藤山哲人の実践! 家電ラボ
第21回
壊れたコンセントを自分で修理してみよう!
by 藤山 哲人(2014/6/5 07:00)
いつもの「実践! 家電ラボ」は、色々な製品を比較して機器の良し悪しや長所と短所などを紹介している。しかし今回は毛色を変えて、簡単なコンセントの修理を紹介しよう。
分からんことは、自分で調べる! やってみる!
初めての修理は難しいかもしれないけど、家電ラボのモットーは自分でやってみることにあり。
Do it myself!
案外簡単に修理できちゃうから、肩透かしを食らうかも?
家電の電線が熱くなっていませんか?
たとえば古い電気ポットやホットプレート、半年ぶりに押し入れから出してきた季節家電の扇風機や電気ストーブなど。電源を入れてしばらく使っていると、コンセントの差し込みや根元の電線が熱くなっていることはないだろうか?
ホットプレートや炊飯器、電磁調理器(IH調理器)など消費電力の多い機器では、電線全体がほんのりあたたかくなることもあるが、電線の一部が熱くなったり、熱くて触れないようなときは、電線の芯の銅線が切れている可能性が高い。
場合によっては、コンセント近くの電線を少し曲げてやると、うまく機器が動作するなんてことをしていないだろうか? これらは火事になりかねない非常に危険な状態だ。
特にコンセントの抜き差しが多い調理家電や、ドライヤーなどの理容家電は、コンセントプラグの根元の電線が壊れやすい。また掃除機のコンセントは頑丈にできているが、何かの拍子で電線を引っ張ってしまい、コンセントに負担をかけてしまうことが多々ある。
逆にコンセントの抜き差しが少ないため、何かの拍子で家具の足で踏んでしまった電線も切れやすい。季節の変わり目で掃除をしたときなど、踏まれていた電線の機器のスイッチを入れて、踏まれていた部分が熱くならないかを調べて欲しい。
このようにコンセント回りの故障をそのまま放置しておくと、火傷どころか火事の原因になる。コンセントが壊れた家電は買い換えてしまう手もあるが、数百円のコンセントを取り替えるだけでまだまだ使える場合がほとんどだ。
【延長コードの電線が熱くなると危険】
よくやってしまうのが焼き肉やナベをするとき、ホットプレートやIH調理器を手近にあった延長コードのテーブルタップに差し込んで使ってしまうというシーン。
これらの家電は消費電力が大きいので、たいてい壁のコンセントから電源をとるよう注意書きされている。しかしテーブルタップにつなぐと、タップの許容電力を超えてしまって、タップや延長コードが熱くなることがある。
電線全体が熱を持つ場合は、芯の銅線が切れているのでなはく、延長コードの許容範囲を超えている場合だ。テーブルタップにつなぐ機器のワット数が、延長コードの最大ワット数を越えると電線が熱くなる。そのまま利用していると火事になりかねないので、延長コードを使わず壁コンセントから直接電源を取ること。
もし延長コードの一部が熱を持っている場合は、芯の銅線が切れている可能性が高い。
コンセント交換は免許なしでOK、でも知識と技術と注意が必要
コンセントプラグ(差し込み)の修理でまず心配になるのが、電気工事士などの免許が必要なのではないか? という点だ。ホームセンターの電気部品売り場には、作業着を着たプロばかりが目立つ上に、部品によっては「この機器の取り付けに関しては、電気工事士の資格が必要となります」という注意書きがある。
結論から言うと、コンセントから先は未資格で工事してもかまわない。電気工事士の資格が必要になるのは、壁コンセントを含めて壁の中にある屋内配線だ。つまり2口の壁コンセントを3口に交換したり、照明をON/OFFする壁スイッチ類の交換は有資格者のみとなっている。
さてコンセントから先は未資格でも工事できるが、電気は見えない上に火事や事故の原因になる。なので未資格でも、電気の基本的な知識と技術にあわせて、注意力も必要になる。ここではコンセントの交換に必要な知識と技術を紹介するので、注意力は自前で用意して欲しい。
さらに2013年の法改正で、自分でコンセント回りを修理したり、自作の延長コードなどを販売するには、規定の試験結果を添えて役所の認可が必要になった。個人的な修理や自作は問題ないようだが、法的に心配な場合は「電気用品の技術上の基準を定める省令の一部を改正する省令」を参考にして欲しい。
不安な人は部品交換という手もあるので検討して欲しい。このコラムは、自分で修理しない場合でも、修理するということがどれぐらいの手間がかかり、どんな手順で行なえば良いのかという点を参考にしてもらえば良いのだ。
耐久性や使う工具によって、直し方は3通りある
