ機能から付けられたのでしょうけど、「ドラゴンボール」を連想する人も多そうです。冷蔵庫のベジータは、野菜を新鮮に長持ちさせますが、ドラゴンボールのベジータは仲間だったナッパを殺しちゃうんですよね。
掃除機:海外勢の参入でネーミング戦争勃発?
冷蔵庫や洗濯機よりはネーミングに力が入っているのは掃除機です。
ダイソンは「V10」など製品名はシンプル。数字が増えるほど高機能という、わかりやすさがあります。ダイソンは社名自体に掃除機のブランド力があるので、商品名は英文字+数字でいいんでしょう。BMWの3シリーズ、5シリーズとかと一緒です。
エレクトロラックスの「エルゴラピード」は、スウェーデン語のせいなのか、独特の存在感があります。日本人には、ちょっと覚えにくく、「エゴルラピード」や「エルラゴピード」などと間違って言ってしまいそうです。ダイソンのユーザーは、「ダイソンで掃除して」と言いますが、エルゴラピードのユーザーで、「エルゴラピードで掃除して」って言ってる人はほとんどいない気がします。
東芝の「トルネオV」は、サイクロンの「竜巻(トルネード)」と、ゴミを「トル」をかけ合わせたのでしょうか。「V」は何でしょう。家電 Watchの過去記事によれば、「お客様にとって価値のある製品という意味で“Value”、メーカーとして他社との競争に打ち勝っていくという意味で“Victory”、さらに新モデルのサイクロン機構『バーティカルトルネードシステム』の“Vertical”の3つの意味」だそうです。女子バレーボールのマンガ・ドラマ「サインはV」を思い起こす昭和のおじさん、おばさんもいるんじゃないでしょうか。Vサインは勝利(ビクトリー)からきているので、「アリナミンV」など、市場で勝ちたい気持ちが込められている感じがします。人の名前なら、「マサル」や「ツヨシ」ですね。
シャープの「RACTIVE Air」は、軽量化による「ラク」と「アクティブ」をかけ合わせた「RACTIVE」に、空気のように軽い「Air」を加えたものでしょう。このダメ押し感、すごく肩に力の入ったネーミングにも思えます。製品自体はとても軽く、腕に負担はないんですけどね。
改めて、生活家電は製品自体よりも、独自機能のネーミングを重視していることがわかりました。ここ数年ぐらいは機能をダジャレで表現したものが多くて、その無理矢理な感じがキラキラネームっぽくもあります。今後も生活家電の名前をウォッチしていこうと思います。