老師オグチの家電カンフー
第24回
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台湾の家電大手「大同公司」本社に潜入
2016年12月14日 07:00
台湾を代表する電機メーカー「大同公司(TATUNG)」本社を訪ねてきました。きっかけは、今年6月に公開したこちらの記事。
▼第11回:逆爆買い! 台湾家庭で必需品の「電鍋」を買って帰る
なぜか、これが台湾の人のツボにはまったらしく、現地のテレビや新聞にたくさん紹介されたのでした。
紹介された記事はこちら。
そして今月、仕事の気分転換に1泊の台北ひとり旅を組んだのですが、どうせなら大同さんの本社が見学できないかと、日本法人の大同日本株式会社に連絡したところ、アテンドしてもらえることに。
ほとんどの日本人には、大同の名前は馴染みがないでしょうが、日本に向けては、太陽光パネルやLED電球、モーター、スマートメーターといった、電力分野の製品を輸出しています。また、パソコンに詳しい人ならご存じであろうマザーボードメーカーのエリートグループは大同の傘下にあります。
デザインは伝統を守りつつ機能は進化
まず案内されたのは、同社の敷地内にある「志生樓」。ここは、1918年(大正7年)の創業からの歴史資料が集められた史料館です。
大同公司の創業者は、林尚志氏。創業当初は、鉄道や建築といった事業が中心でした。家電を手がけるようになったのは、2代目の林挺生氏の時代からで、1949年に初の国産扇風機を発売します。この扇風機、形を見てわかる人もいるでしょうが、1916年に発売された東芝の製品が原型です。
実は、大同公司は東芝との関係が深く、長らく技術提携を続けてきました。驚くことに、この扇風機はいまだにほとんど形を変えずに売られ続けているんですよ! しかも最新モデルにはタイマー機能やDCモーターを採用するなど、中身は進化しています。電鍋の次に買って帰るのは、この子だと決めました(5kgとずっしり重く、季節も冬なので今回はパスしましたが……)。
そして電鍋も進化しています。続いて案内された社内のショールームにて、今年発売された製品の説明を受けました。小籠包が有名な台湾らしく、せいろの機能を備えた製品や、鍋とホットプレートの両方として使える製品、そしてスマホからレシピを選択して外出先からも動作させられるIoT対応まで、多様なラインナップが展開されています。
電鍋人気の理由、そして次の100年に向けて
さて、筆者的には気になる製品も多い大同ですが、台湾以外の市場をどう考えているのか。同社家電電子事業部の張忠棋氏に話を伺いました。
――台湾の家電市場にはどんな特性がありますか。
張氏:消費者の生活習慣や、参入しているメーカーの数を含めて、日本の市場とあまり変わりません。唯一違うのは、電鍋の市場でしょう。今年で56年目、販売数量は累計2,000万台を超えています。ちなみに台湾の総人口は2,300万人です。現在も9割以上のシェアを持っています。
――人気の理由は?
いくつか考えられますが、歴史的にはこんな経緯があります。昔のお母さんは、かまどで炊飯や調理していましたが、それは重労働でした。電鍋が登場すると、娘に苦労はさせたくないと、結婚するときの嫁入り道具として持たせるようになったのです。
近年は、自分の子供が自立するとき、海外に留学するときに買ってあげる。簡単に自炊できるので、経済面や栄養面の心配がなくなりますし、調理している間でも勉強ができますからね。
――台北の店で、200V対応の電鍋が売られている理由がわかりました(台湾は110V)。
さらに、日本やアメリカでは現地に適応させた製品が買えるようにしています(日本ではYahoo!ショッピングで販売)。
――日本市場への本格参入は考えていますか?
家電製品については、品質や技術の点で日本メーカーから色々習えるところがあると考えております。日本の大手メーカーとも製造面で提携していますし、品質に関する社員の考え方は、日本メーカーのレベルです。少なくとも、中国などのメーカーよりは先を走っていると考えています。
また、家電以外の製品については、積極的に日米の市場を開拓しています。たとえば、電力トランスやパワーケーブル、モーター、発電機といったエネルギー関連の製品です。太陽光パネルやスマートメーターも少しずつ日本の市場に入っています。
――かつてはOEMやODMの生産も手がけており、気がつかないうちに大同で製造された製品を使っている人もいたでしょうね。ところで、創業が1918年ということは、再来年に100周年を迎えますが、イベント等は企画されていますか?
イベントやセレモニーはするはずですが、まだ詳しくは決まっていません。90周年の時は大々的にイベントを行ないましたが、その時にくらべても製品や目指すところは大きく変わってきています。次の100年で目指すものを見据え、そのために次の10年、20年でどのようなイノベーションをし続けるかを考える機会としてとらえています。
――ありがとうございました。