ヤマハ、電動アシスト自転車「PAS」の2010年モデルが勢揃い

業界全体で前年比118%の伸び。今後も堅調な推移を予想

会場では2010年モデルを含む様々なタイプの製品が展示された

 ヤマハ発動機は、電動アシスト自転車「PAS」の2010年モデルを報道陣に公開した。会場では最新モデルの展示が行なわれ、同社の電動アシスト自転車への取組みが紹介された。

 ヤマハでは、地球環境を重視した経営理念を基に、1993年より他メーカーに先駆けて電動アシスト自転車を発売した。以来、製品の改良を重ね2008年時点で、累計出荷台数は100万台を突破したという。また、2009年は厳しい経済状況の悪化の中、健康や環境を気にするユーザーや、不況により自動車を手放すユーザーのニーズに電動アシスト自転車が合ったとして、業界全体では前年比118%の伸びを見せているという。

厳しい経済状況にあっても、市場は堅調に伸びているという幼児2人乗りモデルなどこれまでなかったラインナップや、新基準の整備が需要拡大の追い風になったほか、ユーザーの志向が製品にマッチしたというこれまで30代女性やシニア層が中心だったターゲットを広げるために幅広いラインナップで対応していくという

 同社では、これまで30代女性と50代以上のシニア層をメインターゲットとしてきたが、今後更なるターゲット層拡大に向け、通勤・通学に適したタイプ、スポーツタイプなど幅広いラインナップを揃える。

電源はどのモデルも共通で左手に配置されている。モードの切替もここで行なう通勤や通学に適したタイプ男性をターゲットとしたスポーツタイプ
ギアのチェンジは右手のハンドルに配置されている。手をハンドルから離さなくてもギアチェンジができる安全設計だモデルに応じて細かい所まで仕様が替えてある。買い物や通勤用モデルでは安定感のある幅広いタイプのスタンドが採用されているスポーツタイプでは、本体デザインが映えるシンプルなスタンドになっている

2010年モデルでは平らな道や緩い斜面もしっかりアシスト

 2010年モデルでは、用途に応じてバッテリー容量や、デザインが異なる全8モデルを揃える。


製品名バッテリーサイズ走行距離(標準時)タイプ発売日希望小売価格
PASリチウムS4.0Ah19km(旧37km)定番モデル1月20日104,800円
PASリチウムM6.0Ah26km(旧55km)2月24日114,800円
PASリチウムL8.1Ah36km(旧75km)4月22日119,800円
PASリチウムL スーパー35km(旧73km)3月31日132,800円
PAS CITY-Sリチウム4.0Ah19km(旧37km)27インチモデル1月20日105,800円
PAS CITY-SリチウムL スーパー8.1Ah35km(旧73km)3月31日132,800円
PAS CITY-F リチウム4.0Ah19km(旧37km)デザインモデル1月20日105,800円
PAS CITY-Mリチウム6.0Ah26km(旧55km)2月24日119,800円


2009年モデルの3製品。「PASリチウムS」ローザ「PAS CITY-Sリチウム」ダークグリーン「PAS CITY-Fリチウム」チェリーピンク
スポーツタイプの製品も展示されていた。「PAS CITY-Cリチウム」ホワイトパール(106,800円)「PAS CITY-Xリチウム」ブルーイッシュブラック(106,800円)「PAS Brace-L」レッド(149,800円)
機種に応じて容量の異なる4タイプのバッテリーを用意。バッテリーは互換性があるため、付け替えることも可能強、標準、エコの3種類の走行モードを備える

 同社の電動アシスト自転車「PAS」は、センサーでギアと走行速度、ペダルを踏む力を検知し、発進時から加速、巡航時まで幅広くアシストすることで、なめからでパワフルな走りを可能にする「S.P.E.C.3(スペックスリー)」機能が最大の特徴。

 2010年モデルでは従来より注力していた坂道走行時のアシスト力強化に加え、平坦路や緩斜面でのアシスト力強化に注目。同社の電動アシスト自転車では、ペダルを踏むときの力と比例してアシスト力が強まるが、2010年モデルでは、弱い力でペダルを踏んだ時のパワー出力を従来より強くすることで、緩い斜面や平坦な道でもより楽に走れるようになったという。

