あってよかった
無印なのに100均より安い! 頼りになるMUJI掃除グッズ
2022年9月30日 07:30
33年前の夏、初めて「無印良品」に行った。
当時住んでいた町から1時間ほど、ディーゼルカーと電車を乗り継ぐ距離の街角に、その店舗はあった。路面店だった。
それまで訪れたことのあるどんな店にも置いていない、簡素が極まっておしゃれに感じてしまう不思議なものらがそこにあった。中学生だった筆者はすっかりとりこになり、夏期講習の間じゅう小一時間うろうろした。
お金がないので悩みに悩んで講習最終日に買ったのはペン立てで、茶色い厚紙と缶底みたいな素材でできた大振りのペン立ては多分300円もしなかったと思うが、結局その後15年くらい愛用することになる。
しかして当時から今に至るまでMUJI、無印良品というものの位置付けは筆者の中で、よくわからないままだ。とにかくシンプルで品がある、けど高級かといえばそういうわけでもなく、さりとて安っぽいかというとそういうわけでもないが、実際のところ際立って安いわけでもない。普通に高い。
そう、ここ10年ばかりは、もろもろ「安くない」という印象が強かった。100円ショップ、300円ショップ、ホームセンターPB商品、ドラッグストア、国産アパレル各社、等々と、商圏は似ている、しかし決して同じ土俵に単純にのせられない独特な何かがあり、かつ「安くない」し「むしろ高い」ような気がしていたのだが、一部の掃除道具に関しては意外にも、そうでもなかったのである。
潔い“無香”の「流せるトイレ掃除シート 20枚入」
今日日ドラッグストアでも100円ショップでも目新しくもないトイレ掃除用のウェットシートである。しかしMUJIにおけるそれは、20枚入りで、税込99円。100円ショップで類似品を買うよりも11円も安く、なんだか「へぇっ」とビックリしてしまう。
このシートの材料は「水、エタノール、界面活性剤、除菌剤」の染み込んだ「パルプシート」だ。いずれも特段珍しいものではないが、特筆すべきは、その無香ぶりにあった。
シートを取り出すと、極めて素っ気ないエタノール臭、いわゆる“消毒くささ”をいの一番に感じるのだが、強いニオイではなく、すぐに消えてしまう。「~の香り」なる、今どきの香料の大洪水を起こしている生活雑貨の溢れる世において、異質なほどの「無」香で、潔い。
そうだった、トイレに求めているのは「いい香り」ではなく、適切な掃除による排泄臭の「無」化だった、と改めて思う。
やるべきことをしてくれる「フローリングモップ用替えシート・ウェット 20枚入」
同じ「無香」の文脈に立っている「フローリングモップ用替えシート」、これはリビング床等をフローリングモップ(ワイパー)で掃除する用のウェットシートだ。20枚入りでこちらもたったの99円。安い。
材料は「アルカリ電解水」と「発酵エタノール」が染み込ませてある「不織布」で、こちらも特段変わっているわけではないが、案の定、一切の香り付けがなされていないのだった。一切だ。
ごくごく微かなエタノール臭があるのみ。シンプルに徹しているがフローリングシートとして汚れ落ちの度合いは悪くなく、フローリング床、クッションフロア床、畳、問わず皮脂、油煙、ホコリなどを楚々と確実に拭き取る。主張しないがやるべきことはやるキャラクターだ。
シンプルながら汚れをしっかり落とせた「隙間掃除シリーズ」
そして同じく「主張しないがやることはやる」という文脈に立っておりかつ、その値段に改めてギョッとさせられるのが、「隙間掃除シリーズ」と銘打たれた一連の掃除道具である。
税込で100円払うと10~20円のおつりがくるという、驚きの価格帯だ。
【種類と価格】
・隙間掃除シリーズ ブラシ(ポリプロピレン) 90円
・隙間掃除シリーズ ポイントブラシ(ポリプロピレン) 90円
・隙間掃除シリーズ ヘラ(ポリカーボネート) 80円
・隙間掃除シリーズ スポンジ(ポリプロピレン、ポリエステル) 80円
総じて薄グレーの躯体に白いブラシ等がついている全長20cm程度の小さな掃除道具たちだが、そのポテンシャルは高く、住まいのあらゆる隅、設備機器、家具、道具類の隅、端、隙間の掃除道具として独自に屹立する。
「古歯ブラシの転用、使い捨て」のような使い方を存在として許さない誇り高さ。
特に筆者が気に入っているのは80円の「ヘラ」だ。掃除のプロがよく愛用している「サッシヘラ」という道具があるのだが、これはたいへん便利な一方、金物の厳しさで使い方を誤ると怪我や破損のリスクが伴う側面がある。
しかしこのシリーズの「ヘラ」の材料はポリカーボネートで、プラスチック素材の中では耐久性が高く確かに硬質な部類であるとはいえ、ステンレス等に比べたらだいぶん柔らかい。そのしなやかな使い心地をもって住まい各所の汚れを、ぐいぐいとこそげ落とす。
キッチンコンロ、換気扇周りの焦げ、油汚れを剥がす場面においてはこの「こそげ」力が存分に発揮され、秀逸だ。掃除に際してはもちろん本体ごと汚れてしまうが、食器用中性洗剤で全体洗ってしまえばキュルンと綺麗になり、筆者がとりわけ厭う「掃除道具の掃除」の手間が最低限で済むという点もありがたい。
簡素が極まっておしゃれになる、という、その「おしゃれさ」を、こと掃除道具に対して筆者はさほど求めてはいない。しかしおしゃれかどうかは別にして「余計なことをしない」「余計なものが付いていない」ことの意義というものを改めて実感している。
100円ショップより安いくらいなのに謎に凄みのあるMUJIの掃除道具の数々。機会があったらぜひその度合いを体感してみてほしい。