家電店ちょっとイイ話

「家電を買うのは増税前か後か?」2019年の家電買い時は?

第1回

本連載では、家電量販店業界を20年にわたりWatchしてきた筆者が、お得な買い方、店頭で見つけた面白い商品、家電製品を買う時に注意したいことなど、家電購入時に役立つちょっとイイ話をお伝えしていきます

 家電ライターなんて仕事をしていると、よく「どうすれば安く買えるの?」という質問を受けます。雨の日を狙うとか、今日買う意志があることをはっきりと示すとか、月末の平日の夜に行くとか、細かいテクニックはあることはあるのですが、今回は「家電を購入する時期」について解説したいと思います。

 実は、2019年は例年とは違う事象がいくつかある特殊な年です。結論から言うと「いつ買ったらいいのか、はっきりしたタイミングを示すのはなかなか難しい」年なのです。でもそれで終わってしまうと身も蓋もないので、それなりに家電を買うタイミングをいくつか示してみましょう。

2019年の家電買い時は、増税前か後か?(写真はイメージです)

商品によって、売上確定のタイミングが異なる!?

 まず、直近に迫った年度末。ほとんどの家電量販店、家電メーカーが3月末決算です。各社、決算に向けて少しでも売り上げ伸ばしたいところなので、「決算セール」を大々的に開催しています。量販店・メーカー双方の利害が一致したセールとなり、思わぬ掘り出し物が出る場合もあります。ただ、この時に注意したいのが、家電のジャンルによってお値打ち価格の出やすい時期が異なるということ。

 家電量販店の中には「確定売り上げ」という考え方を持つ企業があり、そこでは持ち帰り商品と配送・設置商品では、売上が確定するタイミングが異なるのです。まず持ち帰り商品の場合は、レジでお金を払ったらそこで売り上げが確定します。

 一方、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、大型テレビといった配送・設置商品はレジでお金を払っても売り上げは確定せず、お客の自宅に配送・設置されてはじめて商品はお客のものとなり、売り上げが確定します。つまり、3月31日に購入しても家に届くのが4月1日ならば売り上げは4月1日付けとなり、今期ではなく来期に計上されてしまうのです。

 3月末決算の量販店としては売り上げが立つ3月内に配送・設置を完了してしまうことが望ましいので、配送・設置商品は3月第3週目くらいまでに購入したいところです。また、週末の配送・設置は混み合うため、平日の配送・設置を選ぶことも価格交渉の材料になる可能性もあります。

 逆に、持ち帰り商品は3月下旬が狙い目です。店側としては31日ギリギリまで売り上げを作りたいので、レジを通った瞬間に売り上げが確定する持ち帰り商品なら、31日の閉店間際まで買ってもらうのを待っています。店に車で行けるなら、中小型テレビや電子レンジも持ち帰りが可能なので、価格交渉にチャレンジしてみてください。

商品によって売上確定のタイミングが異なるので、年度末注意したい(写真はイメージです)

10連休はいつが買い時?

 最初に今年の特殊要因がいくつかあると書きましたが、その1つが改元に伴うゴールデンウイークの長期化です。新天皇の即位と改元が5月1日になり、同日を今年限りの祝日としたことで、前後の4月30日と5月2日も祝日法により祝日扱いとなり、今年のGWは10連休になりました。

 今回の改元がこれまでと異なるのは、お祝いムードになること。過去の改元は天皇の崩御によるものだったので世間は自粛ムードでしたが、今回はまったくの逆ですね。多くの小売現場が「祝・改元」「新元号最初のセール」といったキャンペーンを繰り広げることでしょう。

 特に超大型の10連休となるために、レジャーや旅行に行く人が増え、モノの消費にお金が回らない可能性も考えられます。その可能性を挽回する目的で、家電業界でもセールを展開する可能性があります。購入したい家電がある人は、新聞折り込みチラシをチェックするなど、GWの前半と後半の家電量販店の動きに注意するといいでしょう。