 また、ユーザーの拡大によりデザインや本体カラーを選択基準にする人も増えたとして、機種毎に多彩なカラーラインナップを揃える。

3人乗りできるママ用モデル

 会場では「PAS Raffini」のCMキャラクターを務めたモデルの金子絵里さんも登場。幼児2人乗基準適合モデルのPAS Raffiniは、前かごの部分と後ろの部分にそれぞれ専用のチャイルドシートを載せることで、大人1人、幼児2人がの乗れる3人乗りに対応したモデル。

 子育て期間が終わってもチャイルドシートを外してそのまま乗れるようなデザインにしたという。またカラーラインナップも「アメリカンレッド」「クリスタルアイボリー」「ブルーイッシュブラック」の3色のほか、3月2日より新色として「エメラルドグリーン」「ガーネットオレンジ」が発売される。希望小売価格は121,800円。

幼児2人乗基準適合モデルのPAS Raffini会場にはTVCMに出演している子役の3人も登場。緊張しながらも「(CMの撮影は)楽しかったです」と話すなど会場を和ませていた「PAS Raffini」「PAS リトルモア リチウム」の2機種を対象に障害保険を1年間付けるサービスを実地中。搭乗者本人だけでなく同乗の子供1人まで対応する
モデルの金子絵里さん

 自身も1児の母親である金子さんは「子供が生まれてからは、モノの選び方が変わりました。以前はデザインをまず見ていたけど、今は長く使えたりとか、機能面をまずチェックしますね。PASは、育児が終わったあとも自分の自転車として乗れるところが気に入っています。息子も自転車での外出に喜んでいます」と語った。

 同社では子供と一緒に安心して自転車に乗れるように、幼児2人乗り基準適合モデルの「PAS Raffini」「PAS リトルモア リチウム」の2機種を購入したユーザーに購入日より1年間傷害保険を付けるサービスも行なっている。対象は2010年1月1日販売分からで、対象は「PAS Raffini」「PAS リトルモア リチウム」の搭乗者と子供2名まで。搭乗中の事故などによる後遺障害や入院に対応する。

幼児2人乗り基準適合モデル「PAS リトルモア リチウム」レッド(134,800円)フロント部分に取り付ける専用のチャイルドシート(別売り7,800円)。適用体重は15kg以下、伸長100cm以下リアに取り付ける専用のチャイルドシート(別売り7,900円)。フロント用に比べると大きめで適用体重20kg以下、伸長115cm以下対応となっている

初代と最新のPASを乗り比べ!

 会場では最新モデルの試乗会も行なわれた。記者は、電動アシスト自転車に乗るのは初めてだったが、踏み込む力に反応してアシストが加わる感覚はこれまで味わったことがないものだった。乗り始めの最初の踏み込みでぐいっとアシスト力が加わるほか、前カゴに荷物を入れた状態で坂道を登ったときも力を入れて踏み込む必要は全くなかった。

 「電動アシスト自転車では時速10km以下の状態で正常にアシスト力が働くので、下りの坂道や平坦路でも必要以上にスピードを出さないのが乗り方のコツ」(同社広報)だという。

 会場では、初代のPASも用意され実際に乗ることもできた。制御力が一定の初代モデルは、鍵を回して電源を入れるなど自転車というよりもバイクに近い構造だ。バッテリーの種類も現在のリチウムイオン電池ではなく鉛蓄電池が採用されている。走行距離は最新モデルの1/3以下となる。実際に乗ってみるとアシスト力が一定なので特に下りの坂道では少し怖さを覚えた。最新モデルとの差は歴然だ。

1993年発売の初代PAS。現在の製品に比べるとバッテリーのサイズが大きい電源は鍵を回して入れるバイクに近いスタイルだ。電源を入れると3秒ほどライトが点灯するがその後は消えるギアは4段階用意されている。ただし、アシスト力は一定だ
ヤマハ SP 事業推進統括部 事業推進統括部長 小林正典氏

 ヤマハ SP 事業推進統括部 事業推進統括部長 小林正典氏は、今後の動向について「昨今の経済状況においても、電動アシスト自転車はユーザーのニーズにマッチした製品として堅調な伸びを見せている。今後は国内市場はもちろん、環境意識の高い欧州市場にも注力していきたい」と語った。





(阿部 夏子)

2010年2月17日 16:54