コンセントの修理には工具が必要になる。しかし工具にはピンからキリまであり、一般的なものから特殊用途までさまざま。価格帯には差があるのだ。これでは何のために数百円のコンセントプラグを買って修理するの分からなくなる(笑い)。
ここではまず、2,000円程度から始められる、工具と耐久性を見てみよう。
・半田ごて(耐久性:高)
ホームセンターで売っている電気用の30~40Wのこてがいい。板金用は先っぽの形状が少し違うので、電気/電工用/電子工作用とあるものを選ぶのがポイントだ。なおハンダと呼ばれるろう付け用の金属(針金)は、「電子工作用」とあるものを選ぶ。こてとハンダで価格はだいたい1,000~1,500円程度だ。
半田付けのテクニックが少し求められるが、安い道具の割に高価な工具で工事するほどの耐久性がある。コンセントの抜き差しが多い機器の修理にオススメ。
・電工ペンチを使ったラグ端子の圧着(耐久性:並~高)
電線のビニール被膜(皮)を向いたり、金属製の丸い端子を電線に止めたり(圧着)できるのが、電工ペンチと呼ばれるもの。この工具を使うと、電気製品の中でもよくつかわれている「ラグ端子」というものを電線に圧着できる。さらに芯の銅線を切らずに皮膜を剥けるワイヤーストリッパー機能もあるので、電線の皮むきが苦手な人にはオススメ。
電工ペンチは種類が豊富なので、まず「裸圧端子」「裸圧着端子」というものに対応しているものを選ぶ。その中から、対応している圧着端子のサイズに2.0平方mmを中心にサイズがいくつかあるものを選ぶ。価格はピンキリだが、半田ごてと同じぐらいの価格から、数千円するものまで。写真の電工ペンチは2,000円ぐらいだったと思う(古いので同じものは売っていない)が、このあたりを標準として選ぶといいだろう。
また圧着するラグ端子は、中央に空いている穴が直径4mmのものを選ぶ(カー用品で売っているものはダメ)。こちらは200~300円ぐらいだ。なおラグ端子より肉厚な金属(アルミ)でできた「圧着端子」というものがあるが、これと間違わないようにすること。肉厚な圧着端子は、電工ペンチで圧着できず、別に専用のツールが必要になる。
電工ペンチとラグ端子を使った耐久性は、工具や力の入れ具合によってばらつきがあるが、中~高といった感じだ。あまりコンセントの抜き差しがない機器向け用としたほうがいいだろう。ただし圧着した後にラグ端子を半田付けすると最高レベルの耐久性になる。
・ドライバー1本で直す(耐久性:低)
近所のコンビニやスーパーで売っている、短いドライバセットだけで修理する方法もある。このほかに電線の皮膜を剥くのに、ニッパかラジオペンチがあればベストだが、よく切れるカッターナイフでも代用できる。電線を切るのにハサミも欲しい。
耐久性は低く、抜き差しの多い製品には向かないが、月に1度も抜き差ししない場合は、ドライバー1本でも十分だ。
■■注意■■・分解/改造を行なった場合、メーカーの保証は受けられなくなります。 |
中の電線を切らずに確実にビニール皮膜を切る方法
コンセントの交換で一番難しいのは、電線の被覆剥きだろう。慣れないうちは芯の細い銅線を何本か切ってしまって、何度もやり直しすることになる(何本も銅線が切れた状態は、故障と同じで熱を持つので危険)。
ここでは一番手軽なカッターを使って、初心者でも芯の電線を1本も切らずに被覆を剥く裏技を紹介しよう。
こうすると4~5回もカッターの刃を当てると、どんなに皮むきが苦手な人でも、芯の導線をまったく切らずに被覆に切れ目を入れられる。
電線の被覆剥きは回転しながら抜き取る
電線の被覆に切れ目を入れたら被覆を引き抜きたいところだが、ここにもう1つポイントがある。それは被覆を引き抜く際に、ぐるぐると回しながら抜くということだ。
だいたい2cmぐらい被覆を剥く場合は、切れ目を入れて回転して抜けるのだが、それより長いと固くて回せない場合がある。そんなときは数cm回転せずにズラしてから回転させるといいだろう。
被覆を剥いた電線は、細い銅線が何本も束ねられていて、そのままだとバラけて作業しづらいので、よじってまとめる。さらによじることで、電線の耐久性がよくなる。
つまり、よじり方1つで、作業もしやすく耐久性もよくなるので重要なポイントとなる。そこでオススメしたいのが、被覆を剥く際にクルクルとよじりながら抜く方法だ。
被覆を剥いたあと指先でよじるより、よりきつく、よりキレイによじれるのでぜひやってみてほしい。
一番簡単で安上がりなドライバ1本で修理
基礎の説明が長くなってしまったが、さっそく修理にとりかかろう。電工ペンチと半田ごてを使った方法は、次回のテーブルタップ編で紹介するとして、ここではドライバ1本で工事する方法を紹介しよう。
まずは機器の電源をOFFにして、コンセントを抜くのを絶対忘れないように!