家電量販店の新聞折り込みチラシは情報の宝庫。各量販店のウエブサイトやチラシアプリ、LINE等でも見ることができるので、欲しい製品がある場合はこまめにチェックしよう(写真はイメージです)

消費増税

 2019年の特殊要因その2は、言うまでもなく10月1日の「消費増税」です。例年であれば9月は半期決算の月なので、夏に売れ残ったエアコンや、秋商戦前のモデルチェンジに伴って旧製品が安くなる時期なのです。しかし、今年は消費増税前の駆け込み需要が7月から始まり、9月に向けて高まっていくと見られています。特に9月には前年比130%超えも予想されるほど。

 ここで思い返すべきは、2014年4月の消費増税時です。当時も同じく、1カ月前に当たる3月に駆け込み需要が高まったため、家電量販店では無茶な値引きを控えるようになりました。値引きしなくても飛ぶように売れるのだから当たり前ですね。

 昨年12月の"PayPay狂想曲"の時も、あまりの売れっぷりに値引きどころか値上げする店舗も出てきたといいます。これらを総合的に判断すると、今回も駆け込み需要時には、無茶な値引きは行なわれないだろう、というのが大方の見方です。

 また消費増税に伴い、メーカーの新製品発売の時期も微妙に変化するとの予測もあります。例年ならば、冷蔵庫や洗濯機、炊飯器、電子レンジ、大型テレビなどの新製品の投入は、7~9月に始まり、それに伴って旧モデルの在庫処分が起こり、価格が大幅に下落します。

 しかし今年は駆け込み需要期を万全な体制で迎えたいという思惑が働くためか、例年よりも2カ月以上早い5月、GW明けに新製品を投入するメーカーもあるのではないかと予想する量販関係者もいます。

 つまり、旧製品の処分が例年より前倒しになる可能性もあるわけです。「自分は、新モデルでなく旧モデルでも十分」と考える人は、この処分価格が出るタイミングを見逃さないよう、常に店頭をチェックしたほうが良いでしょう。

冷蔵庫や洗濯機、炊飯器、電子レンジ、大型テレビなどは、7~9月に新製品が出ると旧モデルが安くなる(写真はイメージです)

エアコンは、購入時期に注意!

 2019年は、無茶な値引きはないだろうと言いましたが、可能性として捨てきれないのが家電量販店同士、メーカー同士の間で競争が起こるかもしれないことです。いくら市場が130%超えとなっても、量販店もメーカーも少しでも多く売りたいのが心情。特に10月以降は、駆け込み需要の反動で急激に市場が落ち込むとの予測もあり、ならばこそ9月までに多くの売り上げを確保したいと考える企業が出てきてもおかしくありません。

 昨年末の"PayPay狂想曲"の時に、PayPay加盟店ではない量販店がポイントアップで販促を行なったことは記憶に新しいでしょう。よって、駆け込み商戦期であっても、突発的に新製品のセールを行う量販店・メーカーがあるかもしれません。ですので、新製品が欲しい場合は8~9月にも店頭をこまめにチェックしておく必要があります。

 気をつけたいのがエアコンです。例年、7月上旬から8月上旬にかけてはエアコンの最大需要期になり、店頭はエアコンを求めるお客でひしめき合います。設置工事のスケジュールもこの時期はタイトで、猛暑が重なって需要が急増した昨年は、設置工事が1カ月待ちとなる量販店もありました。猛暑の時期にエアコンが壊れても1カ月我慢しなければならないなんて最悪ですね。

 今年の夏の天候がどうなるかは未知数ですが、増税前の駆け込み需要もあるため、7~8月に工事が混雑するのは必至です。一方、最大需要期に入る前の6月末までの工事日程は比較的空いていることに加え、さらに複数台購入割引や平日工事割引といった特典をつける家電量販店もありますので、この時期に落ち着いて購入することをオススメします。

エアコンは、最大需要期前の6月末までに購入しよう(写真はイメージです)

消費税アップ後はどうなる?

