燃料電池の技術力は日本が1番、諸外国に普及させる戦略が課題――富士経済

水素と酸素を利用して発電する燃料電池

 富士経済は、燃料電池の市場動向についてまとめた調査レポート「2011年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望(上巻)」の販売を開始した。価格は101,850円。

 この報告書では、日本とアジア、北米、欧州の計11カ国の燃料電池市場についてまとめられている。リリースで公開された概要では、2010年度は854億円と見込まれている燃料電池市場が、2025年度にはその62倍の5兆2,943億円に成長すると予測している。

 現在、世界各国では、燃料電池システムや水素燃料の技術開発が進められているが、燃料電池市場は2018年~20年にかけて世界的に大きく成長する時期を迎えると予想。2020年以降中国の燃料電池導入が拡大し、世界市場はさらに拡大するという。中でも、日本は官民協調で普及策が進められており、技術力も高く、家庭用燃料電池市場だけでなく、燃料電池車(FCV)や小形燃料電池(マイクロFC)においても、世界を牽引する可能性があるという。

 ただし、海外の燃料電池市場の開拓には、国やエリアごとのローカル規制に対応せねばならないなどの難しさがある点も指摘されている。海外諸国の燃料電池・水素(FCH)技術の位置づけを理解し、可能性追求と撤退のルールを明確化することが必須であり、世界市場にその高い技術力を普及させることが、今後の課題であるとしている。



分野別燃料電池システムの市場予測(富士経済調べ)

 分野別では、家庭用燃料電池の世界市場が、2025年度には2010年度の84.9倍となる1兆3,335億円規模に成長すると予測されている。現在、家庭用燃料電池のシステムは、PEFC(固体高分子形燃料電池)とSOFC(固体酸化物形燃料電池)の2種類の燃料電池をベースに開発が進められているが、富士経済によると、商品化では日本が世界を一歩リードしているという。特にPEFCは、耐久性や信頼性の確立、低コスト化を進めるための技術開発のハードルが高いため、海外ではSOFCの開発が主流になっている。

 諸外国の家庭用燃料電池の市場拡大は、環境対策の方向性や気候、エネルギーコストによる影響が大きいという。例えば、欧州では住宅の断熱を推進する動きがEU主導であり、自然エネルギーやバイオマスによる熱供給も推進されているため、日本よりも住宅の環境対策の選択肢が多い。また、北米市場では、エネルギーコストが安いため、拡大は難しいと見られている。





(小林 樹)

2011年3月25日 00:00