ホームセンターではいろいろなプラグを見かけるが、元の大きさに近いものを買ってくるといい。L字に曲がったものでもいいし、角度を自由に変えられるものにしてもいいだろう。ポイントは一番安いのを避けること。なぜなら安いぶん、工事しづらかったりするのだ。写真はパナソニック製のヤツで200円(税別)程度。
またパッケージのどこかに15Aと書いてあることを確認すること。これ以下はめったにない(たまに12Aがある)が念のため。
熱くなる部分は芯の電線が切れかかっているので、そこを含めて数cm余分に電線をカットする。ペンチやニッパを使ったり、ハサミで切ることもできる。
電線は2本で1セットになっているので、端にカッターを少し入れて手で2本に裂けばいい。電線によっては、1本のチューブ状になっているものがある。
この場合は電線の被覆と同じ要領で、外側の被覆を剥くと2本の電線が出てくる。3本出てきた場合は、緑色の電線がアースとなっている。
先に説明した通りマジックで電線に線を書き、鋭いカッターで皮を切っていく。電線は3cm皮を剥くようにする。
ビニールの被覆を回しながら引き抜く。固くて回らない場合は、少し被覆を引き抜いてから回すといい。
コンセントの中にあるネジは、2つあるコンセント先端の刃にそれぞれつながっている。このネジは柔らかく、ネジ頭がつぶれやすいので(頭に切ってある十字の溝)、回す力半分、ネジを押す力半分でネジを回すこと。
被覆を向いた電線は、外したネジの左側から時計回りに1周巻きつける。あまった電線はネジの下側に出す。時計回りに電線を巻くことで、ねじを締めたとき(時計回し)に電線がほつれたり、外れなくなる。
もしあまった電線が長すぎる場合は、ハサミなどであまりを切る。ただし必ず電線がクロスし輪ができるようにすること。“?”型のようにネジに引っ掛けた状態だと耐久性が低くなる。また反時計回りに電線を巻くと、耐久性が低くなるので注意すること。
あまりネジをきつく締めると電線が切れてしまうので、ネジ頭がつぶれない程度に締める。ネジを締めたら、電線を軽く引っ張って抜けないかをテストしよう。
電線同士が接触していると、次のコンセントを挿した瞬間に火花が出て、ブレーカーが落ちることもある。必ずしっかり確認すること。
電線がカバーからはみ出してうまく閉まらないという場合は、もう一度ネジ止めをやり直す。無理に閉めようとすると、銅線が切れたり接触したりする原因になるので、無理なく閉まるのを確認しよう。
カバーをネジ止めできたら、機器のスイッチがOFFになっていることを確認してから、コンセントに差し込んでみる。その後スイッチをONにして、電線やコンセントが熱くならないかを確認したらチェック終了だ。
次回は部屋にピッタリな長さのテーブルタップを作る!
コンセントの修理を通して、電気工事の基礎中の基礎を紹介した。季節の変わり目は、冬物と夏物家電を押し入れから出したり引っ込めたりするので、修理するにはちょうどいい。
「そういえば、あの冬物家電はコンセントがえらく熱くなってた」「押し入れから出した夏物家電のコンセント、少し曲げるとスイッチが入るけどこわれたのかな? 」なんていう場合、ぜひ参考にして欲しい。
ただし、ここまでの手順を読んできて、ちょっとむずかしそうだと思ったら無理はしないこと。工具の代金や手間を考えれば、電源コードなどを買い換えるという選択肢もある。
とりあえず、電気製品が調子の悪い状態で使い続けることが一番危ない。修理するにしろ、買い替えるにしろ、できるだけ早めに処置を行ない、そのままの状態で放っておかないということが一番大事なのだ。