 では、消費増税が実施された10月以降がどうなるかを見ていきましょう。今回は、前回2014年時の増税時と大きく異なる点が1つあります。前回の消費増税時に政府は、「消費税還元セール」の表示を禁止したのですが、小売の現場では"セール全般が禁止になった"と拡大解釈しました。それにより4月以降は物価が上がり、反動で家電市場は大きく冷え込みました。

 政府は今回も「消費税還元セール」の表示は引き続き禁止しますが、前回の反省から「2%値下げ」「2%ポイントアップ」といった増税に直接関連付けない表現のセールは認める方針を打ち出しています。

 それでなくても10月は駆け込み需要の反動による販売減が予想されているので、メーカーも量販店もセールを打つ可能性があります。つまり、7~9月より安くなる可能性があり、家電製品を安く買う大きなチャンスになるかもしれないのです。

 ただしこの時期のセールは、「欲しいモデルが残っていない」可能性もある諸刃の剣です。モデルチェンジによる旧製品の在庫は無論のこと、"PayPay狂想曲"の時がそうだったように、場合によっては新製品も駆け込み需要で在庫があっという間に捌けてしまい、しばらく入荷待ちになる可能性もあります。欲しい製品がある場合は、売り場の在庫状況、入荷状況を常にチェックして、購入するタイミングを間違えないようにしましょう。

 2019年の特殊要因その3が、来年1月にWindows7のサポートが終了することです。このタイミングで、最新のWindows10搭載パソコンの需要が高まることが予想されます。となると、今年12月には旧モデルの在庫処分がスタートする可能性があります。年末年始のセールまでに旧モデルの在庫を捌いて最大需要期を迎えたいからです。ここでも、新製品とのスペック差をチェックするとともに、店頭の状況に目を光らせましょう。

消費増税後もセールの可能性はあるが、欲しいモデルが残っていない可能性も(写真はイメージです)

欲しい製品があったら常に店頭をチェック!

 ここまで、2019年の特殊要因を説明してきましたが、年間を通してチェックしておきたいのが「メーカーキャンペーン」の存在です。これは、メーカーと家電量販店がタッグを組んでゲリラ的に行うキャンペーンで、概ね1~2週間で終了します。

 競合店、競合メーカーに対抗するために展開されるので、いつ、どの量販店で、どのメーカーのどの機種が対象になるのかは発表されず、店頭に行ってみないと分かりません。ある日突然、特定のモデルが大幅に値下げされ、1~2週間後に元の価格に戻ってしまうのということがよくあるのです。

 この機会を逃さない方法は、自分が欲しい機種をあらかじめ選んでおき、頻繁に店頭をチェックすること。その際、複数の量販店と自分が欲しいモデルの競合商品の動きも忘れずにチェックしましょう。というのも、A店でX社のモデルのキャンペーンをしている場合、B店で対抗のZ社のモデルのキャンペーンをする場合があるからです。また、突然価格が下がっているのを発見した場合は、「もう少し待てばもっと下がるかな」と様子見する前に、店頭で聞いてみましょう。特定のキャンペーンならば、「○日まで」と開催期間を教えてくれます。

 現在では、家電量販店各社の新聞折り込みチラシはインターネットで見ることができ、LINEやツイッター、自社アプリなどでセール情報を発信している量販店もあります。当サイト、家電 Watchで新製品情報も常にチェックして、買い時を逃さないようにしましょう。情報を制する者は買い物を制するのです!

 これだけいろいろ言ってきましたが、最後に、これだけは言っておきます。「買いたい時が一番の買い時」です。メーカーが知恵を絞り、持てる技術を駆使して開発したのが新製品。その価格にはちゃんとした理由があります。

 筆者も、家電を購入した1カ月後に大幅に価格が下がったということがしょっちゅう起こりますが、それまでの1カ月間、その家電製品によって与えられた生活の充実感は何物にも代え難く、「もっと安く買えたのに」と後悔したことはほとんどありません。欲しい家電を欲しい時に買う、それが一番賢い買い方だとも思っているのです。

近藤 克己